イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

中山美穂 & WANDS「世界中の誰よりきっと」が100位以内に登場するも、もっと伸びた可能性

最新12月11日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは、中山美穂WANDS世界中の誰よりきっと」が56位に初登場を果たしています。

12月6日に急逝が報じられた影響で、中山美穂&WANDS世界中の誰よりきっと」が総合56位に初登場。ダウンロード6位、ラジオ91位、カラオケ88位となった。

この曲のCHART insight、累計ポイント構成比からみえてくることがあります。

 

1992年にリリースされた中山美穂WANDS世界中の誰よりきっと」は、昨年11月3日にレコードがリリースされたことで同年11月8日公開分ソングチャートにおいてフィジカルセールス指標25位にランクイン。ゆえに累計ポイント構成比ではフィジカルセールスを示す黄色も数%存在していますが、青で示されるストリーミングの構成比が大きいことが解ります。

このストリーミング指標は当週ダウンロード指標12位にランクインした「ただ泣きたくなるの」(1994)や同19位を記録した「遠い街のどこかで…」(1991)のCHART insight、累計ポイント構成比にはみられません。2曲は総合100位以内には登場していないことから、ストリーミング人気が総合100位以内エントリーに大きく影響することが「世界中の誰よりきっと」からよく解るでしょう。

 

さて、ストリーミングは同じ接触指標である動画再生と比例する傾向にあるのですが、その動画再生指標は「世界中の誰よりきっと」において一度も加点されていません。これは最新週においても同様です。

中山美穂さんの公式YouTubeチャンネル(→こちら)には動画が5本のみ公開され、「世界中の誰よりきっと」は中山美穂さん単独版のライブバージョンがアップされていますが、そのサムネイル画像は荒れています。また、歌手のチャンネル発の公式動画ゆえISRC(国際標準レコーディングコード)が付番可能であり、このISRC付番動画が動画再生指標のカウント対象となるのですが、同曲は当週この指標300位未満となっています。

上記はYouTubeで"世界中の誰よりきっと"と入力し検索した際の画面。12月11日22時40分現在のものですが、歌手以外のYouTubeチャンネルから発信された非公式動画が公式動画を上回る状況です。サブスクは解禁されていながらも動画の非充実が動画再生指標の加点につながらず、仮にミュージックビデオや公式オーディオが用意されていたならばビルボードジャパンソングチャートでの存在感はより高まったことでしょう。

サブスク解禁の一方で公式動画が乏しい状況は、たとえば今年亡くなった西田敏行さんにおいても同様です。尤も西田さんにおいては解禁曲が多くないこと、また公式YouTubeチャンネル自体用意されていないことを考慮する必要はあるでしょう。

 

 

訃報に伴い、亡くなった方の過去作品に対するニーズは高まります。しかしデジタルアーカイブが充実していなければ、作品に触れることで偲ぼうとする方の思いに応えることはできません。昔の作品はミュージックビデオ自体制作されていないことも少なくないものの、過去のテレビパフォーマンスが映像商品としてリリースされている状況を踏まえれば、そちらをYouTubeアーカイブ化することは不可能ではないはずです。

このブログでは音楽業界への提案を記す際、その提案の対象をエンタテインメント業界全体に向けて発信することがあります。今回のデジタルアーカイブ化については音楽業界とメディア、双方の意識改善が欠かせません。デジタルアーカイブの充実は日本のエンタテインメントが世界にリーチしやすい環境を作るためにも必要なことから、業界全体の一刻も早い改善を願うばかりです。