『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか 以下”紅白”と表記)の出場歌手が昨日発表され、このブログでは発表の2時間後に分析エントリーを用意しています。
上記では主に初登場歌手やアイドル/ダンスボーカルグループ、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手出場ゼロへの見方等を記しましたが、今回は返り咲きを果たした歌手における注目の動向を紹介します。
今年の紅白で返り咲きを果たしたのは、紅組がaikoさん、イルカさん、HY、高橋真梨子さんおよびTWICE。白組はGLAY、THE ALFEE、Vaundyさん、藤井風さんおよび南こうせつさんとなります。
出場歌手発表時に公開された今年の選出基準もこれまで同様といえます。そのことも踏まえ、このブログでは以下の傾向が人選に影響すると記しました。
<『NHK紅白歌合戦』出場歌手の傾向>
① 若手や初出場歌手についてはビルボードジャパンのチャート動向が重視される
② ①で選ばれた歌手の連続出場は難しいが、実績が伴えば叶う
③ 若手で連続出場するもその年の曲が披露できないならば翌年外れる可能性がある
④ ①を踏まえ、K-POP歌手も積極的に起用する
⑤ 演歌歌謡曲は顔ぶれが変わらず、枠も最低限にとどまる
⑥ 他の音楽番組に比べて、出場歌手の世代やジャンルが広範囲に及ぶ
⑦ 『SONGS』や『NHK MUSIC SPECIAL』等、NHK関連番組出演等の実績が大きい
⑧ 周年記念歌手の出場が少なくない
⑨ 音源をサブスク配信していることがほぼ条件となっている
⑩ 年末年始のリリースが影響する(作品の宣伝の場という位置付けにもなっている)
・『第75回NHK紅白歌合戦』出場歌手を予想する (最終予想)(11月13日付)より
紅白が掲げた今年のテーマは『あなたへの歌』であり、その観点からおそらく選ばれたであろう歌手もみられます。またGLAYは今年デビュー30周年、THE ALFEEは同50周年を迎えたことも選出理由と考えていいでしょう。
その中にあって、今年ヒット曲を輩出したことを理由に返り咲きを果たした歌手もいらっしゃる、というのが音楽チャートを分析する者としての見方です。その点を、ビルボードジャパンのソングチャート(一部歌手はトップアーティストチャートを含む)のCHART insightを基に紹介します。
※CHART insightの説明
[色について]
黄:フィジカルセールス
紫:ダウンロード
青:ストリーミング
黄緑:ラジオ
赤:動画再生
緑:カラオケ
濃いオレンジ:UGC (ユーザー生成コンテンツ)
(Top User Generated Songsチャートにおける獲得ポイントであり、ソングチャートには含まれません。)
ピンク:ハイブリッド指標
(BUZZ、CONTACTおよびSALESから選択可能です。)
[表示範囲について]
総合順位、および構成指標等において20位まで表示
[チャート構成比について]
累計における指標毎のポイント構成
※ CHART insightは最新11月13日公開分までの最長60週分を表示しています。
aiko「相思相愛」は劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』主題歌としてヒット。ビルボードジャパンソングチャートでは100位以内に19週、トップ10内には4週ランクインしています。ストリーミング指標(CHART insightでは青で表示)は最高7位を記録、そしてフィジカルセールス指標(黄色)初加算時に総合で最高位となる7位を獲得したことは、フィジカルリリース曲における理想のチャートアクションといえるでしょう。
HY「366日」は2008年のアルバム『HeartY』収録曲で、今年になり同名ドラマ(フジテレビ)で起用されたことで再度注目を集めました。
今回紹介する曲の中では最もチャートアクションが小さいもののドラマ主題歌起用を機にカラオケ指標(緑)が伸び、同指標はトップ10目前まで上昇。またドラマでは初回と最終回を除いて毎回異なるデュエット相手とのバージョンがドラマに用いられていましたが、動画再生指標(赤)はオリジナル版と他バージョンとが束ねられたことで一時トップ10入り。それにより、「366日」は12週連続で総合100位以内に登場しています。
(基本的に、オリジナルバージョンと合算されるのは言語のみが異なるバージョンとなるのですが、YouTubeの動画にオリジナルバージョンと他バージョンとで同じISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されていれば合算される形です。たとえばTHE FIRST TAKEにおいても同様の合算が発生しています。)
「怪獣の花唄」がロングヒットを続けるVaundyさんは、1月にデジタル先行リリースした「タイムパラドックス」がヒット。『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』主題歌であり、3月の映画公開直前にフィジカルシングルをリリースしたことも勢いを高める要因となりました。総合ソングチャートでは現時点まで44週連続で100位以内に登場、また週間最高7位ながら通算11週に渡りトップ10入りしています。
藤井風さんは昨年10月リリースの「花」(『いちばんすきな花』(フジテレビ)主題歌)、そして今年3月に配信した「満ちてゆく」(映画『四月になれば彼女は』主題歌)が共にヒット。前者は週間最高6位、トップ10内在籍6週および100位以内エントリー39週、後者は週間最高4位、トップ10内在籍5週および100位以内エントリー25週を記録しています。
Vaundyさんおよび藤井風さんは、ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートで安定していることが上記CHART insightから解ります。今年は2組ともオリジナルアルバムをリリースしていませんが、ロングヒット曲の輩出や連続ヒットがこのチャートにおいて重要だと解るでしょう。そして昨日のエントリーでも示したように、このトップアーティストチャートも紅白の選出に影響すると考えます。
今回紹介した4組は、紅白に返り咲いた理由がヒット曲の輩出(リバイバルヒットを含む)にあると断言していいでしょう。音楽番組には滅多に登場しないVaundyさんや藤井風さんが出場するということだけでも、紅白に箔が付いたといって差し支えないのではないでしょうか。