3月6~12日を集計期間とする最新3月15日公開分のビルボードジャパンソングチャートは、NiziU「Paradise」が首位を獲得しました。フィジカルセールスで3倍の売上を誇るなにわ男子「Special Kiss」を、総合で逆転した形です。
【ビルボード】NiziU「Paradise」、なにわ男子「Special Kiss」を抑え総合首位獲得 https://t.co/9l7xX1UPCh pic.twitter.com/4I4ewNO1Lx
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年3月15日
今回の逆転についてはビルボードジャパンの記事に詳しく記されていますが、サブスク再生回数等に基づくサブスクやダウンロードといったデジタルの充実が、NiziU「Paradise」がなにわ男子「Special Kiss」を破った要因であることは明らかでしょう。
加えてNiziUは最高4位にとどまった前作「Blue Moon」に対し、今作「Paradise」ではフィジカルセールスこそ減少したものの他指標が上回ったことでフィジカルセールス初加算週のポイントが7,857→11,456と大きく伸びたことも、首位獲得の大きな要因と言えます。指標構成等は下記CHART insightをご参照ください。
【ビルボードジャパンCHART insight 最新週トピック】
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年3月15日
最新ソングチャートを制した #NiziU「#Paradise」および2位初登場の #なにわ男子「#SpecialKiss」のチャート動向。共にフィジカルセールス指標初加算に伴い上昇しています。
CHART insightは下記リンクから確認可能です。https://t.co/NVZ8bHjac1 pic.twitter.com/eW4EwUyz4Q
NiziU「Paradise」が総合で逆転したその原因は、デジタルの充実に伴い導線を太くしたことにあると考えます。
NiziU「Paradise」は『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』の、なにわ男子「Special Kiss」はメンバーの高橋恭平さんが主演を務めた映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』の主題歌。共に3月3日に公開され、映画興行収入ランキングでは前者が2週連続首位、後者が2→3位と好調に推移しています。
観客は映画を観た後、一緒に観た方と話し合う、パンフレットを購入する、レビューを書き込む等の余韻行動を採ります。その際、主題歌や挿入歌を購入したり接触する方は少なくないはずです。そこでデジタルに解禁している曲とされていない曲とで、余韻行動に差が生まれるのは自然なことでしょう。
導線は本来電線を指す言葉ですが、小売業やIT業界では客を導く流れという意味で用います。デジタル解禁/未解禁の差は映画の余韻、また映画を観に行こうという動機付けにおいても、導線を太くできるか否かの差につながったのではないでしょうか。映画の人気や評判も影響しますが、今週のチャートでは導線の重要性を示した作品が別途登場します。
4位は、Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が10位からジャンプアップ。週間ダウンロード数を約4倍増やし、7週ぶりにトップ5入りを果たした。ジャンプアップの要因は、『ONE PIECE FILM RED』が3月8日より、PrimeVideoで配信されたことによるもの。CD売上も増加しており、引き続きチャートアクションに期待したい。
【ビルボード】幾田りら『Sketch』、初のDLアルバム首位 PrimeVideoで配信スタートの『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が再浮上 https://t.co/ZGBU4B2uPV pic.twitter.com/Wt1IDSYqiQ
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2023年3月15日
Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』は総合アルバムチャートでも上昇しています。
【ビルボードジャパンCHART insight 最新週トピック】
— Kei (ブログ【イマオト】/ラジオ/ポッドキャスター) (@Kei_radio) 2023年3月15日
最新3月15日公開分のアルバムチャート、#Ado『#ウタの歌 #ONEPIECEFILMRED』が22→14位に浮上。ダウンロードは前週のおよそ4倍となり、”導線を太くした”結果といえます(詳しくは本日の #イマオト にて)。
CHART insight→https://t.co/KksSqC11bB pic.twitter.com/WpTrG58ANu
今回の上昇は集計期間中にAmazon Prime Videoで配信開始された影響ですが、このアルバムは初週においてダウンロードが2022年度週間最大となる3万超えを記録し、フィジカルで3万枚差をつけられたB'z『Highway X』を総合チャートにて逆転しています。
B'zがアルバムのデジタル解禁を遅らせたことも逆転の一因ですが、『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』が初登場で首位を獲得したのと同じ2022年8月17日公開分のビルボードジャパンソングチャートでは収録曲がトップ3を独占する快挙を達成。この3曲は映画公開前から解禁されていましたが、映画公開に伴い上昇した形です。
映画観賞(鑑賞)後の行動は、その視聴元が映画館や配信のみならずテレビ放映であってもみられます。下記は一昨年6月、地上波で『ボヘミアン・ラプソディ』が放送されたことに伴うチャート上昇を紹介したブログエントリーですが、その結果を踏まえて以下のように記しました。
メディアに触発されたユーザーの行動については、現在は所有指標が強くとも今後接触指標に移行する可能性が考えられるのですが、これらについては今週ビルボードジャパンが配信したポッドキャストにて言及されています。
メディアに触発されたユーザーの行動がフィジカルよりダウンロードに、そして今後は接触指標に移行するだろう点においても、デジタルに明るくない作品や歌手はチャート上で成果を上げることがより難しくなるかもしれません。
ユーザーの行動はフィジカルにも及びますが、デジタルはより大きく拡がります。『デジタル未解禁は、タイムラグなく即座に購入や聴取したいという方の取りこぼしにつながりかねません。仮にデジタル解禁が十分行われていたならばチャートアクションがより大きくなったのではないかと思うに、デジタルを解禁しない作品のチャートの動きには限界があると考えることもまた可能なのです』とこのブログエントリーで記しましたが、今回のなにわ男子「Special Kiss」にも当てはまると実感します。
一方でNiziU「Paradise」は、日本でチャートヒットしやすいアニメ作品の主題歌であることも大きいかもしれませんが、フィジカルの前週、すなわち映画公開日にデジタル先行リリースしたことも功を奏したと言えます。次週以降の動向をみて、真の社会的ヒットと成るか注目していきましょう。