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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SEVENTEENのレンタル解禁遅らせ措置への疑問…レンタルの重要性をYOASOBIから学ぶ

今日発表される4月28日公開(5月3日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは、SEVENTEEN「ひとりじゃない」が首位に登場する見込みです。

初加算となるフィジカルセールスが37万を超え、同指標が大きく加算されます。この動きは前シングル「舞い落ちる花びら (Fallin' Flower)」でも同様でした。下記は同曲が首位を獲得した昨年4月8日発表(4月13日付)総合ソングスチャートの記事。

実は同日付チャートを取り上げた際、ひとつ引っ掛かることがありました。

シングルCDセールスと順位が乖離しているルックアップについては、1位が乃木坂46「しあわせの保護色」(当週のシングルCDセールスは52637枚)、そして2位がOfficial髭男dism「I LOVE...」(同3656枚)。SEVENTEEN「舞い落ちる花びら (Fallin' Flower)」はシングルCDを425873枚売り上げながら、その100分の1未満のセールスだった「I LOVE...」にルックアップで敗れているということは、次回に向けて省みる必要があると考えます。

ルックアップはパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベース(Gracenote)にアクセスされる数を示します。この数値からは、CD購入枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)、またレンタル数が推測されるのですが、自分はこの時分かっていなかったことを一年以上経った昨日、はじめて知ることになりました。

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こちらはTSUTAYAによる「舞い落ちる花びら (Fallin' Flower)」の販売およびレンタル情報(こちらで確認できます)。これをみるとレンタルが1年遅れとなっており、なるほど発売当時はレンタルに伴うルックアップ加算がなかったのだということが解ります。それでも販売枚数に対してはルックアップがかなり低いという印象は拭えないのですが。

 

SEVENTEENについてはK-Popであり洋楽である…この理論を用いれば1年遅らせてのレンタル解禁というのは理解できなくはありません。しかしK-PopではBTSやTWICE等が日本向けシングルをリリースしてもレンタルは邦楽のスケジュールに準じています。さらに先週末には同じユニバーサルミュージック発となるテイラー・スウィフト『Evermore』が国内盤リリースからわずか3ヶ月でレンタル解禁に至る(→こちら)等、洋楽のレンタル解禁は1年未満が通常となってきています。SEVENTEENはインディであると下記記事では紹介されており、インディ(ディストリビューションはメジャーレーベル)ならば解禁遅らせは理解できなくないとして、しかし独自と言える措置に違和感を覚える自分がいます。

 

 

レンタルの重要性については、YOASOBI『THE BOOK』の動向が示しています。

『THE BOOK』のチャート推移(CHART insight)についてはレンタル解禁直後の動向が反映された1月27日公開(2月1日付)について紹介したことがあります(→こちら)。その後どうなっているかを見てみると。

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初登場から15週連続でアルバムチャートトップ10内をキープする『THE BOOK』。フィジカルが限定リリース(再発盤も同様)のためフィジカルセールス指標(黄色の折れ線で表示)がダウンしていますが、ルックアップは高値安定を続けているのです。オレンジで表示されるルックアップのみ抽出すると、レンタル分が初加算された登場3週目以降はルックアップ2位以内をキープしているのですから驚異的です。

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『THE BOOK』はフィジカルが限定盤ゆえレンタルニーズが高まったと言われればそれまでですが、『NHK紅白歌合戦』出場以降さらに積極的にメディア露出を続けるYOASOBIが、フィジカルで音楽を楽しみたい、レンタルする人も大事にするという姿勢を下記ツイートで示していると捉えています(と言いつつ、Twitter担当者にはその意図がなかったかもしれませんが)。

レンタル解禁したので借りてほしいと訴求する歌手をほぼ目にしたことがありません。レンタルよりも購入を願う歌手が圧倒的に多いと思っていたのですが、いかなる形でもまずは聴いてほしいというYOASOBI側の意思が感じられますし、フィジカル派の方も取りこぼさないという思いの表れと受け止めています。

様々な聴き方(触れ方)を推奨するYOASOBIが今年に入って知名度を上げていったことを踏まえれば、(『THE BOOK』における)レンタルが如何に重要かが十分解るはずです。

 

 

そう考えると、SEVENTEENの戦略はどうでしょう。レンタル自体の市場が縮小しているかもしれませんが、そもそも解禁されなければレンタルしに来た方に曲が気付かれることはありません。また1年経っての解禁では、リバイバルヒットしていない限り積極的に導入しようとする店舗も少ないでしょう。そういう意味では遅らせ解禁は機会損失ではないかと思いますし、ユニークユーザー数の多くなさを想像するにセルにこだわった戦略(と受け止められます)では購入者がいずれ息切れしかねないのではと危惧しています。Twiterで”SEVENTEEN レンタル”で検索してみて、語っている人がかなり少ない(話題性が高いと言えない)ことも気掛かりです(検索結果はこちら)。「ひとりじゃない」についてもレンタル解禁日程が掲載されておらず(TSUTAYAの情報はこちら)、同種の措置を採るだろうことが予想されます。

尤も、SEVENTEENの韓国での所属レコード会社や芸能事務所の意向ならば解禁遅らせ措置はやむを得ないのかもしれませんが、YOASOBIを例に日本側が説得することは必要だろうと思うのです。