イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【海外ビルボード】JIMIN「Like Crazy」、BTSメンバーのソロ曲で初となる米ソングチャート制覇

現地時間の4月3日月曜に発表された、最新4月8日付米ビルボードソングチャート(集計期間:3月24~30日)。BTSのJIMINによるソロ曲、「Like Crazy」が初登場で首位を獲得しました。

JIMIN「Like Crazy」は1958年8月にスタートした米ビルボードソングチャートで1148曲目となる首位獲得作品にして66曲目となる初登場での首位を記録。初登場首位獲得作品については下記記事にてリスト化されています。

JIMIN「Like Crazy」はストリーミングが1000万(同指標35位)、ダウンロードが254,000(同指標首位)、ラジオが64,000(同指標50位未満)を記録。「Like Crazy」は韓国語によるオリジナルバージョンおよび英語バージョンが3月24日にリリースされ、2日後には”Deep House”および”UK Garage”というふたつのリミックスに加えてオリジナルバージョンのインストゥルメンタル版がリリースされています。いずれもBTSのホームページ等にて69セント(0.69ドル)で安価販売され、またオリジナル版を収録したCDがBTSのホームページにて1.99ドルにて販売されています。これらはいずれもカウント対象となります。

「Like Crazy」がダウンロード指標で記録した254,000という記録は、テイラー・スウィフトが2022年11月19日付にて「Anti-Hero」で記録した328,000以来の高水準となります。なお「Anti-Hero」は同日付の集計期間中に7つのバージョン(リミックス)をリリースしています。

一方で「Like Crazy」は、2020年代に総合首位を獲得した作品の中でラジオ指標の数値が最も低くなっています。ラジオ局への積極的なプロモーションは行っていなかったものの、一部のラジオ局ではOAが行われていました。

 

JIMIN「Like Crazy」はBTSのメンバーによるソロ作品として初の首位を獲得。BTSとしてはこれまで6曲(「Dynamite」(2020年9月5日付以降 3週)、ジョーシュ・シックスエイトファイヴおよびジェイソン・デルーロとの「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」(2020年10月17日付 1週)、「Life Goes On」(2020年12月5日付 1週)、「Butter」(2021年6月5日付 10週)、「Permission To Dance」(2021年7月24日付 1週)、コールドプレイとの「My Universe」(2021年10月9日付 1週))が首位を獲得しています。

またJIMINはグループ、ソロとして双方で初登場での首位を獲得した最初の歌手となりました。なおトラヴィス・スコットはソロとして「Highest In The Room」(2019年10月)、そしてキッド・カディとのユニット”ザ・スコッツ”名義での「Franchise (feat. ヤング・サグ)」(2020年5月)として、双方で初登場首位を記録しています。

今回のグループおよびソロ双方での首位獲得は、初登場での首位という枠組みを除けばビヨンセ「Break My Soul」(2022年8月)以来となります。ビヨンセデスティニーズ・チャイルドとして4曲を首位に送り込んでいます。

 

韓国出身の歌手によるソロ作品での米ビルボードソングチャート制覇は初。これまでの最高位はPSY「Gangnam Style」における2位(2012 7週)でした。なお1963年に坂本九Sukiyaki (原題:上を向いて歩こう)」がアジア出身の歌手として初の首位を獲得(3週首位を達成)、また2010年には韓国系アメリカ人2名、フィリピン系アメリカ人、および日本と中国の血を引くアメリカ人の4名で構成されるファーイースト・ムーヴメントが「Like A G6」で首位を獲得しています。

 

BTSのソロ作品としてはJIMIN「Like Crazy」が首位のみならずトップ10、トップ20内エントリーとしても初となりました。またソロ曲でのトップ40ヒットは4曲目となり、うちJIMINが2曲を占めています。

BTSメンバーのソロ曲 米ビルボードソングチャートランクイン状況 (最高位順)>

・JIMIN「Like Crazy」 最高1位 (2023年4月8日付 初登場時)

チャーリー・プース feat. JUNG KOOK「Left And Right」 最高22位 (2022年7月9日付 初登場時)

・ジュース・ワールド & SUGA「Gil Of My Dreams」 最高29位 (2021年12月25日付 初登場時)

・JIMIN「Set Me Free Pt.2」 最高30位 (2023年4月1日付 初登場時)

