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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む (2023年10月4日公開分)

今回のエントリーでは、ビルボードジャパンソングチャートにおいて前週上位に初めて進出した曲の翌週動向、そして最新週における上位初進出曲の状況をチェックし、真の社会的ヒット曲に成るかを読みます。前週のエントリーはこちら。

最新のソングチャートに関する記事は、以下をご参照ください。

 

 

まずは前週のエントリーにて紹介した上位初登場曲の、最新チャートにおける動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポスト(ツイート)にて簡潔に説明しています。

 

<2023年9月27日公開分 ビルボードジャパンソングチャートにて

 20位までに初めて登場した作品の、翌週におけるCHART insight>

 

 ・Sexy Zone「本音と建前」 5位→100位未満(300位圏内)

サザンオールスターズ「Relay~杜の詩」 6位→22位

・IMP.「IMP.」 12位→100位未満(300位圏内)

SEKAI NO OWARI「最高到達点」 13位→19位

・Mrs.GREEN APPLE「ANTENNA」 15位→53位

 ・King Gnu「硝子窓」 16位→27位

 (現時点で公式動画未掲載。) 

 

前週20位以内に初登場しながら当週100位を割った作品はSexy Zone「本音と建前」およびIMP.「IMP.」の2曲となります。

Sexy Zoneは動画再生やラジオにおいては極度にダウンしているわけではなく、フィジカルセールス加算2週目における同指標の急落を補填可能な他指標がなかった(動画再生やラジオが補完しきれなかった)ことが総合チャートでの急落につながったといえるでしょう。無論、デジタル未解禁の影響が大きく響いています。ジャニーズ事務所所属歌手作品のデジタル解禁要望については、理由を添えて後日掲載する予定です。

一方のIMP.「IMP.」は前週ラジオ指標がSexy Zone「本音と建前」を上回りましたが、当週はそのラジオ指標が300位圏外となり加点されていません。ここから、前週のラジオ人気が施策に伴う部分が大きい一方でリクエストによるOAが多くないことが想起可能です。IMP.はテレビパフォーマンスの機会が未だなく知名度が高くないことも影響しているかもしれませんが、こちらへの参加が今後どう影響するかに注目しています。

 

 

続いて、最新ソングチャートにおいて初めてトップ20入りした作品のCHART insightをチェックします。

<2023年10月4日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 20位までに初めて登場した作品のCHART insight>

 

・4位 AKB48「アイドルなんかじゃなかったら」

・6位 つばきファクトリー「勇気 It's my Life!」

・9位 YOASOBI「勇者」

10位 超ときめき♡宣伝部「かわいいメモリアル」

14位 TREASURE「BONA BONA」

・17位 ジョングク feat. ジャック・ハーロウ「3D」

 

トップ10入りした4曲ではYOASOBI「勇者」と同曲以外の3曲とで大きな差がみられます。前者がフィジカルシングル未リリースということもありますが、後者がフィジカルセールス指標に頼りすぎているという側面は否めません。

「勇者」以外でトップ10入りした3曲のうち、次週最も高い位置にとどまるかもしれないのが超ときめき♡宣伝部「かわいいメモリアル」。3曲の中で唯一ストリーミング指標が加算されているというのがその理由ですが、一方でこの曲はLINE MUSIC再生キャンペーンを採用しています。

ハードル設定は最高6,900回と高い一方でストリーミング指標は100位未満(300位圏内)となっており、キャンペーン参加者数がおそらくそこまで多くはないことが見えてきます。その参加者がハードルを続々クリアしていくことで、10月22日のキャンペーン終了前にこの指標がダウンし、総合でも100位を割り込む可能性があります。

仮にキャンペーン参加者数が多くないとして、CHART insightからはストリーミング100位未満ながらもこの指標から得たポイントが決して小さくないと解ります。すなわちキャンペーン参加者以外のライト層を獲得することが如何に重要かが理解できるはずです。

 

