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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アリアナ・グランデ「Yes, And?」2バージョン登場を機に、チャートポリシー変更提案を再掲する

1月末以降のエントリーにて、arne代表の松島功さんによるポストを踏まえた下記エントリー群を掲載しています。ここでは”洋楽”について、松島さんによる問題提起に合わせる形で”K-POPを除く”と定義しています。

またこの流れで、先月開催されたグラミー賞にて話題になった作品の動向を分析しています。

さて、このエントリー群のきっかけとなった曲がアリアナ・グランデ「Yes, And?」ですが、最新2月28日公開分ビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標ではふたつのバージョンがトップ20入りしています。

アリアナ・グランデ「Yes, And?」におけるふたつのバージョンとは、オリジナル版そしてマライア・キャリー参加版。後者は2月16日金曜にリリースされ、当週初の1週間フル加算となったこともありビルボードジャパンソングチャートのラジオ指標では4位に。またオリジナル版は同指標16位にランクインしています。

 

ビルボードジャパンが月曜を集計期間初日とする一方で、米ビルボードソングチャートや米ビルボードによるグローバルのソングチャートは金曜からを集計期間としており、アリアナ・グランデ「Yes, And?」は2月16~22日を集計対象とした3月2日付米ビルボードソングチャートで31→11位、グローバルチャートのうちGlobal 200では14→8位に上昇。なお集計期間の半ばにはリミキサーによる3つのリミックスも公開されています。

 

アリアナ・グランデ「Yes, And?」が海外のチャートで上昇を果たしたのはこれらのチャートが様々なバージョンを合算対象とするため。特に、新たに歌手が追加された形でのリミックス版がオリジナルバージョンのポイントを上回った場合には、歌手名クレジットに追加歌手の分も含まれます。他方ビルボードジャパンでは言語の異なるバージョンを除き、歌手追加版やアレンジの異なるバージョンは合算されません。

しかしながらビルボードジャパンソングチャートの動画再生指標では、アレンジが異なっていてもTHE FIRST TAKEについて、動画の音源がリリースされない限りはオリジナルバージョンに合算されます。これはこの指標が国際標準レコーディングコード(ISRC)の付いた動画をカウント対象としており、THE FIRST TAKE動画にはオリジナルバージョンのISRCが付番されているゆえですが、しかしここに合算における矛盾が発生します。

 

リミックス版はオリジナルバージョンと異なるゆえ合算の必要はないという意見、またリミックス版を合算すればチャート上昇施策を主目的とした作品が登場しかねないという懸念もあるかもしれませんが、合算することで先述したTHE FIRST TAKE(に限りませんが)の矛盾は解消されます。そしてリミックスの存在は、何もチャート上昇施策だけではないというのが私見です。この点は以前から、このブログにて紹介しています。

日本でもこのリミックス文化が広まることを願うばかりです。(中略) 願う理由は【リミックスや客演文化の醸成】【海外作品の日本市場での流通拡大】【チャートの仕掛けや戦略の活性化】【新鋭歌手の認知度向上】【ヒップホップの人気拡大】【リミキサーの育成】【クラブカルチャーの復興】等、様々な効果が期待できるため。

冒頭で挙げたエントリー群は上記リンク先における【海外作品の日本市場での流通拡大】を考慮し、記載したものです。

 

現在多くの洋楽は金曜リリースの一方で邦楽は月曜および水曜が多く、音楽チャートの集計期間初日が月曜であることから洋楽は尚の事不利となっています。仮に海外のチャートに倣いビルボードジャパンがチャートを金曜集計開始とすれば、そして合算というチャートポリシーを採用すれば、アリアナ・グランデ「Yes, And?」はマライア・キャリーとの共演名義として、総合ソングチャート100位以内返り咲きを果たせたでしょう。

 

チャートポリシー変更の提案は、何も洋楽のフックアップにとどまりません。リミックスの意識が高まり、日本の作品を海外に知らしめることにもつながるはずです。これはビルボードジャパンが昨秋、米ビルボードによるGlobal 200(グローバルチャートのうち米の分を含む)をベースとしたGlobal Japan Songs Excl. Japanチャートを新設したことで、より強く言い切っていいでしょう。

Global Japan Songs Excl. JapanはGlobal 200をベースとしている以上、リミックスも合算対象に成ると捉えています(これまでそのような事例が見当たらないため、ともすればGlobal Japan Songs Excl. Japanではリミックスを外すことも有り得るかもしれません)。たとえばリミックス版に海外歌手を招聘することで、海外歌手の知名度を踏まえ日本の歌手が海外に轟く可能性もあります。

これは以前記した、Number_i「GOAT」のミッシー・エリオット客演参加版提案の基となる考えです。招聘により彼女の知名度を軸に世界の音楽ファンがNumber_iを注目する契機となり、【新鋭歌手の認知度向上】という意味でリミックスが有効に作用するでしょう。またこの招聘は日本でのミッシーの知名度上昇にもつながります。後者については、例えばBE:FIRSTのコアファンがジョナス・ブルーを知った事例から断言可能です。

 

 

今回の提案については、2年前にTOKIONへ寄稿した内容でも述べています。当時と今ではチャートポリシーが異なる部分もあり、また掲載当時はGlobal Japan Songs Excl. Japanチャートもローンチされていませんでしたが、そのTOKIONが昨日更新一時停止のアナウンスを行ったこともあり、今回あらためて紹介した次第です。

ビルボードジャパンが日本の楽曲の世界での認知向上を目指すならば、また洋楽の現状を憂慮するならば、チャートポリシーの変更は議論する必要があると強く考えます。