最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。
1月10~16日を集計期間とする1月19日公開(1月24日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。フィジカル関連指標初加算に伴いAimer「残響散歌」が3週ぶり、通算3週目となる首位を獲得しました。
【ビルボード】Aimer「残響散歌」総合ソング首位奪還でV3達成 https://t.co/q55Na3anCJ pic.twitter.com/khdC4DH8Ix
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2022年1月19日
フィジカルセールスは4万5千枚強を獲得し同指標2位となった一方、ルックアップ*1は1位となり、15日土曜に解禁されたレンタルも好調であるものと推測されます。
また、フィジカルシングルのダブルAサイドとなった「朝が来る」が総合6位に初登場。「残響散歌」がオープニングテーマに用いられたテレビアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』(フジテレビ)のエンディングテーマとして、集計期間初日0時にデジタル先行解禁されています。
ダブルやトリプル等複数曲がAサイドとなったシングルの場合はフィジカル関連指標が1曲のみに加算されるため、「朝が来る」はフィジカル関連の2指標が未加算。ですが、解禁タイミングをフィジカルリリース週に合わせることで巧く訴求できたと言えるでしょう。既に「残響散歌」をダウンロードした方が「朝が来る」を購入する、もしくはフィジカルを購入しようと動いた方も多いはずです。
なお「残響散歌」はダウンロード数が前週比131.5%を記録しており、フィジカルリリースがデジタルも含めて歌手の作品全体を訴求したと言えるでしょう。Aimerさんはアーティストチャートにおいて13→5位と躍進しています(最新1月19日公開分(1月24日付)Artist 100はこちら)。
ダブルAサイドシングルでフィジカル関連指標未加算の曲が躍進するのは、King Gnuも同様。しかも最新ソングスチャートにおいては、フィジカル関連指標加算3週目となった「一途」を、フィジカル関連指標未加算の「逆夢」が逆転しています。共に『劇場版 呪術廻戦 0』タイアップ曲であり、前者は主題歌、後者はエンディングテーマに起用されています。
「一途」および「逆夢」のチャート動向はこちら。
「逆夢」は最新ソングスチャートにおいてストリーミング再生回数が初の1千万回を突破しました。集計期間初日が祝日のため再生回数が増える傾向にあったとも言えますが、「一途」のストリーミング再生回数が前週割れとなったことを踏まえれば「逆夢」の楽曲人気の高さがよく解ります。そして動画再生指標においても「逆夢」が「一途」を逆転しています。
King Gnuの「一途」「逆夢」も前週から順位が逆転。ダウンロードの微減傾向はほぼ同じだが、ストリーミングでは「逆夢」が前週8,903,814再生から当週10,032,427再生で同指標1位、「一途」は前週9,883,459再生から当週9,625,285再生で2位を記録した。動画再生では、「逆夢」が前週1,996,369再生から当週2,441,505再生で1位を記録しており、「一途」は前週2,019,629再生から当週1,866,516再生で2位に。このポイント差が響き、僅差で総合順位の逆転が起きている。
動画再生には"歌ってみた"や"踊ってみた"等に代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)は含まれませんが、そのUGCの再生回数に基づくTop User Generated Songsチャートでは最新1月19日公開分において「逆夢」が10位、「一途」が11位という結果に(チャートはこちら)。共に前週から後退していますが、こちらでも「逆夢」のより高い人気が示された格好です。
この「逆夢」は『劇場版 呪術廻戦 0』の劇場公開日である昨年12月24日に解禁され、同日の『ミュージックステーション ウルトラSUPER LIVE 2021』(テレビ朝日)で初披露されています。12月24日における「逆夢」の畳み掛けるかの如きスケジュールも浸透度の上昇に貢献したと言え、同曲はフィジカル関連指標が「一途」に加算されて以降もポイントを伸ばし続けるという稀有な動きをみせています。
レコード会社の動向や意向を踏まえれば、今後フィジカルでのシングルリリースは減り、タイアップがあることでフィジカルを出せる(それもアニメならば尚の事)という状況となるでしょう。その際、ダブルAサイドという形態を採る歌手は増えるかもしれません。
Aimerさん、そしてKing Gnuにおいては共に人気コンテンツのタイアップということも大きく影響しつつ、特にダブルAサイドながらフィジカル関連指標が加算されない曲をどのタイミングでデジタル解禁するか、そしてテレビパフォーマンスの機会があるならばそれを最大限に活かすことについても長けています。無論楽曲の強度も重要ですが、この戦略は見事としか言いようがありません。
*1:ルックアップとはパソコン等にCDをインポートした際、インターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を指し、売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)やレンタル枚数の推測を可能とします。