イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 『第75回NHK紅白歌合戦』出場歌手が発表、その顔ぶれを考える

(※追記(11月20日7時7分):『第75回NHK紅白歌合戦』で返り咲きを果たした4組のチャート動向を分析したエントリーについて、リンクを貼付しています。)

 

 

 

『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか、以下"紅白"と記載)の出場歌手が本日発表されました。

 

今回の初登場は紅組がILLIT、tuki.さんおよびME:I、白組がOmoinotake、Creepy Nuts、こっちのけんとさん、Da-iCE、TOMORROW X TOGETHER、Number_iおよび新浜レオンさんの計10組となります。また今回、氷川きよしさんが特別企画にて出演することがアナウンスされています。

一方で、昨年出場を果たしながら今回選ばれなかったのは紅組が新しい学校のリーダーズ、Adoさん、anoさん、伊藤蘭さん、JUJUさん、NiziU、Perfume、MISAMO、miletさんおよびYOASOBI、白組がエレファントカシマシ大泉洋さん、Official髭男dism、キタニタツヤさん、さだまさしさん、鈴木雅之さん、すとぷり、Stray Kids、SEVENTEEN10-FEET藤井フミヤさん、MAN WITH A MISSIONおよびゆずとなります。加えてSTARTO ENTERTAINMENT所属歌手は昨年続き、今年も選ばれていません。

 

特別企画を除けば紅組20組、白組21組が発表されました。昨年は22組および特別企画が用意されており、もう数組増えることが予想されます。

 

 

今回の傾向を語る前に、このブログでは紅白の最終予想を先週掲載しました。今年はテーマに即した(と思しき)選出が少なくなかったことから、特にその点にて予想を外した部分が少なくありませんでした。この反省は来年に活かします。

また、内定報道も別途エントリーにてまとめています。先週以降の初出場歌手に関する内定報道は当たっていたことが解ります。

 

 

まずは初出場を果たした10組について取り上げます。初出場歌手についてはビルボードジャパンがチャート記録を紹介する記事を用意していますが、出場歌手発表から間もないうちにこのような詳細な記事を作成することは難しいと考えるに、紅白側がやはりビルボードジャパンを社会的ヒットの鑑と捉え、情報の提示等において連携しているものと感じています。

このブログでは以前、紅白がビルボードジャパンを参照しているだろうことを踏まえ、ビルボードジャパンのソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャート(Artist 100)での上位進出および安定が、選出されやすい条件に成るのではと結論づけました。では今年はどうでしょうか。

初出場歌手10組の直近(最大)60週分のCHART insightを、ビルボードジャパンの記事と共に紹介します。

 

<紅白初出場歌手におけるトップアーティストチャートのCHART insight>

 

※CHART insightの説明

 

[色について]

黄:フィジカルセールス

紫:ダウンロード

青:ストリーミング

黄緑:ラジオ

赤:動画再生

緑:カラオケ

濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)

 (Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)

ピンク:ハイブリッド指標

 (BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)

 

[表示範囲について]

総合順位、および構成指標等において20位まで表示

 

[チャート構成比について]

累計における指標毎のポイント構成

 

※ CHART insightは最新11月13日公開分までの最長60週分を表示しています。

※ CHART insight下の文言はすべて、上記ビルボードジャパンの記事より引用しています。

 

・ILLIT

5人組K-POPガールズグループ。メンバーにはモカ、イロハの2人の日本人が所属している。3月に1stミニアルバム『SUPER REAL ME』でデビュー。同作のタイトル曲「Magnetic」は、BTS「Dynamite」と並び、K-POP史上3位タイの速さで国内累計再生数1億回を突破した。

 

・tuki.

