イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 前週のトップ10初登場曲、当週のCHART insightから真のヒット曲に成るかを読む (2024年8月14日公開分)

(※追記(8月17日5時5分):通常火曜にApple Music週間チャートを掲載するミュージックマンが最新チャートを金曜午後に公開したため、ストリーミング動向表の掲載がエントリー公開時に間に合いませんでした。よって今回のタイミングにて貼付しています。)

 

 

 

3月まで記載していたこちらのエントリーを、内容を少しリニューアルした上で先月復活しています。先週の内容はこちら。

 

ビルボードジャパンソングチャートの動向を分析する者として、真の社会的ヒット曲とはロングヒットする曲、年間チャートで上位に進出する曲と位置づけています。週間単位で上位に入ることも素晴らしいですが、他方で所有指標が強い曲は加算2週目、また所有指標的な接触指標をなぞる曲(主にLINE MUSIC再生キャンペーン採用曲)はキャンペーン終了後に指標が急落し、総合でも大きくダウンすることが少なくありません。

急落傾向はここ最近、特に目立っています。ソングチャートのトップ10は週平均5曲程が毎週入れ替わり、ロングヒットする(その可能性を持ち合わせている)かそうでないかが極端に分かれる状況です。ロングヒット曲は主にライト層の支持が反映されるストリーミング指標が強い一方、急落する曲はコアファンとライト層との乖離が大きいのですが、これらを1週分のチャートから判断することは現状では難しいといえます。

ゆえにこのブログエントリーでは上記提案をビルボードジャパンに対して行っていますが、すぐに叶うことはないかもしれません。ならば、あくまで自分なりであると前置きしつつ、チャートの見方を提示したいと考えたのがエントリー復活の理由です。

 

 

<2024年8月14日公開分 ビルボードジャパンソングチャート

 前週初めてトップ10入りした作品の、前週および当週におけるCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

最新週における指標毎のポイント構成

 (CHART insight改定以降は累計ポイントにおける構成比に変更した、とビルボードジャパンは説明しています。)

 

Snow Man「BREAKOUT」

 8月7日公開分 1位→8月14日公開分 18位

=LOVE「絶対アイドル辞めないで」

 8月7日公開分 3位→8月14日公開分 100位未満(300位圏内)

・LIL LEAGUE from EXILE TRIBE「Youth Speak」

 8月7日公開分 5位→8月14日公開分 100位未満(300位圏内)

当週におけるストリーミング等動向を記した表はこちら。

 

フィジカルセールス指標の基となるセールスにおいて最も高い初動を獲得しているのはSnow Manで間違いありません。一方でそのSnow Manを筆頭に、現在もデジタル未解禁を続けるSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手は(過去に所属した方も含めて)多い状況です。ストリーミングが堅調に伸び、ビルボードジャパンソングチャートでも存在感を高める中にあって、デジタル未解禁歌手の存在感は小さくなっています。

<2023年度以降のビルボードジャパンソングチャート Snow Manのフィジカル

 シングル表題曲におけるフィジカルセールス指標初加算および2週目の動向>

(※ 2023年度以降、ソングチャートからルックアップおよびTwitter指標が廃止されており、単純比較が可能といえます。ルックアップはパソコン等にCDを取り込んだ際、インターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指します。)

(※ ダブルAサイドシングルの場合、フィジカルセールス指標は1曲のみに加算されます。)

(※ 掲載したCHART insightはいずれも、フィジカルセールス指標加算2週目のものです。)

 

・「タペストリー」

 2023年3月22日公開分 1位 (12,620ポイント)→翌週 5位 (5,198ポイント)

 ポイント前週比 41.2% フィジカルセールス 921,010枚→47,245枚

・「Dangerholic」

 2023年9月13日公開分 1位 (12,111ポイント)→翌週 9位 (4,694ポイント)

 ポイント前週比 38.8% フィジカルセールス 893,666枚→45,065枚

・「LOVE TRIGGER」

 2024年2月21日公開分 2位 (12,458ポイント)→翌週 12位 (4,065ポイント)

 ポイント前週比 32.6% フィジカルセールス 1,224,902枚→43,685枚

・「BREAKOUT」

 2024年8月7日公開分 1位 (13,105ポイント)→翌週 18位 (3,570ポイント)

 ポイント前週比 27.2% フィジカルセールス 1,088,373枚→34,163枚

 

2023年度以降のSnow Manによるフィジカルシングル表題曲(フィジカルセールス指標加算対象作品)のソングチャートにおける動向を上記に。気になるのはリリースする毎に、フィジカルセールス指標加算2週目における総合ポイント前週比が小さくなっているということであり、順位の下落幅にも影響しています。

今作「BREAKOUT」での下落幅の大きさは、2週目のフィジカルセールスが4作で唯一4万枚を下回っていることも影響しています。しかしながらフィジカルセールス加算2週目のポイント構成比が「Dangerholic」とほぼ同じであることを踏まえれば、動画再生、ラジオも同様に小さくなっていると考えていいでしょう。その仮定が正しいならば、Snow Manの楽曲人気は初週フィジカルセールスと比例しなくなっているといえます。

(なおCHART insightは3月のリニューアルに伴い円グラフが最新週ではなく累計でのポイント構成比を示しているとのことですが、現時点でも最新週のそれを示しているものと捉えています。)

 

それでも、デジタル未解禁曲でトップ20内をキープすることは素晴らしいことですが、サブスクを解禁していれば上位をキープしたことは間違いないでしょう。動画再生およびストリーミングという接触指標群は比例する傾向にあり、Snow Manはミュージックビデオ等公開時から動画再生指標が高位置で安定していることが上位キープを間違いないと捉える理由です。

Snow Manは公式YouTubeチャンネルにて「BREAKOUT」の関連ショート動画を10本以上用意し、上記動画はブログエントリー執筆時点でTikTokでも固定されています(TikTokこちら)。ショート動画は動画再生指標に含まれないものの、YouTube視聴やサブスク再生に波及し接触指標群を伸ばすということは、最新チャートにおけるGEMN「ファタール」のトップ10内返り咲きからも明らかです。

 

フィジカルセールスは、タイアップ先の人気もさることながら複数種リリースや特典によって左右されることが少なくないと考えます。デジタル解禁がフィジカルセールス減少につながりかねないという懸念が聞こえてきますが、その点については先日のエントリーを再掲します。音楽チャート面、利益面、そしてライト層への拡がり(イコールコアファンへの昇華の可能性の高まり)を踏まえ、歌手や事務所側の英断を願うばかりです。

フィジカルは1枚あたりの金額が大きいため増減が大きくなりがちであり、ゆえに懸念も生まれやすいはずです。しかしデジタルにはフィジカルのような廃盤という概念が基本的に存在せず、聴かれ続ける限りわずかでも着実に利益が出続けます。またTikTok等により過去曲がフックアップされやすく、バズがサブスク聴取等につながれば収益にもなります。売上ではなく利益の面で、短期よりも中長期で考えることが必要です。