(※追記(1月10日16時46分):B'zがYouTubeで「ultra soul」および「LOVE PHANTOM」のライブ動画を公開したことについて、追記しています。)
このブログで新規エントリー公開を毎日公開し始め、昨年末に丸10年を迎えました。合わせて、2020年からポッドキャスト【Billboard Top Hits (通称:ポッドチャート)】を毎週公開しています。Spotify等のほか、YouTubeでも配信しています。
このポッドキャストは、ビルボードジャパンアルバムチャートが木曜公開に変更したことを踏まえ、今年から木曜19時の公開に変更しています。
さて、今回のポッドキャストでも紹介したように、一昨日発表された1月1日公開分(集計期間:2024年12月23~29日)、および1月8日公開分(集計期間:2024年12月30日~2025年1月5日)のビルボードジャパンソングチャートでは、年末の風物詩やイベントで親しまれた曲が上昇していますが、中にはもっと上昇する可能性があった曲も複数みられます。今回はそちらについて紹介し、改善提案も記します。
・山下達郎「クリスマス・イブ」
1月1日公開分ビルボードジャパンソングチャートでは山下達郎「クリスマス・イブ」が39→26位に上昇しています。ラジオは季節関連曲、およびベテラン歌手の作品を(レギュラー番組を持つ歌手ならば特に)取り上げる傾向にあることもあり、この曲はラジオ指標を制していますが、一方でストリーミング指標は80位にとどまっています。この動きはback number「クリスマスソング」(総合4位 ストリーミング5位)と大きく異なります。
しかしこのチャート動向は、サブスクを解禁しないと発言している山下達郎さんが実際はサブスクを解禁しているという、いわば矛盾を示しています。「クリスマス・イブ」はたとえばSpotifyでは未解禁が続く一方でApple Musicでは解禁されており、後者では2024年12月23~29日の集計期間(1月1日公開分ビルボードジャパンソングチャートと同一期間)において38→26位に上昇しています。
山下達郎「クリスマス・イブ」が他のサブスクサービスでも解禁していたならば、ビルボードジャパン総合ソングチャートでも上昇したと考えるのは自然なことでしょう。実際、Spotifyではこのような動きがみられています。
12月24日付の日本におけるSpotifyデイリーチャートには「#クリスマス・イブ」のカバーバージョン"が87位に再登場しているのですが、#山下達郎 さんがきちんとSpotifyにも解禁していれば、本家がもっと伸びたのは間違いないはずです。https://t.co/btfbyVksGP
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年12月25日
(歌手名に”山下達郎”と記載されていますが、実際は参加していません。)
山下達郎「クリスマス・イブ」には公式動画がYouTubeに存在せず、動画再生指標が獲得できていません。これはデジタルでの接触、それ以前にデジタル自体に懐疑的な姿勢がサブスク共々反映されているといえるでしょう。この姿勢は最近のインタビューから透けて見えるのですが(下記エントリーにリンクを掲載)、デジタル未解禁が至極勿体ないと感じるのみならず、日本の音楽業界全体が前進しない一因だと感じています。
・B'z「ultra soul」「LOVE PHANTOM」
『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下”紅白”と表記)でB'zがサプライズ披露したことに伴い、1月8日公開分のビルボードジャパンソングチャートにて「ultra soul」が49位、「LOVE PHANTOM」が57位に再浮上を果たしています。
他にも、米津玄師「さよーならまたいつか!」はダウンロード数が約6倍伸びて40位から17位へと大きく浮上、藤井風「満ちてゆく」は約3か月ぶりに100圏内となり、27位を獲得した。またB'z「ultra soul」、「LOVE PHANTOM」もチャートイン。「ultra soul」はラジオとダウンロードのポイントが牽引し、約7年4カ月ぶりのチャートインで49位に、「LOVE PHANTOM」はダウンロードとストリーミングの増加が影響して、57位となった。
【ビルボード】年末年始のHot100を制したのはMrs. GREEN APPLE「ライラック」、B'z「ultra soul」、「LOVE PHANTOM」もチャートイン https://t.co/02Gt1KknGf
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2025年1月8日
ストリーミング指標では「ultra soul」が100位未満ながら300位圏内となりポイントが加算、また「LOVE PHANTOM」は90位に登場していますが、ストリーミングと順位が比例しやすい動画再生指標においては2曲とも300位未満となり加点されていません。他方、紅白でB'zが最初に披露した「イルミネーション」はストリーミング300位未満ながら動画再生指標が100位未満300位圏内となり加点されています。
「ultra soul」にはスタジオライブ映像がフルバージョンでアップされているものの(→こちら)、ミュージックビデオは「ultra soul」および「LOVE PHANTOM」がショートバージョンとなっています。ミュージックビデオが短尺版であったことが(継続)視聴につながらず、動画再生指標で300位以内に入らなかった要因とみられます。
(他にも、動画にISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番だったという可能性も考えられますが、しかし「LOVE PHANTOM」「ultra soul」は過去に動画再生指標が加点されていたことがあり、欠測は考えにくいというのが私見です。)
B'z共々紅白で話題を集めた米津玄師「さよーならまたいつか!」は動画再生指標が39→16位、藤井風「満ちてゆく」は同100位未満(300位圏内)→50位、またVaundy「踊り子」は同95→27位にいずれも上昇しています。これらはいずれもフルバージョンでアップされており、ならばやはりB'zにおいても、2曲を含む過去作品のミュージックビデオがフルバージョンで公開されていたならば、より大きなインパクトを残せたはずです。
今回のB'zにおける動画再生指標の高くなさは、以前のエントリーから予想できたことでした。
ミュージックビデオをYouTubeで公開した当時はフィジカルセールスの比重が大きく、またデジタルリリースがフィジカルセールスを凌駕する可能性があると(今以上に)考えられていたゆえ、フルバージョンで公開しないというスタンスを採る歌手が多かったという印象です。しかしそのスタンスは正しくなく、また現在はフィジカルの比重がより下がっている以上、改善は必須でしょう。
そして、デジタルへの懐疑心がベテラン歌手に散見されると痛感しています。フィジカル先行/デジタル後発という施策も未だ目立つ状況です。Global Japan Songs Excl. Japanの開設や新たな音楽賞であるMUSIC AWARDS JAPANの開始等、日本の音楽を世界に轟かせるための動きが出てきていますが、そのためには日本の音楽全体の積極的なデジタル化が何より重要です。ベテラン歌手の変化、また周囲の方による説得を願います。
※追記(1月10日16時46分)
このブログエントリーを公開した日の昼に、B'zが「ultra soul」および「LOVE PHANTOM」のライブ動画を各3本ずつ、計6本一気に公開しています。
B’z、「ultra soul」「LOVE PHANTOM」ライブ映像6本を公式YouTubeに一挙公開(動画あり)https://t.co/OEPKGR3G19#Bz
— 音楽ナタリー (@natalie_mu) 2025年1月10日
これら動画の公開が、紅白の反響およびそれに伴うチャートアクションを受けてのものだと考えるのは自然なことでしょう。今回のエントリーで提案したミュージックビデオのフルバージョン化を願うばかりですが、今回の動画公開が紅白で高まったB'z熱を維持し、さらに高める可能性は十分です。今後のチャートアクションに注目しましょう。