TikTokを中心に活動する16歳のシンガーソングライター。2023年7月に投稿した初のオリジナル曲「晩餐歌」がリリース前から注目を集め、同年9月に満を持して配信がスタート。年を跨いでロングヒットを記録し、上半期の“JAPAN Hot 100”では2位に輝いた。また7月には自身初のストリーミング累計再生数3億回を突破。同記録は、ソロアーティストとしては史上最年少となる。

 

・ME:I

日本最大級のサバイバルオーディション番組『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』から生まれた11人組ガールズグループ。4月にリリースしたデビューシングル『MIRAI』は、シングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”で263,399枚を売り上げ初登場首位を獲得した。さらに9月にリリースした2ndシングルのタイトル曲「Hi-Five」は、CD2位、ラジオ2位、ダウンロード3位をマークし、自身初の総合首位に輝いた。

 

・Omoinotake

メンバー全員が島根県松江市出身のピアノトリオバンド。2012年に結成され、2021年にメジャーデビューを果たした。今年1月にリリースしたドラマ『Eye Love You』の主題歌「幾億光年」は、2024年リリース楽曲の中で、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」に次いで2曲目の累計再生数1億回超えを達成。総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”でも40週連続でトップ20を走り続けている。

 

Creepy Nuts

日本三連覇のラッパー「R-指定」と世界一のDJ「DJ松永」によるヒップホップユニット。1月にリリースした「Bling-Bang-Bang-Born」が、動画プラットフォームから人気に火が付き大ヒット。上半期のビルボードジャパンチャートでは、“JAPAN Hot 100”の他、世界でヒットしている日本の楽曲をランキング化した“Global Japan Songs Excl. Japan”など、計13チャートで首位を総なめした。来年2月には自身初の東京ドーム公演を控えている。

 

・こっちのけんと

大阪府出身のマルチクリエイター。大学時代にアカペラサークルにて音楽活動を始め、2022年よりオリジナル曲のリリースをスタートした。5月にリリースした「はいよろこんで」は、楽曲の考察、昭和アニメ風のMV、ダンスチャレンジなど多方面で話題を集め、“JAPAN Hot 100”および“Global Japan Songs Excl. Japan”でそれぞれトップ5入りを果たした。兄に菅田将暉、弟に菅生新樹を持ち、新樹とは5日に放送されたNHK総合『第24回 わが心の大阪メロディー』でテレビ初共演を果たしたばかりだ。

 

Da-iCE

2012年にデビューした5人組ダンス&ボーカルグループ。2020年にリリースされた「CITRUS」がストリーミングやカラオケでロングヒットを記録し、『第63回日本レコード大賞』で大賞を受賞した。さらに2022年にリリースした「スターマイン」は、TikTok総再生回数7億回を突破。そして、今年リリースされたドラマ『くるり~誰が私と恋をした?~』主題歌「I wonder」は、自身最速でストリーミング累計再生数1億回を突破した。

 

・TOMORROW X TOGETHER

2019年3月にデビューした韓国の5人組ボーイズグループ。2023年にリリースされた5thアルバム『The Name Chapter: TEMPTATION』は、米ビルボードのアルバム・チャート“Billboard 200”で自身初の首位に輝いた。日本でも今年リリースしたシングル1作、アルバム2作はすべてシングルおよびアルバム・セールス・チャートで1位を獲得している。

 

・Number_i

平野紫耀神宮寺勇太・岸優太による3人組ユニット。1月1日にリリースしたデビューシングル「GOAT」は、エッジーサウンドやMV、サビの振り付けが注目を集め、2024年1月10日公開の“JAPAN Hot 100”で初登場首位に輝いた。また4月には、世界最大規模の音楽フェスティバル【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2024】に<88RISING FUTURES>の一組として出演したことも大きな話題を集めた。

 

・新浜レオン

令和初日の2019年5月1日にデビューした演歌歌手。今年3月にリリースした6thシングルの表題曲「全てあげよう」は、プロデュース・木梨憲武、作詞作曲・所ジョージの最強タッグが手がけたことが話題となった。また同シングルは、SoundScan Japanの演歌チャートにて2024年の現時点の集計(~11月17日まで)で1位を走っている。

 