さて、当週最も高い位置に初登場を果たしたAKB48「アイドルなんかじゃなかったら」は、一方でストリーミングや動画再生といった接触指標群でポイントを獲得することができませんでした。それでも前作「どうしても君が好きだ」の初週フィジカルセールスを7万枚近く上回り(541,037枚を記録)、ハーフミリオンを突破しています。

フィジカルセールスの増加は、握手会の復活も影響しているかもしれません。上記リンク先に掲載されたスケジュール以外にも、当週のチャート集計期間中に複数回握手会が実施されています。

CDショップでの握手会や、SHIBUYA TSUTAYAで行われた選抜メンバーによる「お見送り会」を終えたメンバーはAKB48劇場に集結。YouTubeやWeverseを通じて、シングル発売記念生配信を実施した。シングルに収録された新曲6曲を生パフォーマンスしていった。配信の最後には、9/26付オリコンデイリーシングルランキング1位獲得の速報が発表され、ファンと喜びを分かち合った。

AKB48YouTubeSNSを活用したイベントも開催しながら、新曲の公式動画の再生回数は当週300位以内に達していません。また記事からはオリコンへの意識の高さがうかがえますが、今の音楽チャートにおいてはオリコンよりビルボードジャパンが社会的ヒットの鑑と考えます。オリコンにも複合指標のランキングがありますが、フィジカルセールスがそのまま反映されデジタルヒットが可視化されにくいという側面があります。

(フィジカルセールスについてはビルボードジャパンが木曜に週前半3日間の速報を発表する一方でオリコンはデイリーチャートを日々用意しているため、フィジカルリリースする歌手にとってはデイリーチャートの存在を有益と考える側面はあるでしょう。)

 

このブログでは幾度となく、ビルボードジャパンソングチャートの重要性(社会的ヒットの鑑であること)のみならず、ストリーミングや動画再生といった接触指標群が特に大切であることを記していますが、AKB48においては前作のシングルの動向を今作でもなぞるものと考えます。

前作「どうしても君が好きだ」では直接ファンと会える個別お話し会を再開させたことで、フィジカルセールス指標がイベント封入CDの販売により波はありながらも100位未満になりにくかったという推測を記しましたが、今作「アイドルなんかじゃなかったら」では握手会が復活したことで同指標はさらに安定していくかもしれず、その都度総合ソングチャートでも100位以内復帰や安定が見込まれます。

しかし大事なのは総合ソングチャート100位以内登場の原動力を知り、どれだけライト層に浸透しているかを探ることです。その点において、コアファンの熱量(物理的を含む)に頼りすぎるのは真の社会的ヒット曲とは言い難く、ビルボードジャパンの動向が反映されやすい『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)への復帰を目指すならば尚の事、接触指標群を充実させることが必須といえるでしょう。

 

 

【前週および当週の上位初進出曲におけるCHART insightから、真のヒット曲に成るかを読む】というエントリーを用意してから尚の事、フィジカルセールス指標が突出した作品の総合チャートにおける急落を目にすることが増えた印象です。またLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲はストリーミング指標の急落につながりやすく、所有指標的な動向を辿る傾向にあることもはっきりしています。

それら施策がライト層獲得につながっているとは言い難いこともさることながら、しかし『施策はほぼすべての歌手のあらゆる曲で行われている』ものであり、『その施策自体よりも(尤も購入者の物理的(また精神的な)疲弊を招きかねない点では検討が必要ですが)、過度な施策が音楽チャートに強く反映されてきたこと』が問題ではと以前指摘し、提案を記しています。

チャート管理者は複合指標から成るソングチャートにおいて、チャートポリシー(集計方法)を適宜見直すことを願います。施策自体は自由であるべきであり、重要なのは社会的ヒットと著しく乖離する動き(に至らせる過度な施策)を反映させにくくするチャートの作成(更新)です。歌手を責めるのではなく自身を律する、自問自答することの必要性については下記エントリーにて申し上げたとおりです。