イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

コアファンの推し活としての、"サブスクプレイリスト活用"の勧め

以前記載したツイートが、今も時折参照されています。

一連のツイートについては後にブログにまとめています。

 

コアファンによる音楽チャートへの頑張りに対しては否定的な見方もありますが、チャート施策は海外の歌手が率先して行っています(そしてそれによりコアファンがより献身的になる姿勢もみられます)。この点については昨日登場した記事(→こちら)および関係者のリアクション(→こちら)に対するツイートへの違和感を踏まえあらためて表明し、記事の書き手等に自省(いわゆる"自問自答")を求めています。

一方でコアファンによる活動については、コアファンの頑張りがその中だけで収束しているのではと感じることも少なくありません。先述したブログエントリーにて『音楽チャートにおける最善は、ライト層からの支持を集めていくことだと考えます。ひとつの曲に対する集中的なアクションは失速に成りやすい一方、ライト層の支持獲得は曲のみならず歌手の人気継続にもつながります』と書いたのは、そのことも背景にあります。

 

ならばコアファンが行ったほうが好いだろうことについて、今回記してみます。紹介するのは、【サブスクプレイリスト活用の勧め】です。

 

 

サブスク再生回数等に基づくビルボードジャパンのストリーミング指標は、ビルボードジャパンソングチャートの大きなポイント源になるのみならずロングヒットの条件でもあります。加えて昨年秋以降Official髭男dism「Subtitle」および米津玄師「KICK BACK」(奇しくも2曲は同日デジタルリリース)が共に大ヒットしたことも相俟って、サブスクサービスの利用者が増えていることが複数の関係者発言やデータから見えています。

さらにサブスクプレイリストの影響力は、クリスマスソングの海外での興隆にもはっきり表れています。下記は1月7日付米ビルボードソングチャートにてマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」が通算12週目の首位を獲得した際の速報記事における米ビルボードの記載内容。翻訳部分はDeepL翻訳ツールにて訳しています。なお速報記事全体の翻訳はブログに掲載しています(→こちら)。

Carey’s “Christmas,” on Columbia Records/Legacy Recordings, was first released on her album Merry Christmas in 1994. As streaming has grown and holiday music has become more prominent on streaming services’ playlists, the song first reached the Hot 100’s top 10 in December 2017 and first hit the top five in the 2018 holiday season, before leading over the holidays in 2019 (for three weeks), 2020 (two), 2021 (three) and this season (a single-season-best four).

(コロンビア・レコード/レガシー・レコーディングスからリリースされたキャリーの「クリスマス」は、1994年にアルバム『メリー・クリスマス』で初めて発表されました。ストリーミングが発展し、ストリーミング・サービスのプレイリストでホリデー・ミュージックが目立つようになると、2017年12月にHot 100のトップ10に入り、2018年のホリデー・シーズンで初めてトップ5に入り、2019年(3週間)、2020年(2週間)、2021年(3週間)と今シーズン(1シーズン最高の4週間)のホリデー・シーズンにトップを飾りました。)

Mariah Carey’s ‘Christmas’ Tops Hot 100 for 12th Week – Billboard(1月3日付)より。マライア・キャリー「All 1月7日付

この傾向は日本においても目立ちつつある印象ですが、加えてビルボードジャパンにおいては直近5年の年間アルバムチャートにおいてベストアルバム(やベストアルバム的な作品)がトップ10のうち多くても2作品となっていることも注目です。ベストアルバムはプレイリストに取って代わられる可能性があるためかリリース自体が減ったのかもしれませんが、2017年度と比べて対照的な動向となっています。

これら動向を踏まえれば、サブスクの拡がりに伴い音楽チャートが変化し、サブスクやプレイリストが重要視されてきていることが自ずと理解できるのではないでしょうか。

 

サブスク再生回数等に基づくストリーミング指標(米ビルボードやグローバルチャートにおいてはこの指標に動画再生も含まれます)は、ライト層の動向も大きく反映されます。ならば歌手のコアファンの方々は、推す歌手をより多くの方にサブスクで聴いていただけるよう手段を講じることも必要でしょう。

たとえばツイートにてサブスクのリンク先を掲載することも勿論大切ですが、より重要なのはライト層の方々がどのタイミングでより聴きたいと思うかを察知し、そのニーズに応えることではないでしょうか。そのタイミングとして、以下の3点を挙げてみます。

