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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

NewJeans『Get Up』が米ビルボードアルバムチャート制覇…K-POP全体の中でも特筆すべき点が多いことについて

最新8月5日付米ビルボードアルバムチャートについては速報版が日本時間の月曜早朝に発表されるはずでしたが、本来の発表から丸3日遅れて昨日発表されました。NewJeans『Get Up』と映画『バービー (原題:Barbie)』サウンドトラックが競い合い(ゆえにその精査のために公開が遅れた模様です)、わずか500ユニット差で『Get Up』が首位の座に就いています。

後者のツイートは最新8月5日付ソングチャートトップ10の指標構成を図解化したもの。米ビルボードアルバムチャートにおける獲得ユニット数は通常千枚単位で表示されるため、最新チャートにおいて2作品が如何に僅差だったかが解ります。これによりNewJeansは、K-POP女性グループとしてBLACKPINKに次ぐ首位を獲得しています。

 

ビルボードによるアルバムチャートは3つの指標で構成されています。

ひとつはアルバムとしてのセールス。ダウンロード、およびフィジカル(CD、レコードおよびカセットテープ)が対象となり、歌手のホームページ上での売上も含まれます。

所有という点においては単曲ダウンロードのアルバム換算分(TEA)も含まれます。収録曲数に関係なく一律の分母にて総売上曲数を割り算出されます。

そしてストリーミングのアルバム換算分(SEA)は公式動画も含むストリーミングの再生回数を、TEA同様に収録曲数に関係なく一律の分母で割るというもの(ただし有料会員による再生分と無料会員によるそれとで分けて算出)。唯一の接触指標であり、ロングヒット作品には欠かせない要素となります。

TEAやSEAは収録曲数に関係なく分母が一律ゆえ曲数の多い作品が有利になりかねないという問題点はありますが、長く支持される作品がロングヒットする傾向にあるのが米ビルボードアルバムチャートの特徴。今年度は2年前同様、モーガン・ウォレンがアルバムチャートを制覇する可能性が高いと思われます(なおモーガンのアルバムは2作品続けて30曲以上が収録されています)。

 

ソングチャートでもストリーミングに強い作品が勢いをキープし年間単位で上位を獲得する傾向にありますが、アルバムチャートは所有指標の割合が高いのが特徴です。ただし所有指標に高い作品はSEAが安定しなければ登場2週目以降の急落につながりやすく、たとえばロック、そしてK-POPはその急落が少なくありません。またストリーミングの支持は、ソングチャートにも波及します。

 

では今回のNewJeansの動向は如何でしょう。私見と前置きするならば、これまでのK-POPアクトの中では米に広く支持されているほうではないかと感じています。

 

下記は2022年度以降の米ビルボードアルバムチャートで週間2位までにランクインした作品のリスト。K-POP作品については青で表示しています。

ここからみえてくるのは、K-POP作品のアルバムセールスの強さと、一方ではSEAが高くないという点。しかしながらアルバムユニット数に占めるSEAの割合において、NewJeans『Get Up』は2022年度以降2位以内に入ったK-POP11作品の中で2番目に高い19.4%を獲得しています。

上記は2022年度以降の米ビルボードアルバムチャートで週間2位以上を記録したK-POP作品のみを抽出した表。先述した獲得ユニット数に占めるSEAの割合のみならず、NewJeans『Get Up』には特筆すべき状況が複数みられます。

たとえばトップアーティストチャート(Artist 100)において、NewJeansは前週も100位以内にランクイン。これは『Get Up』の先行曲である「Super Shy」が前週もソングチャート100位以内にランクインしているゆえですが、多くのK-POP歌手はアルバムチャート上位初登場の前週、100位以内に入っていません。

そしてソングチャートでは最新8月5日付においてNewJeansのアルバム収録曲が3曲ランクイン。アルバムチャート初登場週に収録曲が3曲エントリーするのは2022年度以降において初であるのみならず、この3曲同時エントリー自体K-POP歌手では最多タイとなるのです。

ホット100に3曲以上が同時にランクインするのはK―POP女性グループで初めて。男女を通じたK―POPアーティストとしてはBTS(防弾少年団)に次いで2例目となる。

 

なお8月5日付の米ビルボードによるグローバルチャートのうち、米を含むGlobal 200では9曲が200位以内に登場。米の分を除くGlobal Excl. U.S.を含めたトップ10速報は今週掲載していますが(【海外ビルボード】米はジェイソン・アルディーンがトップとなり、カントリー曲が史上初のトップ3を占拠(8月1日付)参照)、Global Excl. U.S.で4位に初登場した「ETA」はGlobal 200にてトップ10は逃すも、12位に初登場しています。

 

今後は『Get Up』および収録曲群が米ビルボードのアルバム/ソングチャートでヒットを持続させることができるかが重要な点となります。

次週はトラヴィス・スコット『Utopia』の首位初登場が見込まれ、収録される19曲すべてがソングチャートも登場するものとみられます。「ETA」および「Cool With You」の100位以内エントリーが続くかは不明ですが、「Super Shy」でキャリア初となるトップ50入りを果たしたことで、たとえばラジオでもOAされていけばさらなる飛躍も考えられます。その後押しになりそうなのが米での活動や、著名人のバックアップです。

たとえば現在開催中のコンサートツアーにおいて、ビヨンセが開演前にNewJeansの「ETA」を流しているということが判明。ビヨンセ本人の選曲かは不明ですが、注目の動きです。またNewJeansは現地時間の8月3日に開催される音楽フェス、ロラパルーザに出演。TOMORROW X TOGETHERがヘッドライナーを務めることもあり、K-POP自体そしてNewJeansの米での知名度上昇なるか、今後のチャート動向と合わせて注目です。

 

 

なお日本については、以前このようなエントリーを記しました。

最新8月2日公開分のビルボードジャパン各種チャートでは、登場2週目となる『Get Up』がアルバムチャートで4→14位に後退。一方で同日公開分のソングチャートでは8曲が100位以内にエントリーし、うち『Get Up』からは5曲がランクインしています。

ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャート(Artist 100)では、NewJeansが6→4→5位と高位置で推移。とりわけストリーミングが5→4→3位、動画再生が8→5→5位というように、ソングチャートで上位進出およびロングヒットにつながりやすい接触指標群が安定且つ上昇しています。

NewJeansがこのチャートで高値安定する可能性が高いと考えると共に、次週は米ビルボードアルバムチャートを制したという話題を受けてさらに伸びる可能性も考えられます。世界で、そして日本でもNewJeansがK-POP界のトップに躍り出ようとしていると言っても過言ではないかもしれません。