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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Snow Manの新曲「SERIOUS」におけるプロモーションカレンダーの登場に注目する

7月23日に今年初のフィジカルシングル「SERIOUS」をリリースするSnow Manが、昨日プロモーションカレンダーを公開。この登場を興味深く感じています。

Snow Man「SERIOUS」は6月中旬にミュージックビデオを公開済であり、6月18日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは動画再生指標のみで78位に初登場を果たしています。このチャートインは、Snow Manの新曲をいち早くチェックする方が如何に多いかを示しているといえるでしょう。

 

 

今回のプロモーションカレンダー登場からは、次の2点を想起した次第です。

 

Snow Man「SERIOUS」のプロモーションカレンダーからまず思い出したのが、リリーススケジュールをひとつの画像にまとめて紹介するコンテンツカレンダー。K-POP歌手が主に採用し、デザインも工夫されています。このカレンダーがコアファン各自(もしくは音楽チャートでの好アクションを目指すファンダム)の接触/所有行動の徹底につながり、K-POP歌手の作品がグローバルヒットに至りやすくなったと捉えています。

上記ではITZYの事例を挙げていますが、このコンテンツカレンダーを日本で徹底しているのがMrs. GREEN APPLE。メディア露出の多さやその出演ジャンルを良い意味で選ばない姿勢(バラエティ番組にも積極的に登場)等がMrs. GREEN APPLEをいわばお茶の間の歌手にしたと捉えていますが、彼らは新曲登場の度にきちんとコンテンツカレンダーを用意することが特徴であり、この施策もチャート常連の一因といえるでしょう。

 

Snow Man「SERIOUS」のプロモーションカレンダーから想起したこと、もうひとつはアドベントカレンダーです。アドベントカレンダーとはクリスマスまでの日数(カウントダウン)を楽しむためのものであり、その日の部分を開けると菓子が出てくるタイプのものもあります。

アドベントカレンダーの成功例として真っ先に想起したのが、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)」。クリスマスアルバム『Merry Christmas』に収録されたこの曲は日本でフィジカルシングル化され、ドラマタイアップも相まってミリオンセラーを記録。しかし米ではフィジカル化されず、(当時フィジカル化がランクインの条件だった)米ソングチャートには登場しませんでした。

デジタルの興隆に伴い季節を彩る曲がチャートを賑わすようになった2010年代、「All I Want For Christmas Is You」のチャートでの存在感は高まっていきました。そして『Merry Christmas』が発売から四半世紀を迎えた2019年、マライア・キャリーアドベントカレンダー的な施策をホームページで展開したことで(東京ドーム公演の映像等を公開)、この曲は同年初めて米ビルボードソングチャートを制しています。

 

コンテンツカレンダーもアドベントカレンダーもさほど変わらないかもしれませんが、毎日何かしらのイベントを用意するという点において、Snow Man「SERIOUS」におけるプロモーションカレンダーは後者の特徴も有していると捉えています。

 

 

さて、Snow Man「SERIOUS」のプロモーションカレンダーには気になる点も。それが”プロモーション”という表現です。無論コンテンツカレンダーもアドベントカレンダーもプロモーションの一環だと言われればそれまでですが、Snow Man「SERIOUS」においてはフィジカルセールスの増強を強く意識しているのではないかということを、この表現の使用、そして下記曲の動画タイトルから感じています。

この曲のYouTube動画タイトルには”Promotion Edit”と記されており、他のハロー!プロジェクト所属歌手作品にもみられる傾向です。サブスク未解禁同様、ハロー!プロジェクトのフィジカルセールス優先という姿勢を示すといえるかもしれません。

デジタル、特に接触指標群の支持がロングヒットの要となるビルボードジャパンソングチャートにおいて、つばきファクトリー「My Days for You」は6月11日公開分で4位に初登場した翌週、100位未満へと急落しています。フィジカルに重きを置くことは解れど、デジタル接触手段が乏しいことは見つかりにくさにつながり、コアファンに昇華可能なライト層を作りづらくしているといえるでしょう。

一方でSnow Man「SERIOUS」においては、現時点でデジタルリリースするかどうかはアナウンスされていません。ただ、STARTO ENTERTAINMENT所属歌手作品のミュージックビデオ公開時に散見される”YouTube Ver.”(主にショートバージョンを示す表現)は「SERIOUS」も含む近年の作品にて使われておらず、Snow Manがデジタルに明るい姿勢であることを示しているのではと感じています。

 

 

2024年度のビルボードジャパンソングチャートにおいて初週フィジカルセールスが唯一ミリオンを達成したSnow Manが、「SERIOUS」のフィジカルリリース時までにデジタル(特にサブスク)を解禁すれば同曲にロングヒットする可能性も生まれ、2025年度のソングチャートで存在感を高められるのではというのが音楽チャート分析者としての見方です。

「SERIOUS」のフィジカルリリース週には、映画『劇場版「鬼滅の刃」 無限城編 第一章 猗窩座再来』の主題歌であるAimer「太陽が昇らない世界」およびLiSA「残酷な夜に輝け」もフィジカルが発売され、2曲とも前週土曜にデジタルが解禁されます。『鬼滅の刃』関連曲の強さを踏まえれば(上記リンク先参照)、「SERIOUS」がフィジカルセールス指標初加算週に首位安泰と断言するのは難しく、やはりデジタル解禁が鍵と考えます。