 

 

ひとつは【テレビパフォーマンス直後】です。歌手の中には、テレビでのパフォーマンス終了直後にデジタルでの接触や所有、フィジカルのオンラインショップ等リンク先をまとめたものをツイートすることを必ず行う方もいらっしゃいます。これはパフォーマンスに魅了されて歌手を検索した方を誘導するものとして最適です。

ならばコアファンの方々も、テレビパフォーマンスで感化され検索してきた方々を、いわば沼に誘導すべくプレイリストを用意することも効果的ではないでしょうか。その際は披露曲を最上位に据え、その曲からの流れで聴いてもらいたい作品を数曲用意し初級編的な形でアップすると聴いてもらいやすくなるのではと考えます。

 

次に【ヒット曲に紐づけること】も重要です。例として藤井風「死ぬのがいいわ」を挙げてみます。この曲は昨年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)でパフォーマンスされた際に"愛の歌"とテロップで紹介されていましたが、実際に海外の作品では恋愛において死の表現を用いるものが少なくありません。

最新1月14日付米ビルボードソングチャート(ブログで紹介しています→こちら)において、ザ・ウィークエンド「Die For You」が初のトップ10入りを果たしました。この曲は2016年リリースのアルバム収録曲であり、TikTokを機にブレイクしたという点においても藤井風「死ぬのがいいわ」と共通しています。ならば「Die For You」が気になって調べた方に、その関連曲として「死ぬのがいいわ」を提示するのは如何でしょう。

この提案は上記ブログエントリーにて紹介した内容と近い形とはなりますが、やはり有効だと考え再掲しています。そしてプレイリスト作成時には海外の音楽ファンを意識し複数の言語で説明することも必要です。デジタルリリースは海外進出とほぼイコールである以上、海外でのヒットの可能性も高めます。無論、国内のヒット曲に紐づけたプレイリストの作成も有効です。

 

最後に【訃報を知った直後】もサブスクのニーズが高まります。たとえば日本のSpotifyにおけるバイラルチャートでは訃報が流れた1月12日付にてジェフ・ベック「Cause We've Ended As Lovers (邦題:哀しみの恋人達)」(1975)が初登場し、最新1月14日付まで3日連続で首位に。最新日においてはトップ10内に4曲が登場しています。直近では高橋幸宏さんの訃報も流れましたが、同様の現象はほぼ間違いなく起こるでしょう。

そしてSNSでの話題に基づくバイラルチャートのみならず、特に海外では実際の再生回数に基づくデイリーチャートにおいても顕著な動きがみられます。たとえば昨年9月に亡くなったクーリオによる1995年度米ビルボード年間ソングチャート制覇曲「Gangsta's Paradise (feat. L.V.)」が、2022年9月29日付のグローバルデイリーチャートで11位に再登場し、同日付ではアメリカにて6位に初登場を果たしたのです。

歌手の訃報は、その方やヒット曲が好きだったり影響を受けた方が過去の功績を思い出すきっかけとなり、彼らが思い出等を語ることで多くの方に共有されていきます。自身が如何に影響を受けたかをプレイリスト化し、ツイートやブログ等にてその選曲理由を添えることでファン同士で共有されるのみならず、亡くなった方を存じ上げなくとも気になっていたライト層にも届くきっかけが生まれるかもしれません。そしてそれが新たなコアファンを生んだり、また再評価につながる可能性が高まります。

 

 

歌手のことがふと気になった人に気付きのきっかけを与え、最終的にコアファンに昇華させることが、プレイリストの活用により叶いやすくなったというのが私見です。無論1曲単位でもそれは可能ですが、プレイリスト化し、さらに説明文やブログ等にてその選曲への思いを乗せればより響くかもしれません。選曲への思いはラジオでの曲紹介とも通じるかもしれず、プレイリストはラジオに似た役割を果たすと言えるでしょう。

(ゆえにラジオ番組にて、放送後にOA曲をプレイリスト化することも願っています。)

コアファンの方々には是非、プレイリストを作成してみることをお勧めします。一方で、そもそもデジタルに未解禁だったり、解禁しても一部にとどめている歌手の方がいらっしゃいますが、それは至極勿体ないことです(TikTokで過去曲のバズが発生している状況を踏まえれば尚の事)。コアファンの方々が歌手や運営側に対し、デジタルの解禁を求めることも必要だと考えます。