イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

前週のトップ10初登場曲が真のヒット曲に成るか、CHART insightから読む (2025年3月12日公開分)

昨年夏以降再開したこのエントリー、今年に入ってからタイトルを一部変更しています。前週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする、年間チャートで上位に進出する作品と考えます。週間単位で上位に入るのは好いことですが、他方で所有指標が極度に強い曲は加算2週目に、また接触指標が所有指標的な動きをなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が大きく後退し、総合でも急落することが少なくありません。

この急落は毎週のようにみられます。ソングチャートのトップ10は多いときで5曲程度が毎週入れ替わり、ロングヒットするか否かが極端に分かれる状況です。主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標がロングヒット曲では強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートの順位およびポイントのみで判断することは、現状では難しい状況です。

そのため、このブログエントリーではビルボードジャパンに対しチャートポリシー(集計方法)の改善も提案していますが、あくまで自分なりのと前置きしつつもチャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー再開の理由です。

 

 

<2025年3月12日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

・なにわ男子「Doki it」

 3月5日公開分 1位→3月12日公開分 73位

=LOVE「とくべチュ、して」

 3月5日公開分 4位→3月12日公開分 84位

・timelesz「Rock this Party」

 3月5日公開分 5位→3月12日公開分 9位

・Juice=Juice「初恋の亡霊」

 3月5日公開分 7位→3月12日公開分 100位未満

・ICEx「理想郷」

 3月5日公開分 9位→3月12日公開分 100位未満

 

当週におけるストリーミング等動向表はこちら。

 

なお、フィジカルセールス指標の上昇に伴い前週8位に再登場したSEVENTEEN「消費期限」は、当週5位につけています。

 

 

前週はトップ10が6曲入れ替わっていますが、その6曲を含むトップ10全曲の動向については前週のブログエントリーにて紹介し、当週の予測も行っています。

前週初めてトップ10入りした5曲(再登場したSEVENTEEN「消費期限」を除く)のうち、フィジカルセールス指標初加算を要因とする4曲は大きく後退。なにわ男子「Doki it」および=LOVE「とくべチュ、して」は総合100位以内にとどまるも接触指標群が強くはなく、後者はストリーミング100位未満ながら加点されるも動画再生は未加算のまま、そして前者は動画再生が100位以内ながらストリーミング未加算が続いています。

上記はアイドルやダンスボーカルグループのヒットの8段階をまとめた表ですが、このジャンルにおいては施策に伴って複数週ランクインしても第3段階以降に到達する曲が多くはないと捉えています。鍵になるのはストリーミングでの上位安定であり、歌手のファンではないが曲が気になるライト層を押さえる必要があるのですが、たとえばLINE MUSIC再生キャンペーンの採用はコアファンへの刺激が主体となります。

 

このことは、当週が通算5週目のランクインとなるSEVENTEEN「消費期限」も同様です。ストリーミング、動画再生共に昨年12月11日公開分が最後の加点となり、ラジオも同年12月25日公開分で止まっています。直近ではフィジカルセールスが93,400→94,151枚と高く推移し総合チャートランクインの原動力となっていますが、コアファンとライト層との乖離がこの指標構成からみえてきます。

フィジカルリリース後のフィジカル施策はSEVENTEENが得意としていますが(当週のアルバムチャートにおける『SPILL THE FEELS』も同様)、K-POP歌手やAKBグループ等も採用しています。しかし施策後に総合チャートで急落するならば、やはりライト層獲得は必須でしょう。施策はコアファンの熱量を刺激する一方で物理的や精神的疲弊にもつながりかねません。ならば新たなコアファンに成り得るライト層の発掘は重要です。

 

 

一方で、timelesz「Rock this Party」は総合トップ10内をキープしていますが、ポイントは7,185→4,783と推移、前週比66.6%と下がり幅が小さくはありません。ストリーミング指標の基となる再生回数は前週比126.0%と伸ばしていますが、ダウンロードは33,350→4,494DL(前週比13.5%)と大きく後退したことが影響しています。当週は解禁後初の1週間フル加算となりますが、瞬発力の高いダウンロードの反動が表れた形です。

「Rock this Party」においてはストリーミングが上位をキープできるか、そして他指標が追随するかが注目点となりますが、公式オーディオのみの解禁ながら動画再生指標が100位以内に入っている点を踏まえれば、YouTube経由での聴取層が一定数存在することが見えてきます。ミュージックビデオの解禁もさることながら、たとえばダンスバージョンやリリックビデオ等複数の動画展開が、ロングヒットの鍵となるでしょう。

 

 

最後に。ビルボードジャパンソングチャートについては、今年に入り『ミュージックステーション』が通常回で採り上げているのですが、次回の放送ではtimeleszの出演がアナウンスされています。

ミュージックステーション』は2時間スペシャルだった前回、ビルボードジャパンソングチャートを紹介しませんでした。長尺版の際に採り上げないのか、それとも今後も採り上げないようになるのかは解りかねますが、MUSIC AWARDS JAPANのエントリー作品選考にも大きく関わるビルボードジャパンのソングチャートが社会的ヒット曲の鑑であると認知されるという意味でも、番組が紹介していくことを願うばかりです。