イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

『CDTVライブ!ライブ!』以外の音楽番組パフォーマンス映像もYouTube公開…一方で引っ掛かりを覚えることについて

夏の地上波音楽特番真っ只中の状況ですが、一足早く放送された『カミオトー上方音祭ー』(読売テレビ 6月17日放送)については先日までTVerでの見逃し配信が行われていました。前日に放送された『カミオトー前夜祭ー』も同様です。

そして配信終了直後の7月2日、番組でのパフォーマンス映像がYouTubeにて公開されました。たとえばジャニーズWESTについては最新シングル「しあわせの花」が披露されています。

一方で、この特番でのパフォーマンスがYouTubeで、それも歌手や歌手所属のレコード会社等の公式チャンネルにて公開されたのはジャニーズ事務所所属歌手のみにとどまっています(他事務所所属歌手とのコラボレーションを含む)。これはYouTubeにて”カミオト”と検索すると判るのですが(検索結果はこちら)、この点が気になっています。

(上記は7月5日4時時点での検索結果。動画は一定期間後に消去されるため、キャプチャしたものを貼付しています。問題があれば削除いたします。)

 

【地上波テレビ局の音楽番組が放送後にTVerにて見逃し配信→配信期間終了後にパフォーマンス映像が歌手側の公式YouTubeチャンネルにて期間限定公開】という流れは、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)でこの春以降目立っています。”目立って”と形容したのは、この方針がジャニーズ事務所所属歌手において徹底されているためです。

CDTVライブ!ライブ!』におけるジャニーズ事務所所属歌手の登場部分は、以前ならば見逃し配信時にカットされていましたが、この春以降状況が一変したのみならず歌手側のYouTubeチャンネルで発信され、さらにはビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標にも加算されています。これらについては下記エントリーにて記していますが、この動きはジャニーズ事務所所属歌手等一部に限られている状況です。

(なお、たとえばドラマ『君の花になる』(TBS)内で登場した男性ダンスボーカルグループ、8LOOMについては『CDTVライブ!ライブ!』で披露した映像が今も確認できますが、発信元はTBSの公式YouTubeアカウントとなります。またそれに伴い8LOOMはビルボードジャパンソングチャートで動画再生指標が獲得できていないことについて、以前ブログで紹介しています(→こちら)。)

 

テレビ番組のパフォーマンス映像を歌手側の公式YouTubeチャンネルにて発信するのはK-POPが以前から積極的でした。またLDH所属歌手の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)におけるパフォーマンス映像もYouTubeで流れますが、こちらについては番組側のYouTubeチャンネルから発信されています。この春以降のジャニーズ事務所所属歌手の動きは、前者に近いと言えるでしょう。

ともすれば、現在見逃し配信が行われている『テレ東音楽祭』(テレビ東京 6月28日放送)においても、配信終了後に同様の措置を採る可能性が考えられます。『CDTVライブ!ライブ!』以上にジャニーズ色が濃いゆえ想像し易いというのが私見。地上波長時間音楽特番は司会にジャニーズ事務所所属歌手(もしくは元所属タレント)が多いこともあり、この流れは民放放送局で定番化するかもしれません。

 

ならば気になるのは、見逃し配信終了後のパフォーマンス映像のYouTube公開がなぜ一部芸能事務所所属歌手にほぼとどまっているのかということです。ジャニーズ事務所においてはこの春の方針転換以降に動画対策を強化したのだろうと捉えていますが、YouTubeでのパフォーマンス映像発信は他の歌手でもできるはずであり、ならばメディア側がすべての出演者と積極的に協議を行う必要があるのではと感じています。

実際、YOASOBIは『CDTVライブ!ライブ!』における「祝福」のパフォーマンス映像(2022年11月7日放送分)を”Ayase/YOASOBI”のYouTubeチャンネルで公開しています。ゆえにこの傾向はジャニーズ事務所所属歌手に限らないのですが、しかし他の歌手においてパフォーマンス映像のYouTube公開が徹底されていないのが気になります。加えて上記動画の長期公開を踏まえれば、期間限定という公開条件はなくてもいいはずです。

 

ジャニーズ事務所側が地上波音楽番組でのパフォーマンス映像を期間限定ながら残すようになったのは、動画についての方針転換が背景にあると感じています。ならば、今回の措置によってともすれば”ジャニーズ優遇”に見られかねない差を生じさせるのではなく、日本の音楽業界全体が均一に近い形で公開できるようメディアとの交渉の橋渡し役に徹するほうがエンタテインメント業界全体の未来につながり、素敵だと思うのです。

(当該事務所においては、取り巻く諸問題の背景に強い優遇があると捉えています(ジャニーズ事務所の姿勢転換とそれまでのメディアによる”報じないこと”の問題、音楽チャート面を主体に私見を記す(5月15日付)にて私見を掲載)。業界全体を良好にすべく事務所側が率先して改善に動くことで、自らに宿る意識の改善にもつながるはずです。)

そして海外では音楽番組や音楽賞でのパフォーマンス映像がYouTubeアーカイブ化されることが多く、これはグローバルとJ-POPとの音楽チャートも含めた差と成り得るものです。グローバルチャートについては下記エントリーにて解説し、そこでは音楽業界が総出で改善することが必要であると記しています。この改善が叶えば、メディアを含むエンタテインメント業界全体のグローバルに対する意識向上にも成ることでしょう。

 

もしかしたら、K-POP歌手やYOASOBI、ジャニーズ事務所所属歌手以外は現時点でテレビパフォーマンスのYouTube公開を望んでいないゆえに、公開動画が狭まっているのかもしれませんが、だとすれば厳しい物言いにはなりますがはっきりとした機会損失です。そして仮にYouTubeでの公開条件が厳しく設定されているならば、先行で公開を行う側が業界全体に助言し、緩和につなげるべく動く方が格好いいと考えます。