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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンアルバムチャート、フィジカルとデジタルでウエイトが異なることを『BADモード』で再確認する

宇多田ヒカルさんのニューアルバム『BADモード』については、先週このブログで販売手法を採り上げました。

1月19日水曜にデジタル先行でリリースされた『BADモード』は、最新1月26日公開分(1月31日付)のビルボードジャパンアルバムチャートで2位に初登場。このチャートでは、木村拓哉Next Destination』が首位の座に就いています。

 

さて、今回のアルバムチャートは面白いことになっています。

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ビルボードジャパンのアルバムチャートはフィジカルセールス、ダウンロードおよびルックアップで構成。ルックアップとはCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を示し、実際のユニークユーザー数やレンタル数が推測可能ですが、アルバムのレンタルは基本的にリリースの17日後に解禁されるため、登場2週目までの作品はレンタルによるルックアップが加算されません。

 

最新のビルボードジャパンアルバムチャートでトップ10入りした作品のうち、宇多田ヒカル『BADモード』のみフィジカル関連2指標が未加算。フィジカル後発もしくは未リリースの作品は不利と言える状況ですが、『BADモード』は1万DLを超える売上を記録しています。

一方で、総合4位に初登場を果たしたのはゲーム『A3!』使用楽曲集となる『A3! FULL BLOOMING LP』。この作品の初週フィジカルセールスは17591枚でした(下記リンク先参照)。

『A3! FULL BLOOMING LP』はダウンロード100位未満(300位圏内)、ルックアップ41位となり、わずかながらこれらの指標も加算されているのですが総合では4位に。一方で宇多田ヒカル『BADモード』が2位という結果となりました。つまり、ダウンロード指標における1DLとフィジカルセールス指標における1枚とでは、前者のウエイトが倍とまではいかなくともそれに近い水準となることが、ここから判るのです。

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実際、ダウンロード(1DL)とフィジカルセールス(1枚)とでウエイトが異なることについては、以前にも紹介したことがあります。その際、ウエイト差を設けた理由についてこのように推測しました。

アルバムでも複数種販売が一般化し、シングルほどではないにせよユニークユーザー(実際の購入者)数が売上枚数と乖離することは珍しくありません。他方ダウンロードは基本1種類であり、ダウンロードサイト毎に買うという熱烈なファンの方がいらっしゃると仮定しても、売上枚数とユニークユーザー数の乖離はほぼないものと思われます。この実情を踏まえて、ウェイトの差を設けたのではないかと結論付けたのですが、いかがでしょう。

最新のビルボードジャパンアルバムチャートにおいてルックアップ指標を制したのは登場2週目の優里『壱』(総合3位)。同作品のフィジカルセールスは3位であり、またレンタルに伴うルックアップは次週以降加算されます。またルックアップ2位のYOASOBI『THE BOOK 2』(総合7位)はフィジカルセールス17位という状況であり、この作品においてはレンタル人気がルックアップの上位安定に寄与していると考えられます。

一方で木村拓哉Next Destination』はフィジカルセールス1位ながらルックアップは3位に。レンタル解禁が後日となることもさることながら、リリースされた3種のCD収録曲はいずれも同じであり(木村拓哉 | ディスコグラフィー | ビクターエンタテインメント参照)。これが売上枚数に対するルックアップの高くなさにも表れていると言えるでしょう。このような販売手法がウエイト差の設定につながったものと考えられます。

(とはいえ、複数種リリースは宇多田ヒカル『BADモード』のフィジカルにおいても同様です。詳細はHikaru Utada Official Website | BADモード 2022.01.19 on saleをご確認ください。)

 

 

個人的にはビルボードジャパンによるウエイト差設定を支持しています。そして近い将来、米ビルボードアルバムチャートに倣いストリーミング等をチャートへ反映させることを検討するよう願います。このチャートポリシー変更提案は前週記載しています。