イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

歌手の推し活におけるラジオリクエストの重要性…音楽チャートにも最終的に寄与されていくと考える理由

一昨日つぶやいた内容に、多くのリアクションをいただきました。今回はその内容を転載します。

ツイートはこちらの内容ではじまります。

 

コアファンにとって歌手を推す方法は多岐に渡ります。CDを買う、ライブに行く、グッズを買う等は歌手側の利益につながる一方、金銭面を中心とした物理的制約が生じます。またCDを買うことは音楽チャートにも影響を与えますが、その音楽チャートにおいて最近ではLINE MUSIC再生キャンペーンに参加する、Twitterで歌手名と曲名をつぶやくといったビルボードジャパンソングスチャートでの上昇を意識した動きもみられます。

ビルボードジャパンは、コアファンの熱量が大きく表れた行動を"チャートハック"という表現で非難しています。個人的にはコアファンの問題も否定はしませんが、歌手側、LINE MUSIC等、そして何より言葉の使い方も含めチャートポリシー変更に十分な責任を持っていると言い難いビルボードジャパンにも問題があると指摘させていただきました。なお言葉の使い方という面では、記事の書き手にも違和感を抱いています。

音楽チャートにおける最善は、ライト層からの支持を集めていくことだと考えます。ひとつの曲に対する集中的なアクションは失速に成りやすい一方、ライト層の支持獲得は曲のみならず歌手の人気継続にもつながります。推し活に悩む方に対するラジオでの助言は、そのライト層支持にもつながる最善策を示したものと捉えています。一昨日のツイートでは、スタッフによる助言についてチャート面を踏まえた補足を行いました。

 

ビルボードジャパンがコアファンを"チャートハック"として非難したKAI-YOUの記事では、チャート分析者がチャートに乗せるための分析を行うと記しており、強い違和感を覚えた次第。ゆえに今回のツイートもそのような見方でチャート対策を伝授するものと捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、それは必ずしも正しくはありません。ラジオ指標ほどコアファンが仕掛ける施策が有効に左右しにくいものはないためです。

ラジオ指標自体にも有効な施策がありますが、それは歌手のゲスト出演やパワープレイ(ヘビーローテーション)と呼ばれる歌手側発のものであり、他方コアファンのリクエストが必ずしも採用されるわけではありません。ラジオ指標においてはコアファンの頑張りがロングヒットにはつながりにくいことについて、ラジオ指標独特の特性も交えて下記ブログエントリーでまとめています。

 

ビルボードジャパンにはフィジカルセールスやダウンロードのような所有指標と、ストリーミングや動画再生に代表される接触指標とがあり、ライト層は接触行動がメインとなります。そしてロングヒットする曲は獲得ポイントに占める接触指標の割合が大きいのも特徴です。

LINE MUSIC再生キャンペーンはストリーミング指標において起爆剤となりましたが、本来の接触指標の動きとは大きく異なりキャンペーン終了時に急失速します。大事なのは長く聴いてくれる人たちをどうやって作り上げるかであり、それが結果的にロングヒットに至らせる鍵となるのです。ゆえにライト層の獲得がより重要となります。

 

その接触指標のひとつがラジオですが、聴き手に選曲権がないという意味で特殊です。リクエストが必ずしも採用されるわけではなく、また推す歌手がメインDJを務めたりゲストに登場する以外の番組では必ずしも彼らの曲がOAされるわけではありません。ただラジオには番組自体のファンが多く存在し、職場や家庭でながら聴きに成りやすいメディアでもあります。そこで流れた曲が、ふと強く印象に残った経験はないでしょうか。

ラジオでのリクエストが有効なのは、それが採用されOAに至った場合、歌手にそこまで興味を抱いてはいなかった方がOA曲に触れて気に入り、そこから自発的に接触行動を起こすためのきっかけとなりやすいためです。

(ゆえにラジオ局側には、OA曲を検索しやすい、またサブスクサービスへ誘導できる環境を構築し、聴き手に生まれたきっかけを次に繋げさせるようにしてほしいと願います)。

 

ラジオ番組は多岐に渡り、番組毎にリクエスト受付の有無等が異なるため、その番組のポリシーをまず尊重することが重要です。自分が担当する番組はリクエスト対象曲を音楽特集に絞ったもののみとしていますが、全く該当せず好きな歌手の曲のみを幾度もリクエストされることが稀にあります。それはリクエストくださった方のみならず、その方が推す歌手のイメージを自ら下げかねない可能性を認識する必要があります。

そのようなリクエストのみ、それもしつこいものは多くの番組で好まれないでしょう。"採用する側も人間"とツイートしたのはそのためです。そうではなく番組を聴いての感想や、番組でふとDJが喋ったことへの反応、また今では遠方のラジオ局も聴くことができることから聴き手の場所の話題を添えること等、温かみのあるメッセージを送ることでDJやスタッフに届いて嬉しいと思っていただくメッセージづくりが有効です。

(なおこれは私見、体感が強めかもしれませんが、メールや番組ホームページのメッセージフォーム経由でのメッセージが大半の中にあって、手書きでメッセージをくださることは非常に嬉しく、ありがたいと感じています。また全体的にメッセージ数が減っていることも考えられるため、心のこもったメッセージは尚の事嬉しく感じています。)

番組DJやスタッフの好感を集めれば、いずれ番組側が主体的に歌手の特集を組むことも考えられます。

 

ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のひとつ、ラジオはポイント面で、またロングヒットしにくい傾向を踏まえても重視されにくいと考えます。ウエイトも以前から減少の模様ですが、この指標はチャート新設当初からフィジカルセールス指標共々存在しており、除外されることはないでしょう。また、日本より圧倒的に放送局の多いアメリカのビルボードソングスチャートでは今もラジオ指標が存在感を示しています。

(上記は今年度の米ビルボードソングスチャート首位獲得曲における3指標の動向。ストリーミングには動画再生が含まれます。米ソングスチャートにおいてラジオは上昇しにくい一方で降下するタイミングが最も遅いため、この指標のヒットがロングヒットや年間チャートの上位進出につながりやすいのです。)

ラジオは、radikoで聴取外エリアをチェックできるようにするためには月額料金がかかりますが、メールや番組ホームページ経由でメッセージを送るならば、radikoの料金を含めてもワンコインでお釣りが来るくらいにお金のかからない娯楽です。そしてそこで流れた音楽が誰かのお気に入りになりライト層→コアファンへ昇華に至れたならば、費用対効果は十分に得られるものではないでしょうか。

無論、リクエストをライト層獲得を第一義として行う必要はありませんし、ツイートでも述べたように選曲権はラジオ番組側にあるため狙ってOAに至らせることもできません。あくまでリクエストが採用されたならば嬉しいくらいのスタンスでアクセスすることが最善だと考えます。