イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】フィジカルリリース週にもキャンペーンが効果的? ストリーミングの重要性を考える

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

10月25~31日を集計期間とする11月3日公開(11月8日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。前週首位を獲得したLiSA「明け星」が5位にダウンし、フィジカル関連指標初加算の日向坂46「ってか」が初登場で首位を獲得しました。

f:id:face_urbansoul:20211104051102p:plain

前作「君しか勝たん」はフィジカルセールス初加算に伴う初登場時が2021年度下半期(第3四半期)初週。フィジカルセールス指標のウエイト減少を実施した同週のチャートポリシー変更に伴い、BTS「Butter」に敗れています。この変更内容、そしてチャートポリシー変更への支持表明は以前記載しています。

最新週では2位のback number「水平線」が6千ポイントを割り込み強力なライバルが不在だったことで、2位に1万ポイントを超える大差で首位を獲得した「ってか」。そして注目は、ストリーミング(上記チャート推移グラフ(CHART insight)では青で表示)の低くなさ。前作「君しか勝たん」ではフィジカルセールス初加算時に100位未満だったこの指標が、今回は61位を記録しています。

これはフィジカルリリース日にデジタルも解禁されたことに合わせ、LINE MUSIC再生キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)が組まれたことが影響しています。一定数以上再生すればプレゼントに当たるチャンスがあるというこのキャンペーンは、主にコアなファンを刺激するものです。

これは2週前に首位を記録した櫻坂46「流れ弾」や同週2位のStray Kids「Scars」でも行われており(上記ブログエントリー参照)、フィジカルリリースのタイミングでLINE MUSIC再生キャンペーンを実施することでビルボードジャパンソングスチャートにおけるジャンプアップにつなげたいという戦略の一環と考えられます。

 

その一方で、日向坂46「ってか」が先述した2曲に比べてストリーミング指標の順位が低い状況は、ともすればプレゼント応募権の獲得条件となる再生回数の設定値を低くしていること、また22日間という長期間の設定がコアなファンをより強く動かすまでには至らなかったとも言えそうです。

ストリーミングおよび動画再生という接触指標群はライト層の支持がより大きく反映されるのですが、動画再生指標において「ってか」は100位未満(300位圏内)にダウンし、「君しか勝たん」の70位(フィジカルセールス初加算時)に敗れています。同指標は右肩下がりであり、ライト層を獲得できているとは想像し難い状況です。その点からも、ストリーミング指標の高さがコアなファンに因るものでであると考えていいでしょう。

 

 

LINE MUSIC再生キャンペーンを採り入れる曲が変化していることやストリーミング指標の特徴等は、前週のソングスチャート振り返り時にも述べています。2週前、そして前週のブログエントリーをご参照ください。

ストリーミングは総合ソングスチャートとの順位の乖離が少なく、また乱高下もあまりないことから、社会的ヒットの鑑といえるビルボードジャパンソングスチャートを大きく支える指標です。しかしLINE MUSIC再生キャンペーン後に急落する曲が大半という状況を踏まえるに、ビルボードジャパンは近い将来チャートポリシー変更を実施し是正を図るかもしれません(し、自分はそれが必要ではないかと以前から提案しています)。

その是正が行われる前に、歌手側が行うべきは如何にコアなファンを惹き付けつつ、同時にライト層を獲得していくかにあると考えます。そして、ユーザー(リスナー)が新曲をサブスクでいち早くチェックする習慣を常態化することが音楽業界全体の課題です。

 

 

フィジカルリリースのタイミングでLINE MUSIC再生キャンペーンを実施することは、ビルボードジャパンソングスチャートにおける急落を防ぐという意味合いもあるでしょう。キャンペーン期間の終了タイミングをフィジカルリリース週より後に設定することで、少なくともキャンペーン中は総合チャート上位にとどまらせることを目標にしているのかもしれません。

というのも、前週初のトップ10入りを果たした5曲のうち、LiSA「明け星」(1→5位)を除きトップ10落ちしているのですが、その差が歴然なのです。

 

King Gnu「BOY」(9→15位)

f:id:face_urbansoul:20211104054958p:plain

星野源「Cube」(4→37位)

f:id:face_urbansoul:20211104055425j:plain

STU48「ヘタレたちよ」(2位→100位未満(300位圏内))

f:id:face_urbansoul:20211104055511j:plain

三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEJSB IN BLACK」(5位→100位未満(300位圏内))

f:id:face_urbansoul:20211104055552j:plain

 

この中でLINE MUSIC再生キャンペーンを実施しているのは星野源「Cube」のみ。STU48は楽曲シェアキャンペーンを実施しているものの(→こちら)、再生キャンペーンは行われていません。そして4曲のうち、これまで一度もストリーミング指標300位以内に入らなかった「ヘタレたちよ」および「JSB IN BLACK」が総合でも100位を割ってしまいました。

(なお、星野源「Cube」のLINE MUSIC再生キャンペーン(→こちら)対象期間は次回のソングスチャート集計期間終了時までとなっているのですが、ストリーミング指標が77位→100位未満(300位圏内)と高くなく、またダウン幅が小さくないのが気掛かりである、というのが私見です。)

LINE MUSIC再生キャンペーン未実施でもストリーミングが比較的順調に推移するKing Gnu「BOY」が総合ソングスチャートでも4曲の中で最上位にとどまったという状況が、ストリーミング指標の重要性を物語ります。チャート構成比(獲得ポイントに占める各指標の割合)においてロングヒットを続ける曲のストリーミング指標は60~70%台となっていることから、ゆくゆくはこの形に近づけることが理想ではないでしょうか。

 

 

この3週、ストリーミング指標の重要性やLINE MUSIC再生キャンペーンの影響力を記載してきました。近い将来ビルボードジャパンのチャートポリシー変更で当該キャンペーン対象曲のウエイトが下がるかもしれませんが、キャンペーンを有効活用し、実施期間中にライト層にも曲を浸透させ、キャンペーン終了後も再生回数を落とさず、そしてチャート構成比を理想形に近づけることがロングヒットの鍵と言えるでしょう。