ビルボードジャパンがこの1年の間にCHART insightをリニューアルしたことで、無料会員が確認可能な範囲が100位までから20位までとなり、歌手としての勢い(特に持続面)を確認することはリニューアル前より難しくなりました。しかしその中にあって、Creepy Nutsやtuki.さん、Da-iCE等は総合のトップアーティストチャートにおいて、週間単位で連続して20位以内にランクインしていることが解ります。

先述した歌手は今年きちんとヒット曲を輩出しており、そのことは12月6日金曜発表予定となるビルボードジャパン年間チャートでも明らかになるはずです。

 

演歌歌謡曲においてはビルボードジャパンソングチャートで存在感を示しにくい、フィジカルセールスが未だ主体という状況です。新浜レオンさんはフィジカルセールスの実績に加えて、所ジョージさんや木梨憲武さんが手掛けていること、またビーイング(現B ZONE)初の演歌歌手という環境も影響していると思われます。後者を踏まえるに、現在朝ドラ『おむすび』の主題歌を務めるB'zの出場可能性は高まったといえるでしょう。

(ちなみに、すべてのスポーツ紙が本日、新浜レオンさんの内定報道を発信しています。ともすればスポーツ紙側は主要購読者層を演歌歌謡曲ファンと見据え、この情報を一斉に発信したのかもしれません。)

 

 

さて、アイドル/ダンスボーカルグループについて、初出場組を除く主要歌手のCHART insightを貼付します。こちらは出場/不出場に関係なく掲載します。

<アイドル/ダンスボーカルグループにおけるトップアーティストチャートのCHART insight>

 

※ 出場歌手には歌手名の隣に”(出場)”と記しています。

 

 

新しい学校のリーダーズ

XG

AKB48

・櫻坂46 (出場)

・TWICE (出場)

・NiziU

・NewJeans

乃木坂46 (出場)

 

・日向坂46

 

・FRUITS ZIPPER

 

・MISAMO

・LE SSERAFIM (出場)

 

・INI

・Aぇ! group

・ENHYPEN

・King & Prince

・THE RAMPAGE from EXILE TRIBE

・JO1 (出場)

・GEMN

・Stray Kids

SixTONES

Snow Man

SEVENTEEN

・なにわ男子

・BE:FIRST (出場)

 

日本のアイドルやダンスボーカルグループは基本的に、男女問わずフィジカルセールス主体となる一方、接触指標群(ストリーミングや動画再生)が強くない傾向にあります。ヒット曲を輩出し接触指標群が強くなることで年間単位でのヒットにつながり、トップアーティストチャートも安定するため、まずは主にフィジカルセールス指標が初加算された曲における翌週以降の動向(総合順位や接触指標群の推移)をみることが重要です。

このジャンルにおいては以前から出場している歌手よりフィジカルセールスが強くとも、紅白では以前出場した歌手が連続して出場する傾向も強いことが入れ替わりを難しくする一因と考えます(これにはNHKへの貢献度等も影響します)。ゆえに初登場を目指すには、何よりもロングヒット曲の輩出が前提に成るはずです。

なお紅組出場歌手の最終予想にてFRUITS ZIPPERを挙げましたが、ヒット街道に乗ったとしてもそれが秋以降の場合は選ばれにくいということも今回実感していますす。

 

K-POPにおいて、紅組ではNewJeansが不出場ですがチャート面からは十分出場可能と考えるに、事務所問題が要因ではないかと捉えています(この点については紅白およびNHK側がどのように判断したか説明する必要があるでしょう)。またTWICEの返り咲きについては昨年の(グループ内アクトである)MISAMOから継いだと捉えて好いでしょう。『以前出場した歌手が連続して出場する傾向』はK-POPにも当てはまるものと考えます。

白組ではTOMORROW X TOGETHERのみがK-POP歌手として選ばれていますが、4月に放送された『Venue101 Presents TOMORROW X TOGETHER One Dream LIVE』(番組ページはこちら)が影響していると考えます。『SONGS』に出演したGLAYTHE ALFEE、またドキュメンタリーが放送されたVaundyさんも選ばれており、NHK番組への出演が出場に近づくものと捉えていいでしょう。

