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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

LiSA「明け星」、フィジカルセールスを武器に1ヶ月後のビルボードジャパンソングスチャートでも首位を狙う

ビルボードジャパンソングスチャートは8指標で構成され、デジタルに強い曲もしくはフィジカルをリリースしていない(ためにフィジカルセールスおよびルックアップの2指標が加算されない)曲も首位に至る可能性があります。しかしながら初週フィジカルセールスが加算された曲が総合首位に躍り出ることが多いのが実際のところ。フィジカルセールス指標のウエイトが下がった今年第3四半期以降でも状況はさほど変わりません*1

その中にあって、最新10月27日公開(11月1日付)ではフィジカルセールスを1ヶ月後に控えたLiSA「明け星」がデジタル先行リリースに伴い、フィジカルセールス首位のSTU48「ヘタレたちよ」を抑えて総合首位を獲得しています。

フィジカルセールス首位曲を抑えたのは7月28日公開(8月2日付)におけるBTS「Permission To Dance」以来およそ3ヶ月ぶり。同週はKinKi Kids「アン/ペア」がフィジカルセールス17万強を獲得しながら、「Permission To Dance」が3千ポイント以上の大差をつけました。最新週においても「明け星」は「ヘタレたちよ」に3千ポイント以上の差をつけています。

 

この「明け星」はグローバルチャートにもランクイン。この点については水曜のブログエントリーにて紹介していますが(下記に同日付のリンクあり)、その詳細が別途報じられています。

LiSAは、今週2曲の日本語曲をグローバル・チャートに初登場させた。TVアニメ『「鬼滅の刃」無限列車編』のオープニング・テーマに起用されている「明け星」は、“Global Excl. U.S.”で43位、“Global 200”で107位、「往け」は“Global Excl. U.S.”で104位をマークした。彼女は、昨年10月に「炎」で“Global Excl. U.S.”最高2位を記録している。

ビルボードによる元記事はこちら。米ビルボードでは有料会員以外、グローバルチャートについては過去分および101位以下を確認できないため、追加情報があるのはありがたいことです。ちなみにLiSAさんは「明け星」、そして「往け」もGlobal Excl. U.S.における順位が高いですが、これは大量ランクインしたアデルの曲において、Global Excl. U.S.に米の分を加えたGlobal 200の順位がより高いためです。

一方では、「明け星」等が海外の中でも米における人気が強いほうではないと言い換えることも可能かもしれません。この【Global 200の順位<Global Excl. U.S.の順位】という傾向はJ-Pop全体の課題とも言えることから、米でJ-Pop全体の知名度を上げる必要があります。音楽業界のみならず、文化全体の徹底した海外進出が課題と捉えていいでしょう。

 

 

さて、「明け星」はフィジカルリリースが11月17日となっていますが、今週以降は強力なフィジカルリリース作品が目白押し。いずれもビルボードジャパンソングスチャートでの首位到達を狙える作品と言えます。

・10月27日リリース→11月3日公開(11月10日付)に反映

  日向坂46「ってか」

・11月3日リリース→11月10日公開(11月17日付)に反映

  INI「Rocketeer」およびBE:FIRST「Gifted.」

・11月12日リリース→11月17日公開(11月24日付)に反映

  なにわ男子「初心LOVE」

・11月17日リリース→11月24日公開(11月29日付)に反映

  NEWS「未来へ」*2

・11月24日リリース→12月1日公開(12月6日付)に反映

  Hey! Say! JUMP「Sing-along」

(※ INI、BE:FIRSTおよびなにわ男子についての情報は、昨日のブログエントリーでも紹介しています。下記リンク先をご参照ください。)

「明け星」については初週フィジカルリリースが反映される11月24日公開(11月29日付)ビルボードジャパンソングスチャートでの首位獲得は難しいかもしれませんが、しかし可能性は十分あると言えるでしょう。フィジカルセールス指標の加算初週に他指標も高位置に登場する可能性が考えられるためです。

 

