イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 今年度最大のフィジカルセールス、Snow Man『Snow Mania S1』の勢いがソングスチャートに波及していない理由とは

(※追記(11時00分):いただいたご指摘を反映し、その上で私見を記載しました。)

 

 

 

最新10月6日公開(10月11日付)ビルボードジャパンアルバムチャートはSnow Man『Snow Mania S1』が初登場で制しました。

初週フィジカルセールスは844729枚。これはBTSBTS, THE BEST』が6月23日公開(6月28日付)で記録した807056枚を上回ります*1

f:id:face_urbansoul:20211008052239p:plain

一方で、『BTS, THE BEST』が初週7447DLを獲得したダウンロード指標は、『Snow Mania S1』においてはデジタル未解禁のため加点されていません*2。そのデジタル未解禁の状況が、アルバム収録曲のソングスチャートへの波及にほぼ至れなかった要因と捉えています。

f:id:face_urbansoul:20211008053130j:plain

最新10月6日公開(10月11日付)ビルボードジャパンソングスチャート(→こちら)で100位以内にランクインした『Snow Mania S1』収録曲は、リード曲の「EVOLUTION」(41位)のみ。これは昨年にSnow Manと同時デビューを果たし、今年1月にファーストアルバム『1ST』をリリースしたSixTONESが1月13日公開(1月18日付)ビルボードジャパンソングスチャート(→こちら)に同作品から5曲を送り込んだのとは大きく異なるのです。

f:id:face_urbansoul:20211008053500j:plain

f:id:face_urbansoul:20211008053645j:plain

f:id:face_urbansoul:20211008053720j:plain

f:id:face_urbansoul:20211008053754j:plain

『Snow Mania S1』収録の先行シングル4曲のCHART insightをみると、総合順位(黒の折れ線で表示)はいずれも100位未満(300位圏内)のままになっています。そして「Grandeur」および「HELLO HELLO」では、動画再生指標(赤)がアルバム初登場週にも関わらずダウン。この傾向は「EVOLUTION」や、この1ヶ月間にYouTubeで公開された初回盤B収録のメンバー3名によるユニット曲にも当てはまります。

f:id:face_urbansoul:20211008054223j:plain

f:id:face_urbansoul:20211008054246j:plain

f:id:face_urbansoul:20211008054311j:plain

動画再生指標の上位進出はコアなファンによる再生が主体であり、そのコアなファンがフィジカルリリースのタイミングでフィジカルに同梱される映像盤に視聴先を移行することでフィジカルセールス初加算週の動画再生が解禁時より減るという一連の流れは、ジャニーズ事務所所属歌手の作品にみられがちな傾向とはいえます。しかしながらライト層の聴取も間違いなく存在するはずです。

仮にデジタルを解禁していれば、これまでYouTubeをオーディオとして聴いていた主にライト層がサブスクに聴取先を遷移することで、サブスクの再生回数に基づくストリーミング指標が大きく上昇できたのではないでしょうか。実際、SixTONES『1ST』と同日発売となったYOASOBI『THE BOOK』収録曲のストリーミング上昇が顕著と言えます。下記ブログエントリーに2作品の収録曲のソングスチャート動向を記しています。

f:id:face_urbansoul:20210114062330j:plain

f:id:face_urbansoul:20210114060329j:plain

(※上記ブログエントリーより表を抜粋しました。当時において、日付は公開日ベースではありません。また各指標における[CD]について、フィジカルセールスではなくシングルCDセールスと記載しています。)

 

デジタルを解禁したならばストリーミング指標が上昇できたのではという仮定に現実味を与えるのが、先行シングル4曲における最新チャートでのフィジカルセールスおよびルックアップ指標。共に上昇しており、その上昇幅はルックアップのほうがより大きくなっています。

ルックアップとはパソコン等にCDをインポートする際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数を示し、CD購入者の取込という所有行動およびレンタルという接触行動双方の側面が表れます。最新チャートの動向からはアルバムリリース時に同作品未収録のカップリング曲を押さえるという目的が推測され、デジタルが解禁されていればそれらの曲も上昇したのではないかと想像できるのです。

 

 

Snow Manは『Snow Mania S1』に収録された「Sugar」のリリックビデオを今週YouTubeにアップしました。フルサイズでの公開もここ最近のジャニーズ事務所(所属歌手)の姿勢と言えるのですが、アルバムリリース後の動画展開はロングヒットを意識した戦略であると考えます。

アルバムリリース後もYouTubeにて展開を行ったことの成果はSixTONES『1ST』からも見て取れます。下記ブログエントリーにその成果等を記していますが、しかしながらさらなる好成績につなげるためには、やはりデジタル解禁が欠かせないというのが私見です。

メディアに触発されたユーザーの行動がフィジカルよりダウンロードに、そして今後は接触指標に移行するだろう点においても、デジタルに明るくない作品や歌手はチャート上で成果を上げることがより難しくなるかもしれません。

 

 

アルバムのフィジカルセールスが好調な一方でソングスチャートへの波及があまりみられなかった『Snow Mania S1』からは、その人気がコアなファンの域を超えていないのではという好ましくない想像も抱いてしまいかねません。収録曲の攻めの姿勢を踏まえれば尚の事、勿体ないというのが厳しくも自分の見方です。

アルバムチャートにおいては、今後は米ビルボードのような単曲ダウンロードおよびストリーミング再生回数を加味したものが登場するかもしれません。この点については今月のビルボードコラム(月曜掲載)で記す予定ですが、仮にその形でのチャートが採用されたならば、デジタル未解禁の作品はさらに不利になるものと思われます。

 

 

※追記(11時00分)

Twitterにて、以下のご指摘をいただきました。

(ご指摘くださった紅蓮・疾風さんに、この場を借りて感謝申し上げます。勝手ながら取り上げさせていただいたこと、ご了承ください。)

ビルボードジャパンは第4四半期に入りラジオ、ルックアップおよびTwitter指標のウエイトを変更するチャートポリシー変更を行っており、その内容は明示されていないものの、少なくともルックアップおよびTwitterはそのウエイトを引き下げたものと推測されます。

これを踏まえれば、最新10月6日公開(10月11日付)ビルボードジャパンソングスチャートでSnow Man「HELLO HELLO」がルックアップ指標を制しながら(最新チャートにおいて同指標は5→1位と推移)、総合ソングスチャートで100位以内に入らなかった理由はこのチャートポリシー変更に因る可能性が大きいものと言えそうです。

 

仮に第4四半期にビルボードジャパンがチャートポリシー変更に着手していなかったならば、Snow Manがソングスチャート100位以内に複数曲ランクインしたこともあり得たでしょう。それでも、デジタルを解禁していれば尚の事伸びただろうことは容易に推測可能というのが私見です。

*1:【ビルボード】BTS『BTS, THE BEST』が総合アルバム首位 全3指標で1位を記録 | Daily News | Billboard JAPAN(6月23日付)参照。

*2:CHART insightのチャート構成比をみると、黄色で示されたフィジカルセールスが多く、次いでオレンジのルックアップとなっていますが、紫で表示されるダウンロードは加点されていないことが解ります。