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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

優里「ビリミリオン」、Da-iCE「スターマイン」…アルバム直前リリースでなくともリード曲に据えることの重要性

最新4月5日公開分のビルボードジャパンアルバムチャートは、優里『弐』が初登場で首位を獲得しました。

フィジカルセールスはaiko『今の二人をお互いが見てる』が5千枚以上上回りましたが、ウンロードで3,000近い売上を記録した優里『弐』が総合を制覇。ダウンロード1DLのウエイトがフィジカルセールス1枚のそれより大きいことが、総合で逆転した要因となります。

優里さんは今週、ビルボードジャパンのトップアーティストチャート(Artist 100)でも首位を獲得。同チャートの制覇は昨年2月16日公開分以来およそ60週ぶりとなります。ビルボードジャパンの最新ポッドキャスト(YouTubeこちら)では優里さんの作品がソングチャートでも上昇していると伝えていましたが、今作『弐』に収録された「ビリミリオン」がこのタイミングで初のトップ10入りを果たしたことは特筆すべきといえます。

「ビリミリオン」はストリーミング(上記CHART insightでは青で表示)、動画再生(赤)およびカラオケ(緑)が上昇。ストリーミングは前週から22%アップしていますが、下記ツイート内リンク先の記事にて『アルバム『弐』の1曲目にも収録されており、アルバム発売と連動した動きを見せている』と書かれていることに注目です。

デイリー200位までの再生回数が可視化されるSpotifyにてアルバムリリース日(3月29日付)の動向をみると、『弐』に収録された優里さんの曲は「ビリミリオン」(13→10位)、「恋人じゃなくなった日」(44→37位)、「メリーゴーランド」(130→113位)、「おにごっこ」(200位圏外→169位)、「タイムマシン」(200位圏外→181位)といずれも上昇。「ビリミリオン」はこの日初めてデイリーチャートトップ10入りを果たしました。

この動向から、日本でリリース日に『弐』を通して聴く方が少なくなかったことが予想されます。ゆえに冒頭に配置した「ビリミリオン」の再生回数により大きく反映されたと言えるでしょう。ビルボードジャパンはそれを踏まえて『アルバム発売と連動した動き』と記したものと考えます。

ビルボードジャパンの総合ソングチャートにおいても、前週の段階で「ビリミリオン」が『弐』収録曲で最高位を記録しており、ゆえに同曲を冒頭に配置することでアルバム聴取に誘導する役割も果たせたものと考えます。尤もこの配置についてサブスク聴取誘導の意図はなかったのかもしれませんが、結果的に「ビリミリオン」のチャートアクションに寄与したと捉えていいでしょう。

 

 

さて、今後リリースされるアルバムの顔的役割として注目しているのが、Da-iCE「スターマイン」です。

「スターマイン」については下記ツイート内記事にもあるようにTikTokを意識して制作されたのみならず、リリース前の展開もまた海外の施策をなぞり、Da-iCE側がヒットに意欲的であることが解ります(ドレイク「Toosie Slide」等海外の施策を彷彿とさせることについては、"ジャニーズ&ボーイズグループから見る2022年音楽シーン"生配信で紹介した、音楽チャートにおける課題および提案(2022年12月17日付)でも記しています)。

とはいえCHART insightをみるに、リリース前の展開がビルボードジャパンソングチャートのチャートアクションに即座に反映されたというよりは、徐々に浸透という表現が正しいかもしれません。日本レコード大賞ノミネート等も味方に、「スターマイン」は2022年12月7日公開分にて最高13位をマークしています。

 

現在は緩やかにダウンしている「スターマイン」ですが、昨日興味深い展開がスタートしています。

冒頭のがなり声からして上手い再現と感じる”うちのごはん”とのコラボレーション。TikTokで使われることを目的に最初のサビ尺を15秒とした「スターマイン」は、結果的に15秒のCMソングとして引用されることとなりました(上記動画はサビを2回、歌詞を替えて使用)。そしてコラボレーションを紹介するツイートでは、Da-iCEが5月24日にニューアルバム『SCENE』をリリースすることが紹介されています。

(一方で、関連記事(四の五の言うなよ!Da-iCE×「うちのごはん」公式コラボが実現(動画あり) - 音楽ナタリー(4月6日付)等)を読む限りこのCMがWebでのみの公開と考えられ、仮にテレビで展開されていれば「スターマイン」の認知度はさらに高まったのではと感じています。)

 

Da-iCEはアルバム収録曲「ダンデライオン」がドラマ『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』(テレビ朝日)主題歌に、「コメディアン」が『Mr.サンデー』(フジテレビ)のエンディングテーマに起用。共に『SCENE』のリード曲と言えますが、チャート動向を踏まえれば優里『弐』における「ビリミリオン」の役割を果たすのが「スターマイン」だと考えます。2曲とも別動画が用意され、リード曲の意味合いを強くさせるに十分です。

夏ソングである「スターマイン」はブログ執筆時点でSpotifyApple MusicおよびLINE MUSICのいずれにおいても100位以内にエントリーを続けており、夏が近づくにつれ再浮上する可能性は十分ですが、”うちのごはん”とのコラボを経てこの曲がさらに勢いを高めるかもしれません。ともすれば今回のコラボCMも、アクセスが好調に推移する等によってはテレビでOAされる可能性も出てくるのではないでしょうか。

 

 

リリースが少し前だったとしてもチャートアクションが好調な曲をアルバムのリード曲と位置付けて展開することで、アルバム/ソングチャート共々好調に推移する可能性を優里さんの事例から学べます。Da-iCEも続くか、注目です。