ひとつはミュージックビデオの公開。現段階で「明け星」の公開日は未定ですが、フィジカルリリース週に解禁すれば初週の再生回数がフィジカルセールス指標初週分に加算されます。11月15日月曜が解禁日ならば、1週間フルで再生回数がカウントされることになるのです。通算8週首位を獲得した「炎」(2020)ではフィジカルセールスのフラゲ日に解禁、さらにその前日には焚き火映像を用意し再生回数増加につなげています。

(なお「炎」ではダウンロードおよびストリーミングもフィジカルリリース週の月曜に解禁しています。)

 

もうひとつはレンタルの解禁。現段階で「明け星」は11月20日土曜のレンタル解禁が予定されており、レンタルに伴うルックアップ*3はフィジカルセールス指標初週分に加算されることになります。なおレンタル業界では今年に入り、レンタル解禁日を土曜のみとしています。

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(上記はTSUTAYAのサイトより。以下同じ。)

LiSAさんは「炎」においてレンタル解禁日をアルバム同様の17日後に設定していました。また直近のシングル「HADASHi NO STEP」でも同様のレンタル解禁日設定を採っています。

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ともすれば「明け星」の解禁日が今後変わるかもしれませんが、レンタルによるルックアップ指標の加算はフィジカルセールス指標の補完として大きな味方となります。

 

一方で「明け星」と同日リリースのNEWS「未来へ」はミュージックビデオが解禁済であり、リリース週には再生回数が増加する可能性もあります。他方、レンタル解禁日は初回盤A、Bおよび通常盤のすべてで17日後に設定されています。

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(上記は初回盤Aのレンタル解禁日。ジャケットは初回盤Bとなっていますが、その初回盤Bおよび通常盤についても同様に17日後のレンタル解禁であることを、TSUTAYA DISCASにて確認しています。)

NEWのデジタル解禁が現状では考えにくいこと、またフィジカルリリース週にデジタル指標群も上昇するというチャート傾向を踏まえれば、LiSA 「明け星」はNEWS「未来へ」と好勝負を展開するのではないかと捉えています。そのためには、LiSAさんサイドがチャートへの思いを伝え、ファンが自発的に応援したくなるよう意識付けを行うことも必要だと思うのですが、それが十分行われていないように感じる自分がいます。

LiSA さんのTwitterアカウント(@LiSA_OLiVE)ではビルボードジャパンのアニメーションソングスチャートおよびダウンロードソングスチャートでの「明け星」首位獲得を、ビルボードジャパンによるツイートをリツイートする形で紹介していますが、総合チャートでの首位獲得についてはリツイートされていません。そして公式のスタッフアカウント(@LiSA_STAFF)ではビルボードジャパンの記録自体に一切触れていないのです。

オリコンだけを紹介する、もしくはビルボードジャパンの記録に触れないLiSAさんサイドの姿勢は「炎」の時にもみられたと記憶しています。

ビルボードジャパン側が歌手に記録達成時の紹介を働きかけるのは違うのかもしれませんが、認知度と信頼度が上昇し社会的ヒット曲の鑑となったと断言していいビルボードジャパンソングスチャートをスルーする歌手側の傾向には、はっきり違和感を覚えます。仮にレンタル解禁日設定がビルボードジャパンソングスチャートでの首位獲得を狙う戦略として用意したのだとしたならば、尚の事違和感を覚えずにはいられません。

 

その違和感には異を唱えたい一方でやはり「明け星」の動向は興味深く、注目すべきというのがチャート分析者としての考えです。

*1:第3四半期のフィジカルセールス指標ウエイト減少というチャートポリシー変更については、【ビルボード最新動向】フィジカルセールス指標のウェイト減少でますます社会的ヒットの鑑に(6月3日付)およびビルボードジャパンのチャート変革の理由が公開…支持の表明や声を上げることの必要性を記す(6月6日付)をご参照ください。

*2:「未来へ」は「ReBorn」とのダブルAサイドとなりますが、フィジカルセールスおよびルックアップのフィジカル関連指標は1曲のみに反映されるため、「未来へ」に加算されるものと思われます。

*3:ルックアップとはパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数であり、実際の購入者数であるユニークユーザー数、およびレンタル数が推測可能です。