イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

米で連覇達成…テイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」の"期間限定リリース"施策をどう捉えるか

最新11月8日付米ビルボードソングチャートはテイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」が首位をキープ。この件については本日付エントリーにて紹介しています。

今回の首位獲得においてはテイラー側の施策が大きく反映されたと捉えています。

 

実は当初、11月8日付米ビルボードソングチャートではHUNTR/X(ハントリックス)(イジェ、オードリー・ヌナ & レイ・アミ)「Golden」が首位に返り咲く可能性が指摘されていました。これは米ビルボードソングチャートを予想するXアカウントのTalk of the Chartsが初期予想にて発信したものです。

初期予想ではHUNTR/X「Golden」とテイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」が僅差となっていましたが、中間および最終予想で後者が逆転し、且つ小さくない差がついたという形です。

 

テイラー・スウィフト「The Fate Of Ophelia」の上昇には、リミックスの投入が影響しています。

Helping the song’s continued Hot 100 command, Swift released its “Alone in My Tower Acoustic Version” for digital purchase Oct. 28, just after 4:30 p.m. ET, ahead of the tracking week’s close at the end of Oct. 30. 

(「The Fate Of Ophelia」の首位キープの背景には、同曲における”Alone In My Tower Acoustic Version"のデジタルダウンロード解禁が挙げられます。このバージョンは東部標準時における10月28日火曜16時30分から10月30日23時59分(当週の集計期間最終時)までの限定でリリースされています。)

 

・英文はTaylor Swift’s ‘The Fate of Ophelia’ No. 1 on Hot 100 for Fourth Week - Billboard(現地時間の11月3日付)、意訳版は【海外ビルボード】米ソングチャートはテイラー・スウィフトが4連覇、ケラーニがキャリア初のトップ10入り(11月4日付)より

実際、XアカウントのTalk of the Chartsではリミックス版のダウンロードが大きく伸びたことを紹介し、「The Fate Of Ophelia」が11月8日付で首位をキープする可能性が高まったとしています。

結果的に「The Fate Of Ophelia」では米ビルボードソングチャートにてダウンロード指標が6,000→22,000に上昇、前週比236%アップを果たしています。これが総合首位キープの最大要因と捉えていいでしょう。

 

 

さて、注視したいのはこのリミックス版("Alone In My Tower Acoustic Version")が期間限定でリリースされていたということ。この手法が音源をデジタルで所有したい、音楽チャートでより好い位置に就かせたいと願うコアファンの行動を促したといえるでしょう。Talk of the Chartsのようなチャート予想者がテイラー側にも存在しチャート施策に至ったものと捉えていますが、この見方は以前から抱き続けているものです。

最新ソングチャートではテイラー・スウィフト『The Life Of A Showgirl』の4連覇達成が紹介され、初登場時に歴代最多ユニット数を獲得したことがあらためて紹介されていますが、アルバムは初登場週に38種が登場し、デジタルアルバムは11種中9種が初登場週の集計期間初日以降にリリースされています(上記エントリー参照)。テイラーが週間最多ユニット数の獲得等を意識して投入したと捉えられておかしくないでしょう。

また上記エントリーでも述べたように、アルバム『The Life Of A Showgirl』はリリース初週に単曲ダウンロードを行わず、2週目は「The Fate Of Ophelia」のみ購入可能に。初週にアルバムでの購入を促し(ボーナストラックが追加収録されたとしてもアルバム購入に動いたコアファンは多いでしょう)、2週目はリード曲のダウン幅を抑えるとするチャート施策の意味合いがあったと考えるのは自然なことです。

 

このような指摘をすると、テイラー・スウィフトのコアファンから"テイラーを悪しく思っているのでは"と批判されかねませんが、テイラー・スウィフトの施策徹底は以前からみられることです。たとえば当週のチャート記事にてテイラーにおける最長首位獲得曲と紹介された「Anti-Hero」は、3週目の首位獲得を果たした2022年11月19日付においてダウンロード指標が17,000→327,000と急増しています。

こちらにおいてもリミックスの期間限定解禁という措置が採られ、また安価販売も功を奏しています。同週はドレイクと21サヴェージによるコラボアルバムの初登場に伴いソングチャートでも収録曲の大挙エントリーが見込まれており(実際トップ10のうち2~9位を占拠)、彼らのソングチャート首位獲得を阻止するという目的があったと考えるのは自然なことでしょう。

その旨等を上記エントリーで記した上で、米ビルボードへチャートポリシー(集計方法)変更を提案していますが、米ビルボードはその半年後、ダウンロード指標のカウントを厳しくするチャートポリシー変更を公式アナウンスを行わずに実行しています。JIMIN「Like Crazy」首位獲得の翌週に実施され同曲が急落したことでK-POPファンから非難されましたが、テイラー・スウィフトの施策も意識しての変更と考えます。

(なお非難に関しては、米ビルボードがチャートポリシー変更の実施を述べなかったことも声を大きくした要因と考えます。というよりも、チャートポリシー変更についてはきちんと発信すべきでしょう。)

 

過去の事例も踏まえれば、テイラー・スウィフトがチャートを意識し、最新作においても施策を徹底していることは明らかでしょう。

その一方で、最新11月8日付の米ビルボードソングチャートではケラーニ「Folded」がキャリア初のトップ10入りを果たし、同曲においてもリミックス施策が影響したことが記事にて紹介されています。しかしながらそのリミックスについては購入対象期間を限定したとの発信はありません。

 

自分の考えは上記の通りです。これはテイラー・スウィフトのみならず、日本の歌手におけるデジタル未解禁やデジタル後発という姿勢にも当てはまります。また過度な負担についてはフィジカルにおけるランダム封入特典や、LINE MUSIC再生キャンペーン等を念頭に置いています。そして過度な施策がチャートポリシーを動かすことになりかねないとも考えるに、やはり施策は受け手の負担なく、開かれたものであるべきでしょう。