・JIN「The Astronaut」 最高51位 (2022年11月12日付 初登場時)

・J-HOPE with J. コール「On The Street」 最高60位 (2023年3月18日付 初登場時)

・Agust D(SUGAのソロ名義)「Daechwita」 最高76位 (2020年6月6日付 初登場時)

・TAEYANG feat. JIMIN「Vibe」 最高76位 (2023年1月28日付 初登場時)

・V「Christmas Tree」 最高79位 (2022年1月8日付 初登場時)

・PSY feat. SUGA「That That」 最高80位 (2022年5月14日付 初登場時)

・J-HOPE feat. ベッキー・G「Chicken Noodle Soup」 最高81位 (2019年10月12日付 初登場時)

・J-HOPE「More」 最高82位 (2022年7月16日付 初登場時)

・RM with Youjeen「Wild Flower」 最高83位 (2022年12月17日付 初登場時)

・JUNG KOOK「Stay Alive」 最高95位 (2022年2月26日付 初登場時)

・J-HOPE「Arson」 最高96位 (2022年7月30日付 初登場時)

 

JIMIN「Like Crazy」ではJIMIN本人、そしてBTSのRMも7名のソングライターの中にクレジットされています。ソングライターとしてJIMINは初、そしてRMは「Life Goes On」「Butter」「My Universe」に続く4曲目の首位を獲得しました。

 

”Like”が付く曲の首位獲得はフォー・シーズンズ「Walk Like A Man」(1961)に始まり、今回が21曲目。最も新しいヒットはマルーン5 feat. カーディ・B「Girls Like You」(2018)となります。また”Crazy”についてはクイーン「Crazy Little Thing Called Love」(1980)、プリンス & ザ・レヴォリューション「Let's Go Crazy」(1984)、マドンナ「Crazy For You」(1985)、ファイン・ヤング・カニバルズ「She Drives Me Crazy」(1989)、ビヨンセ feat. ジェイ・Z「Crazy In Love」(2003)に続く6曲目の首位獲得曲となります。なおクレイジー・タウン(Crazy Town)「Butterfly」も2001年に首位に達しています。

 

通算8週首位を記録したマイリー・サイラス「Flowers」は2位に後退。ストリーミングは前週比7%ダウンの2290万(同指標4位)、ダウンロードは同10%ダウンの10,000(同指標2位)、ラジオは同1%ダウンの1億690万(同指標7週目の首位)を記録しています。

モーガン・ウォレン「Last Night」は総合で2→3位へ。ストリーミングは前週とほぼ変わらず3580万を記録し、同指標4週目の首位を記録しています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (初登場) JIMIN「Like Crazy」

2位 (1位) マイリー・サイラス「Flowers」

3位 (2位) モーガン・ウォレン「Last Night」

4位 (3位) シザ「Kill Bill

5位 (4位) メトロ・ブーミン、ザ・ウィークエンド & 21サヴェージ「Creepin'」

6位 (5位) ザ・ウィークエンド & アリアナ・グランデ「Die For You」

7位 (6位) ピンクパンサレス & アイス・スパイス「Boy's A Liar Pt.2」

8位 (8位) レマ & セレーナ・ゴメス「Calm Down」

9位 (7位) テイラー・スウィフトAnti-Hero

10位 (9位) コイ・リレイ「Players」

 

 

ビルボードが一昨年新設したグローバルチャートもチェック。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート、4月8日付ではGlobal 200、Global Excl. U.S.共にマイリー・サイラス「Flowers」が通算10週目となる首位を獲得しました。

マイリー・サイラス「Flowers」はGlobal 200においてストリーミングが前週比11%ダウンの8770万、ダウンロードが同13%ダウンの22,000を、Global 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが前週比12%ダウンの6790万、ダウンロードが同13%ダウンの12,000を、それぞれ記録しています。

Global 200における10週以上の首位獲得は4曲目。ハリー・スタイルズ「As It Was」(2022 15週)、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」(2020-2023 13週)、ザ・キッド・ラロイ & ジャスティン・ビーバー「Stay」(2021 11週)に続く記録となります。またGlobal Excl. U.S.ではハリー・スタイルズ「As It Was」(2022 13週)に次ぐ2曲目の二桁首位達成曲となりました。

 

