4月から毎週日曜17時にお送りしているStationheadの番組、『imaoto on the Radio』。昨日は7回目の配信でした。お聴きくださった皆さんに感謝申し上げます。アーカイブおよび選曲リストはこちら。
Stationhead『imaoto on the Radio』、第7回のアーカイブが公開されました。よろしければ是非お聴きください。#イマオトラジオhttps://t.co/CAjNRyJ6rR
— Kei (ブログ【イマオト】/ポッドキャスト/ラジオ経験者) (@Kei_radio) 2024年5月26日
最新曲や直近の音楽業界のトピック、最新チャートランクイン曲そして色褪せることのない名曲等、"好い曲推し"をテーマにお届けする1時間の配信番組では、主に新曲を軸としたプレイリスト企画も用意しています。昨日は以下の曲を踏まえ、特集を組んだ次第。今回のエントリーでは、番組内で紹介した内容をより詳しくお届けします。
5月21日にリリースされたマニー・ロング & マライア・キャリー「Made For Me」は、元々マニーが昨年9月にリリースしたシングルのリミックス版。オリジナルバージョンは米ビルボードソングチャートでこの春、最高20位を記録しています。
マニー・ロングの”Made For Me”も年を跨いで人気を集め、Billboard Hot 100で遂に(先週に続き)20位。あの“Hrs & Hrs”に続いて再び“現象”を起こすマニーの勢いと、JD、BMコックス、ジョーダンXLのセンス。マライア・キャリー“We Belong Together”の再来感もある名曲https://t.co/XCp9sWVQl4
— Tsuyoshi Hayashi/林 剛 (@hystys) 2024年3月16日
音楽評論家の林剛さんによるポストにもあるように、「Made For Me」はJDことジャーメイン・デュプリ、そしてBMコックスことブライアン・マイケル・コックスがプロデュースおよびソングライトに関与。デュプリはマライア・キャリーの大ヒット曲「We Belong Together」(2005)も手掛け、また「Made For Me」マニーの歌声(特にサビの部分)がマライアを想起させることもあり、今回のマライア参加に強く納得しています。
マニー・ロングは歌手活動の前から、プリシア・レネイ名義でリアーナ「California King Bed」(2010)やフィフス・ハーモニー feat. キッド・インク「Worth It」(2015)等のシングル曲も含むソングライトを担当し、マライア・キャリーにも関与。ソニーミュージックに戻っての一作目にしてベストアルバムである『#1 To Infinity』(2015)に収められた唯一の新曲で、マニーはマライアとコライトしています。
マニー・ロングはマライア・キャリー「A No No」(アルバム『Caution』(2018)収録)にも関わっており、今回は歌手としてマライアからの援護を受けた形。既にマニーは「Hrs & Hrs」(2021)にて昨年のグラミー賞で最優秀R&Bパフォーマンス賞に輝き、R&B界でその名を轟かせていますが(また自身も同年最優秀新人賞候補に)、マライア参加版の「Made For Me」がヒットすればマニーの認知度はさらに高まることでしょう。
ちなみに、「Hrs & Hrs」ではアッシャーを迎えたリミックス版(2023)も登場。R&Bではエポックメイキングな作品が登場すると、その流れを踏襲したと思しき曲が出てくる傾向にあります。先述した林剛さんによる下記ポストを踏まえれば、マニー・ロングは「Made For Me」そして「Hrs & Hrs」で既にR&B界を大きく変えたと言っても過言ではないはずです。
本日リリースのR&B新曲で既に何度もリピートしているケヴィン・ロスとリリー・マッシーの“Teach Me”...マニー・ロング”Hrs & Hrs”以降とでも言うべきスロウ・ジャム。インスタント・クラシック! プロデュースはWhtnoize(Derrick White)https://t.co/oZwp7j4mmX
— Tsuyoshi Hayashi/林 剛 (@hystys) 2024年5月3日
無論マニー・ロングも素晴らしいながら、マライア・キャリーもこの10年近くで再評価が高まっている印象があります。とりわけチャート面において、「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」が2019年のシーズン以降現在まで通算14週首位の座に就いているのです。
日本ではフィジカルシングルとしてミリオンセールスを記録したこの曲ですが、米ではアルバム『Merry Christmas』(1994)のリード曲としてフィジカルはリリースされず。当時の米ビルボードはフィジカルリリース曲のみをソングチャートに反映させたチャートポリシー(集計方法)だったため、リリース当初はチャートインできませんでした。その後チャートポリシーの変革に伴い、旧曲等がフックアップされていくことになります。
さらにマライア・キャリーにとって追い風になったのは、現在のヒット曲が様々な年代の流行を踏襲しているということ。それに伴い、2年前にはラトー「Big Energy」にDJキャレド共々招かれています(歌手名表記はラトー & マライア・キャリー feat. DJキャレド、となります)。
オリジナルはラトー単独によるバージョンですが(米最高3位)、リミックスバージョン共々トム・トム・クラブ「Genius Of Love (邦題:悪魔のラヴ・ソング)」をサンプリングで使用。同曲を敷いた「Fantasy」(1995)を大ヒットさせたマライア・キャリーを招くのは自然といえます。
米ビルボードソングチャートではオリジナルとリミックスバージョンは合算されるものの、獲得ポイントにおいてリミックスがマジョリティにならなければ歌手名表記はオリジナルバージョンのままとなります。最終的に「Big Energy」ではマライア・キャリー参加版が多数派にはなりませんでしたが、ラトーのフックアップに貢献したといえるでしょう。ラトーは翌年、ジョングクの大ヒットシングル「Seven」に参加しています。
ラトーに招かれながら、いわばラトーをフックアップした形となったマライア・キャリーの功績は、「Made For Me」への参加に伴うマニー・ロングの認知拡大にも活きると捉えています。マライアはその役割を十分解っていて、今回の「Made For Me」リミックスで助演したものと推測しています。
ちなみに、今年のグラミー賞ではR&Bジャンルでシザが3部門を受賞。そのうち最優秀R&B楽曲賞に輝いた「Snooze」(2022)にはプロデューサー/ソングライター/歌手のベイビーフェイスが関与しています。これまで大ヒット曲を多数輩出したベイビーフェイスならではの美しいメロディとアコースティックを基調とした作品は、米ビルボードソングチャートでも最高2位を記録する大ヒット曲となりました。
そのベイビーフェイスによる近年の作品のひとつが、King & Prince「Namae Oshiete」(2021)。先週King & Princeが新曲およびベストアルバム『Mr.5』(2023)をデジタル解禁したことで、この曲を含めスムーズに聴取できる環境が整いました。今回の特集でR&Bが気になった方には是非チェックしてほしいと願います。また、Number_iのR&B曲「Blow Your Cover」(2024)は、この曲の延長線上にある作品といえるかもしれません。
昨日の『imaoto on the Radio』特集企画、拡大版のプレイリストはこちらに。是非チェックしてください。