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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】ポイント前週比1.5倍のCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、2万ポイント突破の要因とは

最新3月20日公開分(集計期間:3月11~17日)のビルボードジャパンソングチャートでは、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が8連覇を達成。ポイント前週比151.0%を記録した今回、興味深い記録が複数みられています。

連続首位獲得記録および各指標の動向について、まずはビルボードジャパンの記事を紹介します。

本楽曲は当週で星野源「恋」の連続首位記録を抜き、Official髭男dism「Subtitle」と並ぶ8週目の連続首位獲得となった。なお、現在の連続首位記録は、YOASOBI「アイドル」の21週連続がトップとなっている。

各指標では、ダウンロードが21,307DLで前週から約4.4%落ちつつも1位、ストリーミングは約17%増の24,945,758再生で1位。動画再生では12,089,850再生を記録し、2位以下に6.4倍以上の大差をつけて1位となった。カラオケでも2位→1位と上昇し4指標で首位を獲得している。総合ポイントは23,453ポイントで、2位以下に約3.3倍という大きな差をつけている。3月20日にはフィジカルもリリースされ、3月22日からは全国ツアーもスタートするCreepy Nutsだが、この勢いがどこまで続くのかまだまだ目が離せない。

 

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が当週記録した23,453ポイントは2024年度では最大となり、チャートポリシー(集計方法)がほぼ現在の形に成った2023年度以降においても3番目に高い数値となります。

ちなみに2023年度は、ビルボードジャパンがソングチャートからルックアップおよびTwitter指標を廃止。昨年春にはGYAO!のサービス終了に伴い同サービスの動画再生指標の加点はなくなりましたが、それ以外のチャートポリシー変更はないため2023年度以降については単純比較が可能と捉えています。

2023年度以降で最もポイントが高いのはYOASOBI「アイドル」が2023年6月28日公開分にて記録した24,359ポイント。そのYOASOBI「アイドル」、Official髭男dism「Subtitle」そしてAdo「唱」に続き、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今回加点対象となる指標がいずれも10位以内に入っています。この点においても、「Bling-Bang-Bang-Born」は特大ヒットの仲間入りを果たしたといえるでしょう。

 

そして注目は、動画再生指標がポイント全体の4分の1を占めていること。CHART insightにおいて、この指標は赤で表示されます。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は動画再生指標が乱高下していましたが、当週初の首位に。この指標の基となる再生回数は12,089,850回を記録しています。先述したYOASOBI「アイドル」は動画再生指標でも強かったのですが、たとえば2023年5月31日公開分における指標の基の数値が9,300,982回再生だったことを踏まえれば、今回の「Bling-Bang-Bang-Born」が如何に驚異的かがよく解るでしょう。

なおビルボードジャパンは動画再生回数を基本的に表示しません。ゆえに今回の記載は「Bling-Bang-Bang-Born」の凄さを示していると言っても過言ではないでしょう。

動画再生指標の増加は、「Bling-Bang-Bang-Born」がオープニングテーマに起用されたテレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』とのコラボ動画(Creepy Nuts側の公式YouTubeチャンネルでアップされた曲のフルバージョン)、そして集計期間前週に公開されたTHE FIRST TAKEのヒットが大きく影響しています。ちなみに後者はオリジナル版と音源は異なりますが、動画再生指標に関しては合算されることになります。

この動画再生指標では、前週"欠測"の状態が発生していたと捉えています(上記リンク先参照)。ミュージックビデオやTHE FIRST TAKEは前週の段階で加算されるはずながら伸びが小さかったこと、また3月16日付グローバルチャートでも動画効果がみられなかったことが推測した理由です。そのグローバルチャートでの翌週の躍進(下記リンク先参照)も踏まえ、今回「Bling-Bang-Bang-Born」における欠測は解消されたものと考えます。

(ただ当週のチャートにおいて、Ado「唱」では2週連続で動画再生指標の欠測が発生しています。この指標はISRC(国際標準レコーディングコード)が付番された動画がカウント対象となりますが、歌手側がこのコードを途中で削除するとは考えにくいのです。YouTube側のシステム問題の可能性も視野に入れ、ビルボードジャパンは歌手側のみならずYouTubeに対しても働きかけるべきと考えます。)

 

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は今回、カラオケ指標も初制覇。ソングチャート構成6指標のうち最も動きが小さいこの指標では2023年度以降、優里「ドライフラワー」、back number「クリスマスソング」、Ado「新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)」、Vaundy「怪獣の花唄」、YOASOBI「アイドル」の5曲のみが首位に到達し、人気曲で固定される傾向にあります。

その中で、この指標で強いとは言い難いヒップホップジャンルの曲が首位を獲得したことの意味は大きいでしょう。このブログでは以前、YOASOBI「アイドル」やAdo「唱」においてカラオケやTikTok(TikTok Weekly Top 20)、UGC(Top User Generated Songs)といった"活用"を示すチャートでのヒットが社会的人気につながると記しましたが、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」は双方のチャートにて今回8連覇を達成しています。

 

さらに、ストリーミング指標の前週比にも注目です。

ストリーミング指標は大ヒット曲、ロングヒット曲に欠かせない指標であり、ポイント全体の過半数を占めます。曲は気になるが歌手のファンというわけではないライト層の人気を特に可視化したこの指標は、(LINE MUSIC再生キャンペーン等を行わない限り)乱高下が小さいという特徴があるのですが、指標の基となる再生回数は前週比117.0%と大きく伸びていることが解ります。

これは、特にTHE FIRST TAKE公開の影響に伴いサブスク、またYouTubeのオーディオストリーミングにて聴取した方が増えたため。ダウンロード指標は主にテレビパフォーマンス直後に増える傾向にあり、「Bling-Bang-Bang-Born」は前週の動画公開や二度のテレビパフォーマンスに伴う上昇の反動が今回表れていますが(それでも前週比95.6%という数値は高いと考えます)、ストリーミング効果はより長く持続したといえるでしょう。

 

 

ラジオを除く加算対象の4指標をすべて制し、そして最もランクダウンが速いラジオにおいてもトップ10返り咲きを果たしたCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。当週における2万3千ポイント超えは驚異的ながら、動画の影響を踏まえれば必然の結果なのです。

 

 

次週はポイントの推移に注目。Creepy Nutsは3月20日にフィジカルシングルをリリースしていますが、フィジカルセールス指標は「Bling-Bang-Bang-Born」ではなく、1曲目に収録の「二度寝」に加点されることとなります。また動画の影響力は弱まっていくことが予想されますが、次週の集計期間は平日が4日、祝日はストリーミングが伸びる傾向にあることを踏まえればポイント上昇の可能性も考えられます。