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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

グローバルチャートや米ビルボードで高まるNewJeansの存在感、K-POPの新たなヒットの形と成るか

NewJeans「Ditto」が地元韓国以外の音楽チャートでも好調です。米ビルボードが2020年9月に新設したグローバルチャートにおいて、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.では最新2月11日付まで5週続けてトップ10入りを果たしています。

今回はグローバルチャートを基軸にNewJeansの強さ、そして新世代と言えるK-POPアクトのチャートアクションの変化をあらためて記します。なおグローバルチャートについては以前ブログにて解説しています。

 

最新2月11日付グローバルチャートのうち、Global 200を制したのはマイリー・サイラス「Flowers」でした。

初登場時において「Flowers」はGlobal 200ではソロとして2020年9月のチャート発足以降最大、歴代でも3位となるストリーミングを記録。登場2週目の前週はさらに数字を伸ばしストリーミング歴代2位に。そして登場3週目となる今週、初登場週の数値を上回り歴代4位を記録しています。

<Global 200における週間ストリーミング歴代トップ10>

1位 2億8920万 BTS「Butter」(2021年6月5日付)

2位 2億1710万 マイリー・サイラス「Flowers」(2023年2月4日付)

3位 2億1210万 BLACKPINK「Pink Venom」(2022年9月3日付)

4位 1億8560万 マイリー・サイラス「Flowers」(2023年2月11日付)

5位 1億7910万 マイリー・サイラス「Flowers」(2023年1月28日付)

6位 1億7820万 アデル「Easy On Me」(2021年10月30日付)

7位 1億7080万 BTS「Permission To Dance」(2021年7月24日付)

8位 1億6980万 BTS「Butter」(2021年6月12日付)

9位 1億5280万 BLACKPINK「Shut Down」(2022年10月1日付)

10位 1億5260万 LISA(BLACKPINK)「Lalisa」(2021年9月25日付)

Global 200における週間ストリーミング歴代トップ10にはK-POPアクトの作品が5曲登場していますが(うちBTS「Butter」は2週分ランクイン)、これらの曲に比べるとNewJeans「Ditto」のヒットは異質と言えるのす。そこで、Global 200における週間ストリーミング歴代トップ10に登場したK-POP曲とNewJeans「Ditto」とで、Global 200およびGlobal Excl. U.S.におけるトップ10初ランクイン時から5週分の推移を以下に記載します。

<Global 200における週間ストリーミング歴代トップ10にランクインしたK-POP曲、およびNewJeans「Ditto」におけるグローバルチャート5週分推移>

※NewJeans「Ditto」以外は初登場にてグローバルチャートトップ10入り。

BTS「Butter」(2021年6月5日付初登場)

Global 200 1→1→2→2→2位 (初週ストリーミング2億8920万)

Global Excl. U.S. 1→1→1→1→1位

BTS「Permission To Dance」(2021年7月24日付初登場)

Global 200 1→5→6→8→15位 (初週ストリーミング1億7080万)

Global Excl. U.S. 1→2→3→4→6位

LISA (BLACKPINK)「LALISA」(2021年9月25日付初登場)

Global 200 2→22→26→31→45位 (初週ストリーミング1億5260万)

Global Excl. U.S. 2→9位→(10位未満)→(10位未満)→(10位未満)

(※Global Excl. U.S.はトップ10を除き米ビルボード有料会員のみの紹介にとどまるため、10位未満については紹介することができません。)

BLACKPINK「Pink Venom」(2022年9月3日付初登場)

Global 200 1→1→2→4→2位 (初週ストリーミング2億1210万)

Global Excl. U.S. 1→1→1→3→2位

BLACKPINK「Shut Down」(2022年10月1日付初登場)

Global 200 1→4→9→13→18位 (初週ストリーミング1億5280万)

Global Excl. U.S. 1→3→6→9位→(10位未満)

NewJeans「Ditto」(2023年1月14日付Global 200・Global Excl. U.S.共に初のトップ10入り)

