毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
6月7~13日を集計期間とする6月16日公開(6月21日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカルセールス初加算に伴い、乃木坂46「ごめんねFingers crossed」が首位を獲得しました。
【ビルボード】乃木坂46「ごめんねFingers crossed」、シングル704,346枚を売り上げ総合首位獲得 https://t.co/wZSUwZHZpZ pic.twitter.com/CX0JqmQupf
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年6月16日
ビルボードジャパンは下半期初週となる2週間前にフィジカルセールス指標のウェイト減少というチャートポリシー変更を実施。一定枚数以上のフィジカルセールスについて係数処理を行っていますが、その枚数を大きく引き下げています。
その結果、乃木坂46「ごめんねFingers crossed」のポイントは20472。フィジカルセールスは前作「僕は僕を好きになる」よりも2万5千枚以上多いのですが、同曲のフィジカルセールス加算初週における36450ポイント(2月3日公開(2月8日付))を大きく下回っています。
さて今回気になったのは、「ごめんねFingers crossed」が日向坂46「君しか勝たん」にポイントで敗れていること。チャートポリシー変更週にフィジカルセールスが初加算されBTS「Butter」に敗れた「君しか勝たん」ですが、その際のポイントは20563。「ごめんねFingers crossed」はフィジカルセールスで「君しか勝たん」に20万枚以上の差をつけながら、ポイントでは僅差で敗れているのです。
上記は乃木坂46「ごめんねFingers crossed」および日向坂46「君しか勝たん」のフィジカルセールス加算初週におけるチャート推移(CHART insight)。右上のチャート構成比に注目すると。
【ビルボード週間予想振り返り(総合)】#乃木坂46「#ごめんねFingerscrossed」のCD発売週動向を過去作と比較
— あさ (@musicnever_die) 2021年6月16日
下半期からのCD係数変更により総合ポイントは前作から約1.6万の大幅減#日向坂46「#君しか勝たん」との比較でも約100点下回った
LUとDLで差を付けられたことでCDの優位が打ち消されている pic.twitter.com/UK8Pfe8tUQ
チャート分析や予想を行うあささんが指摘されているように、「ごめんねFingers crossed」はルックアップ(LU オレンジで表示)およびダウンロード(DL 紫)が「君しか勝たん」に大きく負けていることが解ります。
(なお、昨日17時台に収録したポッドキャスト(Billboard Top Hits)では2曲のポイント差に言及していますが、指標毎の細かな指摘には至っていませんでした。この点についてお詫び申し上げると共に、より詳細な分析を行っているあささんのツイートを今回引用させていただきました。)
ルックアップとはパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベース(Gracenote)にアクセスされる数を指し、ここからレンタル枚数や実際の購入者数(ユニークユーザー数)を推測可能。坂道グループはレンタル解禁をアルバム同様17日後に設定しているため、フィジカルセールス加算初週はレンタル分が加算されません。ユニークユーザー数の差、コアなファンのチャートへの意識の差も想像可能な上、「君しか勝たん」ではライト層による購入がより多かった可能性もあります。
ライト層については、サブスク再生回数に基づくストリーミングや動画再生といった接触指標群に大きく反映されます。接触指標群は順位的に「ごめんねFingers crossed」よりも「君しか勝たん」が勝りますがフィジカルセールス加算初週においてはポイント的にそこまで差はみられません。むしろフィジカルセールスの影響力が小さくなっていくほど接触指標群の差が表れると言えます。
ルックアップは所有分のみならず先述したレンタルも反映されることから、接触指標的な意味合いも持ち合わせています。「ごめんねFingers crossed」は2週後にレンタルに伴うルックアップが初加算されることから、少なくとも再来週までの推移を確認の上でライト層にどこまでリーチしていたかを振り返る必要があります。
ライト層へのリーチに成功している曲として、米津玄師「Pale Blue」が挙げられます。
動画再生指標が今週初の1週間フル加算となった「Pale Blue」のポイント前週比は79.1%。ダウンロードは前週比44.3%と大きく落ち込んだ一方、ストリーミング再生回数は同118.3%と伸び、総合での過度なポイントダウンを防ぐ大きな要因となっています。ストリーミングは7位、動画再生は6位からそれぞれ2位に上昇しており、フィジカルセールスやダウンロードの加算2週目において、所有指標の急落を接触指標群がカバーすることが如何に重要かがここからよく解るのではないでしょうか。
(なお、ストリーミング再生回数はそのままストリーミング指標に移行するわけではありません。デジタルプラットフォームの有料会員による1再生と無料会員によるそれとでは、前者のほうがウェイトが大きくなっています。)
前週はこの「Pale Blue」を、宇多田ヒカル「PINK BLOOD」やL'Arc~en~Ciel「ミライ」と比較した上で、所有指標初加算時における接触指標の重要性を記しました。その2曲の今週の動向をみれば、総合順位や接触指標の推移ならびに総合順位と接触指標との関連性を踏まえ、接触指標が如何に重要かが理解できるはずです。所有指標の加算初週でも2週目以降でも、接触指標群が屋台骨となることは間違いないのです。
(ストリーミングは青、動画再生は赤で表示されています。)
米津玄師「Pale Blue」は次週、フィジカルセールス初加算に伴い2万ポイント超えを狙える位置にいます。ライバルはBTS「Butter」。昨日発売の日本向けベストアルバムには未収録ですがアルバムは100万枚以上を出荷し、既に50万枚以上が売れたとオリコンでは報じられています(ビルボードジャパンによる週前半の速報は本日発表予定)。アルバムへの注目が「Butter」を押し上げると考えれば、次週は高レベルでの争いが期待できます。