最新10月23日公開分ビルボードジャパンソングチャート(集計期間:10月14~20日)では西田敏行さんの訃報に伴い、代表曲「もしもピアノが弾けたなら」が総合100位未満ながらも上昇したことがCHART insightから見て取れます。
西田敏行「もしもピアノが弾けたなら」の上昇に寄与したのはダウンロード(CHART insightでは紫で表示)およびラジオ(黄緑)であり、前週の300位圏外から前者は12位、後者は15位に達しています。
ラジオ指標は全国31の放送局におけるOA回数を基に聴取可能地域等を加味して算出されますが、このOAチャートを調査するプランテックの記事ではこのように紹介されています。
西田敏行さんの急逝が報じられた今週、代表曲「もしもピアノが弾けたなら」が急きょ21位にチャートインした他、多数関連曲がオンエア急伸。多くの番組が各リスナーからのリクエストもふまえて思い思いの曲で追悼した。
「もしもピアノが弾けたなら」は訃報が伝えられた直後、10月17日の午後からオンエアが伸長していった結果、調査対象の74.2%となるステーションへと波及。今週最も多くのリクエストオンエアも確認された。
亡くなった歌手の代表曲がチャートを上昇することは少なくなく、特にダウンロードやラジオ指標が急上昇することが解っています。カラオケも上昇傾向にありますが、一方でストリーミングおよび動画再生といった接触指標群は加点されることがほぼありません。その傾向については前週のエントリーにて紹介し、西田敏行「もしもピアノが弾けたなら」についても同様の事態に成る可能性を示唆しました。
訃報を受け、KAN「愛は勝つ」は総合ソングチャートで100位以内に返り咲きました。サブスク環境が不十分ながらYouTubeでは公式オーディオが掲載され、動画再生指標が加点されたことが要因です(上記エントリー参照)。他方、西田敏行「もしもピアノが弾けたなら」はYouTubeに公式動画(オーディオ含む)が用意されておらず、YouTubeになければサブスクにもないとして、聴取が継続されない可能性が考えられます。
実際、「もしもピアノが弾けたなら」はストリーミング(CHART insightでは青で表示)および動画再生(赤)が300位以内に達せず、加点対象とはなりませんでした。公式動画がないゆえ動画再生が加点されないのは仕方がないとして、サブスクで聴取可能ならばストリーミングで加点される可能性はあったのではと考えるに、今回の事態には考えさせられます。
そして、”公式動画がないゆえ動画再生が加点されない”事態はこれ以上起きてほしくはないというのが私見です。いつ何時でも聴く/触れることができないのは日本の音楽業界にてデジタルアーカイブが充実していない結果ともいえます。他方海外ではミュージックビデオの公開、そして高画質化も進んでおり、例えばここ数年はクリスマス関連曲がストリーミング(動画再生)主体に伸び、総合チャートでも上位に至っています。
上記はワム!「Last Christmas」のミュージックビデオ。サムネイルの”4K”表記からは高画質化したことが解ります。そして「Last Christmas」は米ビルボードソングチャートにて2022年および2023年のクリスマスシーズンに4位となり、1984年のリリース以降最高位に達しています。高画質化については下記エントリーにて紹介していますが、その際『邦楽全体のデジタルアーカイブ強化にもつながるのでは』と記しました。
ミュージックビデオがないならば、例えばテレビでのパフォーマンス映像を供給してもらうことも必要でしょう。
さて、先述したラジオOAチャートでは最新週において、竹内まりやさんによる10年ぶりのオリジナルアルバム『Precious Days』から複数曲がランクインしていることが記事から解ります。ただ、そのアルバム自体は現時点でデジタルリリースされていません。
音楽業界は総出で日本の音楽作品のデジタル化を推進する必要があるということについては明日のエントリーでも述べる予定ですが、そのためには老舗芸能事務所やベテラン歌手の説得が急務です。遅ればせながらのデジタル解禁は実は誇らしいことではない、海外からはどうみられているか等、意識させる必要があります。
ブログエントリーを基に日々雑感を記すnoteでは、昨日付ブログエントリー(→こちら)に関して上記内容を掲載しています。ラジオ業界はベテラン歌手のOAを好む傾向がありますが、そのベテランの中にはフィジカル先行/デジタル後発、もしくはデジタル未解禁を貫く方が少なくありません。ならば、彼らと接点を持つラジオ業界からの働きかけが、日本の音楽業界全体のデジタル化を進める契機のひとつに成ると考えます。