Global 200 (36→26→)8→9→10→11→12位 (1月14日付ストリーミング4650万)

Global Excl. U.S. ((10位未満)→11→)4→5→8→9→9位

 

NewJeansはストリーミングこそ他のK-POP曲より高くはないものの、しかしチャートは安定しています。さらに言えば「Ditto」は登場3週目となる1月14日付で初めてトップ10入りしていますが、初登場からの2週分はクリスマス関連曲が大量エントリーを果たしていました。その中にあって、1月7日付のGlobal 200(→こちら)ではクリスマス関連曲以外で「Ditto」は6番目に高いことから、2ヶ月近い人気の継続が見て取れるのです。

またNewJeansによる「OMG」は1月14日付Global 200において30位に初登場すると、10→13→12→11位と推移。Global Excl. U.S.では19→7位となった後、直近3週は10位未満が続いていますが、2月4日付(登場4週目)では「OMG」は12位だったことがNewJeans「OMG」が米ビルボード「HOT100」にランクイン!自己最高記録を達成 - Kstyle(2月1日付)で判明しています。今後のトップ10内再浮上もあり得るでしょう。

他方、Global 200での週間ストリーミング歴代トップ10にランクインしたK-POP曲は初登場時にいずれも記録を達成していますが、その後勢いをキープし続ける曲は多いとは言えないかもしれません。BLACKPINK「Pink Venom」の登場5週目(2022年10月1日付)における再浮上はアルバム『Born Pink』のチャート初登場に伴うものですが、「Pink Venom」はその翌週Global 200で10位、Global Excl. U.S.では6位に後退しています。

 

 

NewJeansのヒットを踏まえ、ここでは先月このようなエントリーを記しました。

K-POPはこれまで所有指標が強いながらも接触指標が強くないためにロングヒットしにくく年間チャート上位進出が難しいという印象』は、先述した米ビルボードアルバムチャートの動向等から感じられたことでした。BTSの英語詞曲が前年度以前のリリース作品でも強い一方で韓国語曲の「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」がそこまで強くなかったこと、BLACKPINKが初週に凄まじい数字を記録しながらその後ダウン傾向となったことも、その印象の元となっていました。

その中でIVEやLE SSERAFIMが、週間単位で上位に至れなかったとしても安定した成績によってグローバルチャート年間200位以内ランクインを果たし、また今月NewJeansがトップ10入りを果たしたことは、K-POP接触指標で聴かれ続けるようになったこと、ロングヒットの可能性が高まっていること、さらには2023年度も年間チャートランクインが期待できるかもしれないという点においても、重要な変化と捉えていいでしょう。

最新2月11日付Global 200ではLE SSERAFIM「ANTIFRAGILE」が登場16週目で77位に位置し、BLACKPINK「Pink Venom」(登場24週目 146位)や「Shut Down」(登場20週目 133位)を上回っているのも興味深いところ。瞬発力以上に持続力が高い、接触指標が安定して強い歌手がK-POPアクトに登場していることを思わせるに十分です。

上記ブログエントリーではK-POPのチャートアクションの変化について、『接触指標で聴かれ続けるようになったこと、ロングヒットの可能性が高まっていること、さらには2023年度も年間チャートランクインが期待できるかもしれないという点』の3つを紹介しましたが、”米ビルボードソングチャートでの長期ヒット”もまた期待できるかもしれません。現にNewJeansは「Ditto」が1月21日付、「OMG」がその翌週に初登場を果たし、最新2月11日付まで100位以内をキープしているのです(前者は90位、後者は77位)。

 

BTSやBLACKPINKのような高い瞬発力は伴っていないとして、NewJeansは着実に浸透しているという印象を受けます。そして接触指標が強い状況でさらなるブレイクを果たせたならば、NewJeansが新曲初登場時に好位置に飛び出し、そのまま上位をキープすることも可能となるでしょう。現在マイリー・サイラス「Flowers」が示す理想のチャートアクション像にNewJeansが到達する可能性は、無きにしも非ずだと感じるのです。