JIMIN「Like Crazy」がふたつのグローバルチャートで共に2位に初登場。Global 200ではストリーミング7120万およびダウンロード86,000、Global Excl. U.S.ではストリーミング6140万およびダウンロード48,000を、それぞれ記録しています。

「Like Crazy」はBTSメンバーのソロ曲としてGlobal 200における最高位を更新し、またJIMINはJUNG KOOKと並び複数のトップ10ヒットを輩出。なおJUNG KOOKは片方が客演名義であるため、2曲とも主演曲でのトップ10入りはJIMINが初となります。

BTSメンバーのソロ曲 Global 200におけるトップ10ヒット>

・PSY feat. SUGA「That That」(2022年5月 5位)

チャーリー・プース feat. JUNG KOOK「Left And Right」(2022年7月 5位)

・JIN「The Astronaut」(2022年11月 10位)

・JUNG KOOK「Dreamers (Music From The FIFA World Cup Qatar 2022)」(2022年12月 9位)

・JIMIN「Set Me Free Pt.2」(2023年4月 8位)

・JIMIN「Like Crazy」(2023年4月 2位)

またGlobal Excl. U.S.においても、「Like Crazy」はBTSメンバーのソロ曲として最高位タイに。加えてJIMINはJUNG KOOKと並び3曲のトップ10ヒットを輩出していますが、3曲いずれも主演曲でのトップ10入りはJIMINが初となります。

BTSメンバーのソロ曲 Global Excl. U.S.におけるトップ10ヒット>

・JUNG KOOK「Stay Alive」(2022年2月 8位)

・PSY feat. SUGA「That That」(2022年5月 2位)

チャーリー・プース feat. JUNG KOOK「Left And Right」(2022年7月 2位)

・JIN「The Astronaut」(2022年11月 6位)

・JUNG KOOK「Dreamers (Music From The FIFA World Cup Qatar 2022)」(2022年12月 4位)

・JIMIN「Vibe」(2023年1月 9位)

・JIMIN「Set Me Free Pt.2」(2023年4月 5位)

・JIMIN「Like Crazy」(2023年4月 2位)

 

ヤング・ルキャス(Yng Lvcas) & ペソ・プルマ(Peso Pluma)「La Bebe」がGlobal 200で21→7位に浮上。ストリーミングは前週比90%アップの6100万、ダウンロードは同66%アップの1,000を記録しています。またGlobal Excl. U.S.ではストリーミングが前週比87%アップの4750万となり、20→6位に上昇しました。元々はヤングがソロ名義で2021年12月にインディからリリースしていた作品ですが、3月17日にペソ参加版のリミックスがリリースされたことで上昇しています(いずれのバージョンも合算され、またペソ参加版の割合が高いことから双方のクレジットとなっています)。メキシコ出身の二組にとって、ふたつのチャートにおいて初のトップ10ヒットとなりました。

ロザリア & ラウ・アレハンドロ「Beso」がGlobal 200で10位、Global Excl. U.S.では7位に初登場。Global 200ではストリーミング5000万およびダウンロード3,000、Global Excl. U.S.ではストリーミング4110万およびダウンロード1,000を記録しています。スペイン出身のロザリア、プエルトリコ出身のラウ・アレハンドロ双方にとってGlobal 200で3曲目のトップ10ヒットとなり、またGlobal Excl. U.S.では前者が4曲目、後者が5曲目となります。

 

 

 

最後に。今回のブログエントリーをはじめ、米およびグローバルのソングチャート紹介の際はいずれも翻訳内容に私見を加えず紹介しています。ゆえに私見と強く前置きして以下の内容を記します。

 

BTSメンバーのソロ曲における米ビルボードソングチャートランクイン状況に関しては下記ブログエントリーの掲載内容を加工して用いています。ゆえに”初登場時”という記載があります。

加えてJIMIN「Like Crazy」の米ビルボードソングチャートにおける動向に関しては、昨日のブログエントリーにて注視が必要と記しました。チャート2週目の動向如何では米ビルボード側がチャートポリシー変更に動く可能性があるゆえ、特にコアファンの方々に読んでいただきたいと切に願います。

”特にコアファンの方々に”と記したのは、首位獲得という事実を喜ぶことは大事ながらも今後のチャートポリシー変更の可能性を客観的に、冷静に判断することが必要と考えるゆえです。米ビルボードソングチャート構成3指標のトップ5を紹介したツイートへのインプレッションの差からも、その思いを強く抱いています。