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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

モーガン・ウォーレン『I'm The Problem』収録曲が米ソングチャートを大きく変える可能性について

(今回のエントリーで採り上げるモーガン・ウォーレンについて、以前このブログでは”モーガン・ウォレン”と表記していました。よって過去のエントリーや記録を採り上げる際、以前の表記のままになっていることをご了承ください。)

 

 

 

ビルボードソングチャートを予想するXアカウント、Talk of the Chartsによるポストに注目です。

画像は2024年5月18日付と2025年5月17日付の米ビルボードソングチャートトップ10のポイントを比較したもの。後者は予想であり(実際は日本時間の明日発表)、また米ビルボード側はポイントを明らかにしていないためあくまでTalk of the Charts側の推測ではあるのですが、しかしこのデータからは最新チャートにおける1位のポイントが1年前の10位にも及んでいないことが解ります。

 

この傾向は、米ビルボードソングチャートおよびその記事から作成した週間首位獲得曲一覧表、および各週における構成指標制覇曲の数値からもみえてきます。

日本時間の明日発表される5月17日付米ビルボードソングチャートではケンドリック・ラマー & シザ「Luther」の首位キープが予想されていますが、同曲のストリーミングは2千万を下回るかもしれません。一方で昨年5月18日付で首位初登場を果たした、同じくケンドリック・ラマーによる「Not Like Us」はストリーミング7千万超、ダウンロード15,000を記録。初登場ゆえラジオは低いものの、ストリーミングが圧倒しています。

 

ビルボードソングチャートで特に影響を及ぼす2指標をみてみると、ストリーミングでは首位曲の2500万未満という状況は2024年度が6週だったのに対し2025年度は既に9週発生、またラジオにおいては2025年度に入り首位曲の7千万未満という状況が大半となっています。

米では上位曲のストリーミング再生回数が下がっている、またサブスクサービス会員の上昇度が鈍化しているといわれていますが、一方でラジオにおいても上位曲の再生回数が下がっています。共に下位曲の数値が上昇し裾野が広がっているということならばまだ好いのですが、この状況は気掛かりです。

 

 

そして現在のポイント状況から、近いうちにチャートが大きく刷新される可能性が考えられます。

 

モーガン・ウォーレンによるニューアルバム『I'm The Problem』が今週金曜にリリースされます。既に10曲近くを先行リリースしているこのアルバムには37曲が収録。前2作(『Dangerous: The Double Album』『One Thing At A Time』)は順に2021年度、2023年度の年間アルバムチャートを制し、且つ共に30曲以上を収録していることから、今作も大ヒットするかもしれません。

ビルボードアルバムチャートではストリーミングのアルバム換算分(SEA)が構成指標のひとつを担っていますが、このSEAが大きいとアルバムチャートのユニット数の大きさにつながるのみならず、アルバムチャート初登場時にソングチャートでも収録曲が大挙エントリーする傾向に。前作『One Thing At A Time』は2023年3月18日付にて先行曲の上昇や再登場も含め、36曲すべてが100位以内にエントリーを果たしています。

Here’s a recap of Wallen’s historic haul of 36 entries on the latest Hot 100. All are debuts except where noted:

 

No. 1, “Last Night” (5-1, first week at No. 1)

No. 7, “Thought You Should Know” (13-7, first week in top 10)

No. 8, “You Proof” (21-8, after reaching No. 5 in October)

No. 9, “Thinkin’ Bout Me”

No. 10, “One Thing at a Time” (51-10, first week in top 10)

No. 11, “Ain’t That Some”

No. 14, “Everything I Love” (93-14, new high)

No. 15, “Man Made a Bar” (feat. Eric Church)

No. 18, “I Wrote the Book” (64-18, new high)

No. 27, “’98 Braves

No. 29, “Devil Don’t Know”

No. 30, “Sunrise”

No. 32, “Born With a Beer in My Hand”

No. 35, “Whiskey Friends”

No. 38, “Tennessee Numbers”

No. 40, “Cowgirls” (feat. ERNEST)

No. 41, “Hope That’s True”

No. 43, “Dying Man”

No. 44, “Keith Whitley”

No. 47, “In the Bible” (feat. HARDY)

No. 48, “Neon Star (Country Boy Lullaby)”

No. 51, “Me + All Your Reasons”

No. 52, “I Deserve a Drink”

No. 53, “F150-50”

No. 54, “Tennessee Fan” (re-entry, after reaching No. 49 in December)

No. 56, “Single Than She Was”

No. 59, “Wine Into Water”

No. 61, “Days That End in Why” (re-entry, after reaching No. 57 in December)

No. 63, “180 (Lifestyle)”

No. 65, “Last Drive Down Main”

No. 69, “Good Girl Gone Missin’ ”

No. 71, “Me to Me”

No. 72, “Money On Me”

No. 75, “Had It”

No. 76, “Outlook

No. 77, “Don’t Think Jesus” (re-entry, after debuting at its No. 7 high last April)

(モーガン・ウォーレン『One Thing At A Time』初登場時における米ビルボードソングチャートでの記録については、【海外ビルボード】モーガン・ウォレン「Last Night」が米初制覇、100位以内に36曲が登場(2023年3月14日付)をご参照ください。)

直近では1年前、テイラー・スウィフト『The Tortured Poets Department』収録曲が14位まで独占するという記録が生まれています(【海外ビルボード】テイラー・スウィフト、史上二度目の米ビルボードトップ10独占達成(2024年4月30日付)参照)。そして直近のチャート上位曲におけるポイントを踏まえれば、モーガン・ウォーレン『I'm The Problem』収録曲のソングチャート席巻もあり得るかもしれません。

 

そうなると気になるのが、リカレントルールに抵触する曲が大挙登場するかもしれないということです。リカレントルールは一定週数以上ランクインしている曲が一定順位を下回った際にチャートから外れるというもので、21週以上在籍の場合は50位未満、53週以上の場合は25位未満に後退した際適用されます。

モーガン・ウォーレン『I'm The Problem』収録曲が上位に大挙上昇ないし初登場するならば、例えばあと2週でソングチャート100位以内エントリーが歴代トップタイとなるテディ・スウィムズ「Lose Control」がリカレントルールに抵触し、歴代トップタイを記録したところで記録が途絶える可能性も考えられます。

加えて、アルバム収録曲がソングチャートに大挙エントリーしても、その勢いは基本的には続きません。大量のリカレントが発生し、その翌週にアルバム収録曲が大挙後退すれば、残った曲におけるソングチャート上位曲のポイントはより低くなることも予想されます。

 

 

日本時間の5月最終週に発表される6月1日付米ビルボードアルバムチャートやソングチャートでの初登場が見込まれる、モーガン・ウォーレン『I'm The Problem』および収録曲の動向に注目です。またリカレントルール抵触を防ぐべく、『I'm The Problem』リリース週に新バージョンを投入する等施策を実施する歌手も出てくるかもしれません。その動きも注視する必要があると考えます。