毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。
4月19~25日を集計期間とする4月28日公開(5月3日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。前週トップの櫻坂46「BAN」は13位に後退、フィジカルセールス初加算に伴いSEVENTEEN「ひとりじゃない」が初の首位を獲得しました。
【ビルボード】SEVENTEEN「ひとりじゃない」がセールスとTwitterを制し総合首位、NiziU「Take a picture」は2位キープ https://t.co/dFjsFavo7W pic.twitter.com/uwFlvw6Ckv
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2021年4月28日
37万枚を超えるフィジカルセールスが首位到達の大きな要因となった「ひとりじゃない」。しかしながら気になるのがルックアップ指標の4位という成績。
ルックアップはパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベース(Gracenote)にアクセスされる数を示し、この数値からはCD購入枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル数が推測可能。SEVENTEENについては前作「舞い落ちる花びら (Fallin' Flower)」のレンタル解禁が1年後であることを昨日紹介しましたが、これが前作における【フィジカルセールス>ルックアップ】の要因のひとつと捉えています。
そして。
今日のブログの続きになりますが https://t.co/eWenZkY6fh 最新ビルボードジャパンソングスチャートを制した #SEVENTEEN「#ひとりじゃない」はルックアップ4位。同指標2位の #YOASOBI「#怪物」はフィジカルセールスが「ひとりじゃない」のわずか0.3%。レンタル未解禁も大きく影響していると考えます。 https://t.co/ch5MV7LBHD
— Kei (@Kei_radio) 2021年4月28日
SEVENTEEN「ひとりじゃない」におけるルックアップの強くなさは前作同様レンタル未解禁の影響も大きいですし、ユニークユーザー数が多くないことも推測できます。さらにストリーミングについても下記キャンペーンの影響が大きいと想像され、ストリーミング(サブスク再生)におけるユニークユーザー数もまた多くないのではないでしょうか。ここから、接触指標がライト層の拡充を示すわけではないということも見えてきます。
昨日はブログにてYOASOBIのレンタル解禁アナウンスに伴う幅広い層への訴求を記載しましたが、その真逆とも言える施策ではコアなファンがいずれ息切れを起こしかねないのではと危惧します。次週以降の動向を注視しましょう。
さて、前週首位を獲得した櫻坂46「BAN」は13位に後退しました。
フィジカルセールス加算2週目におけるポイント前週比が極端に下がるのがアイドル曲の傾向であり、「BAN」もそれをなぞった形。ストリーミングや動画再生といった接触指標群が加点されながらも100位未満(300位圏内)というのはあまりにも大きな痛手と言えます。
(上記は2017年度以降のビルボードジャパンソングスチャートにおける欅坂46および櫻坂46のシングルCD表題曲の動向(CD関連指標初加算週とその前後の計3週分を表示)。2017年度以降としたのは、一定枚数(週間30万枚と言われています)を上回るCDセールスを記録した場合に係数処理が行われるようになったのが同年度以降であり、この係数適用によりチャートがより社会的ヒットの鑑となったと考えるためです。)
「BAN」は櫻坂46へ改名後2作目のシングル表題曲ですが、フィジカルセールス加算2週目のポイント前週比は2017年度以降最も低い12.5%。2週目のフィジカルセールス前週比もまた最低となっています。また、先述したように接触指標群が充実していません。欅坂46時代にヒットを連発していたのはフィジカルセールス加算2週目のポイント前週比が常時2割以上だったこと、そして(そのポイント前週比を支えた)接触指標群の高水準が大きいのですが、改名後にそれら数値が大きく落ち込んでいるのは気掛かりです。
ストリーミング指標に強い曲が上位にとどまる傾向が強くなったことで「BAN」が埋もれてしまった…そう考えるのは早計かもしれません。ここ数週は全体的にポイントが減少傾向にあり、最新4月28日公開(5月3日付)ソングスチャートではダウンロード10位の数値およびストリーミング1位の再生回数がいずれも今年度最低となっています。
その結果、総合チャートにおける10位のポイントは今年度最低となり、初めて5000ポイントを下回っています。
その中で櫻坂46「BAN」は、フィジカルセールス加算2週目における総合順位こそ「Nobody's fault」を上回ったものの、トップ10内をキープすることはできませんでした。櫻坂46「BAN」はレンタル解禁がアルバム同様発売から17日後に設定されており、これがルックアップで首位を獲れなかったものと考えます。同指標を制したのはNiziU「Take a picture」(総合2位)であり(この作品もまた発売から17日後のレンタル解禁でしたが)、「BAN」が今週上位にとどまるにはレンタルを3日後に解禁することもまた必要だったのではないでしょうか。レンタル解禁遅らせ措置はフィジカルセールスへの誘導が目的なのかもしれませんが、その効果が表れていたかは疑問です。
フィジカルリリース作品において、セールスを主軸とすることやコアなファンに頼る戦略はビルボードジャパンソングスチャートでは通用しないと言えます。仮に首位を獲得しても翌週急落しては大ヒット曲と断言することは厳しいのが実情です(フィジカルセールス初加算でチャート上位に進出した曲は翌週の推移をみて真のヒット曲かを判断すべきであるとこのブログで幾度となく申し上げています)。ゆえに歌手側はコアなファンも大事にしつつ、ライト層を拡充することにこそ重点を置くべきではないでしょうか。
ビルボードジャパンが社会的ヒットの鑑になっている以上、どんなにフィジカルセールスが強くともそればかりが突出しているのでは広く世間に浸透しているとは言い難いというのが私見です。