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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日本のSpotifyで新記録樹立のCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」、今後の動向予想および提案

通常は火曜に米ビルボードソングチャートおよび米ビルボードによるグローバルチャートの速報を紹介するのですが、現地時間の2月19日月曜が祝日により公開が延期となったため、ブログでの紹介も明日となります。ご了承ください。

 

 

さて、ビルボードジャパンソングチャートを構成する6つの指標のうち、上位進出のみならずロングヒット、そして年間チャートランクインに最も欠かせないのはストリーミング指標です。この指標のデータ提供元のひとつで再生回数全体のおよそ2割を占めるSpotifyにおいて、新記録が生まれました。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の強さについては先月末に一度紹介しています(Spotifyデイリー56万回超えのCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」を大ヒット曲と比較する(1月31日付)参照)。その際のデータをアップデートし、今回あらためて紹介します。

 

Spotifyのみならず広く社会的に大ヒットした米津玄師「KICK BACK」、Official髭男dism「Subtitle」、YOASOBI「アイドル」およびAdo「唱」と今回のCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」を比較すると、「Bling-Bang-Bang-Born」はさらに数値を伸ばせるのではと感じています。

根拠と考えるのが、「Bling-Bang-Bang-Born」のピークの遅さ、そして再生回数前週同曜日比です。Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」が前週同曜日の再生回数を初めて割り込んだのは2月17日土曜であり、それまで上昇を続けたことになります。ちなみにAdo「唱」は登場7週目以降この数値が伸びていくのですが、これは同曲がハロウィン(ハロウィーン)のタイアップ作品であり、ハロウィンの時期が近づいてきたためです。

TikTokそしてUGC(”踊ってみた”に代表されるユーザー生成コンテンツ)のチャートでも「Bling-Bang-Bang-Born」は3連覇中、またカラオケも上昇しており、”活用”の側面からも同曲のヒットはしばらく続くと思われます。加えて、日本のSpotifyで最高再生回数を更新した日は2月21日公開分ビルボードジャパンソングチャートの集計期間最終日に該当し、ポイントをさらに伸ばして総合4連覇を達成することも考えられます。

 

なお、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の強さについては、CINRAにおけるSpotify Japanの芦澤紀子さんとの対談企画にて取り上げられています。インタビューを担当した金子厚武さんによる発言を以下に紹介します。

近年日本発のグローバルヒットが徐々に出始めて、いろんな事例が積み重なってきて、海外でヒットするための公式みたいなものが見えてきた感じがしますよね。以前から強いのはやはりアニメ、最近はTikTokでのダンスチャレンジ、あとはY2K的な文脈のダンスミュージックとか、それが全部1曲のなかに詰まっていて、だからこそのこの爆発っていうのはきっとあるだろうなって。

 

 

では今後、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」がSpotifyでの自らの記録を更新し、ビルボードジャパンによる総合ソングチャートで首位を維持するためには何が必要でしょう。個人的には、この曲がふたつの手段を経て広まることが重要だと捉えています。

ひとつはテレビ露出。Creepy Nutsは2月10日に『Venue101』(NHK総合)、そして2月26日には『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)に出演しますが、披露されるのは「二度寝」であり、「Bling-Bang-Bang-Born」ではありません。音楽番組は音楽ファンの熱量が強く、SNSでトレンド入りする可能性が高いことを踏まえれば、「Bling-Bang-Bang-Born」の披露によりライト層を惹き付け、グレー層への認知も広まるでしょう。

またCreepy Nutsは昨夜ラジオに出演。昨日深夜放送予定だった『Adoのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)がAdoさんの体調不良を理由に放送されず、急遽その枠で『Creepy Nutsオールナイトニッポン』が放送されています。ラジオ(特に”オールナイトニッポン”ブランド)についての注目度がこの数日で高まっていることもあり、番組を機にCreepy Nutsを聴くという方も増えるかもしれません。

 

そして、動画公開を機に広めていくことも重要です。TikTokUGCからつなげるという導線確保の意味でも、公式動画は必要です。しかしCreepy Nutsは「Bling-Bang-Bang-Born」の公式動画を未だ用意していません。

タイアップ先のテレビアニメ『マッシュル-MASHLE-』(TOKYO MXほか)によるノンクレジットオープニングムービーは、どんなに人気でもテレビ制作会社側の公式YouTubeチャンネル発である以上、チャート面では加点されません(この点は下記ポスト内リンク先で紹介しています)。

ならばミュージックビデオや公式オーディオの用意が必要と考えるのですが、昨夜の『Creepy Nutsオールナイトニッポン』放送を機に、実際はミュージックビデオを制作していないのではないかというリアクションが複数登場しています(元の発言に対する反応はこちら等で確認できます)。その点について真面目に返すのはDJ松永さんの術中にはまっている感は否めないとして、しかし以下のように問題提起した次第です。

 

ともすればCreepy Nuts側は「Bling-Bang-Bang-Born」の公式動画を用意しているかもしれず、昨夜のラジオでの発言ははぐらかしなのかもしれませんが、その対応は格好良いとは思えません。なぜなら海外の歌手は、チャート上位進出に意欲的であるからです。

海外の歌手は上位進出に喜びの声を発する方が多く、最近では「Hiss」が複数バージョンの用意等施策の効果も相まって米ソングチャートを制したミーガン・ザ・スタリオンが感謝のポストを掲載しています。2月10日付チャートは下記にて紹介しています。

ミーガン・ザ・スタリオン「Hiss」はニッキー・ミナージュ等へのディスソングですが、そのようなタイプの作品でも施策を用意し、また首位獲得時には喜びの声を発信することに、海外において音楽チャートでの上位進出がステータスであることがよく解るでしょう(ただし「Hiss」は翌週急落してしまうのですが)。音楽チャートが全てではないと考える方もいらっしゃるでしょうが、海外では重要な権威といえるのです。

ならば日本の歌手も、音楽チャートでの上位進出に意欲的に、貪欲に成ることが必要だと強く思います。海外は勿論のこと、日本においても人気の作品がきちんと上位で安定した成績を収めるようになった現在の音楽チャートは社会的ヒット曲の鑑と断言可能です。動画をきちんと用意しより盤石な体制を敷くことを逡巡したり、はぐらかしている場合ではないでしょう。