 

 

今回NHKは中堅やベテランとも呼べる歌手を選出から外しています。紅組はPerfume、白組は鈴木雅之さんやゆずが外れました。またNHKオリンピック/パラリンピックでも使われた「舞台に立って」を歌うYOASOBIが未選出、オリンピックイヤーにもかかわらず『ハイキュー!!』映画主題歌「オレンジ」がヒットしたSPYAIRも選ばれなかったことから、NHK側は紅白でのオリンピックの取扱を減らすかもしれません。

(なお昨年、紅白ではワールド・ベースボール・クラシック(WBC)についての取扱がありませんでした。WBCは昨年大晦日にTBSが大きく採り上げており、もしかするとTBS等他局でオリンピックが大きくフィーチャーされるかもしれません。)

 

 

さて、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手は出場ゼロという状況であり、予想段階にてチャートヒットを踏まえた出場枠の最適化を提案した者としては複雑な心境を抱くというのが率直な私見です。Snow Manはフィジカルセールスで唯一初週ミリオンを記録、また元Sexy Zone中島健人さんがキタニタツヤさんと組んだGEMNは「ファタール」が年間ソングチャート100位以内確実ゆえ尚の事です。

無論、前事務所時代の創業者における性加害事件の解決が必須ですが、NHKは起用再開を発表した直後に『NHKスペシャル』を放送し、局内での異なる動きが今回につながったものと思われます(番組で登場した補償担当者の態度は無論許されるものではありませんが、それらを含む自分の見方は”2.5回目”の予想(→こちら)で記しています)。今回の経緯については邪推をさせないためにも、紅白やNHK側の説明が必要と考えます。

 

 

今後の追加発表についてですが、まずB'zの可能性は高まったというのが私見です。現在放送中の朝の連続テレビ小説『おむすび』主題歌に「イルミネーション」を提供、また同じ事務所に所属し松本孝弘さんのアルバムで客演参加した新浜レオンさんが初出場することもプラスとなるはずです。松本さんと新浜さんが共演した『SONGS』がこのタイミングで再放送されることも、可能性の高まりを感じる理由です。

その新浜レオンさんによる「全てあげよう」をプロデュースした木梨憲武さんが、とんねるずとして登場する可能性も出てきたと考えます。今月久しぶりのライブを開催したこと、また紅白ではとんねるず野猿として出場経験があり、第42回(1991年)での衣装がNHK紅白ヒストリー(→こちら)で採り上げられていることも、可能性が高まったと考える理由です。

 

そして、今回の司会のひとりである伊藤沙莉さんが主演した朝の連続テレビ小説『虎に翼』に主題歌「さよーならまたいつか!」を提供した米津玄師さんも登場する可能性は十分考えられます。今後の追加発表に注目です。

 

 

最後に、昨年も記した内容を今年も貼付します。出場歌手内定の段階から”その歌手は知らない”という姿勢がメディアや一部市井から散見されるのですが、選出基準がしっかりしていることは今回のエントリーからも自明です。紅白がより好くなってほしいと考えるならば冷静な分析、そして提案を行うほうがより素敵だと考えます。腐すばかりのメディア等が変わること、変わる気概がないならば採り上げないことを願います。

客観的なデータにて紹介したところで紅白出場歌手を”知らない”とする方が少なくありません。”紅白見ない”がトレンド入りしたそうですが、知らないのは誰にでもあることだとして、知らないことを正しいと決めつけ認知度の高くない歌手のせい等にするやり方は格好悪いと断言します。学ぶ姿勢、知ろうとする気概を是非持ってほしいと強く願いますが、見ないならばわざわざ公言する必要はありません。

 

 

※ 追記 (11月20日7時7分)

今年の紅白で返り咲きを果たした4組について、チャート動向を分析したエントリーを公開しました。つきましてはそのエントリーのリンクを以下に掲載します。