イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

旧ジャニーズ事務所所属歌手のメディアにおける"共演"について、ふたつの注目点を記す

ジャニーズ事務所初代社長による性加害問題は絶対に解決させなければなりませんが、同時にその問題を加速させてしまったエンタテインメント業界各所の慣習、ならびに宿っている空気もまた変わらなければなりません。

このブログでは日々追いかける音楽チャートの観点から、旧ジャニーズ事務所所属歌手による作品のデジタル解禁を提案し続けています(上記リンク先参照)。同時に、彼らのメディア露出において通底していた空気もまた変える必要があると考えますが、この点は少しずつですが確実に変化していると捉えています。

その大きな分岐点のひとつが、ほぼ毎回旧ジャニーズ事務所所属歌手が出演している『ミュージックステーション』(テレビ朝日)にて、BMSG所属のBE:FIRSTが出演に至ったこと。同番組では後にJO1、そしてINIが初出演を果たしています。

 

そしてこの流れは、他の地上波テレビ局でも見受けられます。この点についてはnoteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦さんが昨日Yahoo! JAPANにてコラムを掲載していますが(下記リンク先参照)、以前からこの点を注視してきた身として今回私見を記します。

 

 

今夏は『音楽の日』(TBS)のダンスコラボ企画や『NHK MUSIC EXPO 2023』(NHK総合ほか)での&TEAMとの共演にTravis Japanが参加した一方で、フィジカルデビューを果たした旧ジャニーズ事務所所属歌手のステージ上での共演はほぼないと記憶していましたが、今週放送の『ベストヒット歌謡祭2023』(読売テレビ/日本テレビ)にてなにわ男子が、同月フィジカルデビューしたINIそしてBE:FIRSTと共演することが決定しています。

(なにわ男子の大橋和也さんはAAAのファンだと耳にしたことがあります。大橋さんはとりわけ強く、この共演を楽しみにしているのではないでしょうか。)

 

そして、BMSGを立ち上げたSKY-HIさんによる【D.U.N.K. -DANCE UNIVERSE NEVER KILLED-】のショーケースに旧ジャニーズ事務所所属のTravis Japanが出演することが今月アナウンスされています。D.U.N.K.のYouTubeではTravis Japanのコメントが確認できますが、彼らがBE:FIRSTのファンになったことや、別日に出演するIMP.(旧ジャニーズ事務所所属時はIMPACTorsとして活動)との共演経験についても語っています。

Travis Japanの招聘は、SKY-HIさんが旧ジャニーズ事務所側の改革を願い、彼らを見捨てないという姿勢の表れでもあると受け止めています。

 

 

企画やイベントの状況を踏まえるに、旧ジャニーズ事務所を巡る環境は変わってきていると実感しています。ただその一方で未だ拭えない懸念があることも否めません。そこで、メディア(特に地上波テレビ局出演)における旧ジャニーズ事務所所属歌手と旧ジャニーズ以外の歌手との共演に関する注目点をふたつ記します。

 

1つ目は、デジタルでデビューを果たしたTravis Japan以外の旧ジャニーズ事務所所属歌手(フィジカルデビュー済)が、旧ジャニーズ以外の歌手と共演すること。『ベストヒット歌謡祭2023』ではTravis Japanより前にフィジカルデビューしたなにわ男子がINIやBE:FIRSTと共演を果たしますが、その他の歌手が共演に至るかが注目点と捉えています。

 

2つ目は、旧ジャニーズ事務所所属歌手が、以前同事務所に所属していた歌手と共演することです。

今年は元SMAP香取慎吾さんが(今になってやっと、といえるのですが)地上波テレビ局へ出演することが目立つようになり、音楽作品のパフォーマンスも増えてきています。『ベストヒット歌謡祭2023』ではゆずと共演しますが(上記ポスト参照)、番組内で香取さんと現在旧ジャニーズ事務所に所属している歌手が共演できるのかは分かりません。

香取慎吾さんが『まつもtoなかい』(フジテレビ)のレギュラー化初回に出演した際には大きな話題となりました。一方で中居正広さんとの久々の共演は、たとえば松本人志さんの人徳ゆえに達成したといえるかもしれず、実際は旧ジャニーズ事務所を離れた方が十分なメディア出演、まして現在所属する歌手と共演することは考えにくいといえるでしょう(その点において中居さんのメディア出演継続は極めて珍しいと考えます)。

ただ、改革を進める旧ジャニーズ事務所においては、たとえば所属歌手のYouTubeチャンネルから発信される動画に(当時は所属しながら現在)事務所を離れた方がいても消去には至っていない模様であり、おそらくは2つ目の懸念も早急には解消されるかもしれません。ただ、そのスピードをもっと速めるべく監視や提言を続ける必要があると考えます。

 

 

特に2つ目が叶うことで、自分が音楽面でのデジタル化促進の理由として最後に挙げた内容が一気に加速するものと考えます。その内容を再掲し、事務所側の動向を注視していきます。

⑦ エンタテインメント業界に蔓延る”タブー”という考え方が変わること

デジタルの解禁はたとえば脱退した方や、違反行為を犯した方(更正を目指している方もしくは既に更正した方を含む)を”なかったことにする”という、日本のエンタテインメント業界に蔓延る歪な対応を質し、最終的にその慣例を変えることにもつながるでしょう。タイトルに”タブー”と書きましたが本来はそんなことはなく、触れないのが吉という姿勢を慢性的に続けたことで結果的にタブーに成ってしまったものと考えます。

たとえばデジタル解禁を決めたHey! Say! JUMPや、比較的早い段階でデジタルリリースを開始したKAT-TUNにおいて、メンバー脱退前の過去曲もきちんと配信させることは必須です。これは旧ジャニーズに限らずであり、またこれが叶うことでたとえばテレビでの過去映像の使用において過度な配慮がなくなることにもつながるでしょう。

(中略)

そしてこの変化は、これまでのエンタテインメント業界の過度な対応を仕方ないとする空気に支配された市井に対し、自ら考えることを促すきっかけにもなるでしょう。

引用において市井に対し言及したのは、下記エントリー(以降記し続けてきた自分の考え)を踏まえてのものです。一人ひとりの言葉にわずかでも確実に責任、そして変えられる力が宿っていることを理解すれば、エンタテインメント業界のみならず様々な社会の不条理を変えることができるものと考えます。

”干される”という言葉は、”干す”という言葉が在って生まれる言葉。干すことを平気で行う当事者と屈するメディア、そして”干される”と言って嘲笑う市井。この三者が良好な関係で成り立っているからこそ成立する言葉なんですよね、”干される”って。まずは自分が、自分の良心に従ってその言葉を使わないという思いを抱いて行動すれば、ちょっとでも事態が好転するものと思いたいですね。

音楽の日』のダンスコラボ企画については、パフォーマンス時の配置等を踏まえて"まだまだ業界は変わっていない"と言っていた方を見かけましたが、その後業界は着実に変わってきています。無論SKY-HIさんの存在も大きいですが、重要なのは市井が好い行動を評価し、問題に対しては批判と提案を行うことでしょう。その目線はエンタテインメント業界を変える原動力に成るはずであり、実際伝わっているものと感じています。