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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

日米ビルボードのトップアーティストチャート首位獲得歌手の状況を踏まえ、チャートポリシー変更を提案する

ビルボードジャパンによる最新3月15日公開分トップアーティストチャート(Artist 100)はNMB48が制しました。

上記はトップアーティストチャートにおけるNMB48のCHART insight(直近の60週分を表示)。NMB48は昨年12月21日公開分以来となる300位以内登場にして首位到達を果たしましたが、他の歌手とは指標構成が大きく異なります。

トップアーティストチャートはソングチャートとアルバムチャートを合算したもので、最新3月15日公開分ソングチャートで「Paradise」が首位を獲得したNiziUがトップアーティストチャートで8位、「Special Kiss」が2位となったなにわ男子が同じく12位に入っています。一方、NMB48は『NMB13』が最新アルバムチャートを制しています。

『NMB13』の売上枚数はフィジカルセールスが143,660枚(同指標首位)の一方、ダウンロードが116DL(同指標32位)と大きく異なります。他方ソングチャートにおけるフィジカルセールスはNiziU「Paradise」が168,938枚(同指標2位)、なにわ男子「Special Kiss」は512,690枚(同指標首位)となり、特にNiziUは他指標も獲得しているものの、トップアーティストチャートではNMB48が勝ったという状況です。

ソングチャートでは週間5万枚を超えるフィジカルセールスに係数処理が行われる一方でアルバムチャートには係数処理が存在しないため、ふたつのチャートを合算した際にNMB48が首位に立てたと考えます。アルバムチャートは所有以外の指標が存在しないことも係数処理を設けない理由と言えますが、しかしながら次週以降NMB48が急落するならば、現在のトップアーティストチャートの集計方法に疑問を抱く自分がいます。

 

ビルボードにも歌手別チャートであるArtist 100が存在します。このチャートでは最新3月18日付にて、モーガン・ウォレンが連覇を達成しました。

モーガン・ウォレンはソングチャート(「Last Night」)、アルバムチャート(『One Thing At A Time』)およびトップアーティストチャートを同時に制し、歴代14組目、カントリーをメインとする歌手では初となる快挙を達成しています。これは最新チャートにおいて『One Thing At A Time』が今年最大のユニット数を記録しアルバムチャートで首位初登場を果たしたことが大きく、ソングチャートにも波及しています。

ビルボードにおけるトップアーティストチャートもソングチャートやアルバムチャートを基礎としており、モーガン・ウォレンの首位は自然と言えます。そんな中、米ビルボードは本日興味深い分析を発表しました。いわば”自問自答”的な内容です。

ストリーミングが普及したことでシングルリリースが増えた一方、モーガン・ウォレン『One Thing At A Time』(36曲収録)のような長尺アルバムがリリースされる傾向にあるという矛盾を紹介したこの記事では、後者において米ビルボードアルバムチャートにおけるストリーミングの重要度が高まったことが理由のひとつと記しています。これによりアルバム収録曲数が増える現象は”トラック・クリープ”と名付けられています。

モーガン・ウォレン『One Thing At A Time』においては8曲もの先行リリースが用意されていたこともアルバムが大ヒットした要因と言えます。しかしながら米ビルボードアルバムチャートのカウント対象であるストリーミングのユニット換算分において、アルバムの収録曲数にかかわらず同じ数で再生回数を割るというチャートポリシーが長尺作品をより優位にしていると考えます(この違和感は以前からブログで指摘しています)。

モーガン・ウォレンはアルバム初登場の前週にもトップアーティストチャートを制していますが、アルバムのリード曲が多いのみならず前作『Dangerous: The Double Album』が俄然好調なことも影響したと考えます。この『Dangerous: The Double Album』は元来30曲入りだったものがデラックスエディションリリースにより33曲入りとなり、最終的に2021年度の年間アルバムチャートを制しています。

 

 

最新の日米ビルボードにおけるトップアーティストチャートは共にアルバムチャートを制した歌手がトップに立っていますが、アルバムチャートのチャートポリシー、特にストリーミングを組み入れているかどうかで納得度は異なるかもしれません。

ビルボードにおいてもアルバムチャートのチャートポリシー変更は必要と考えますが、仮に次週ビルボードジャパンのトップアーティストチャートにおいてNMB48が急落するならば、ビルボードジャパンにはトップアーティストチャートにおけるソングチャートとアルバムチャートのバランスを検討する必要があるでしょう。そして米ビルボードアルバムチャートのようにストリーミング再生回数のアルバム換算分(ただし分母は各作品の収録曲数とする)をひとつの指標として加えることも、今一度提案します。

アルバムチャートに接触指標であるストリーミングを導入することに違和感を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、先述したようにルックアップが接触指標の側面も持ち合わせている以上は特段問題ないものと考えます。そして現状のアルバムチャートにおける『ソングスチャートでヒットした曲を収録した作品が上位に届きにくい構造』や『フィジカルセールス優先のためのデジタル後発施策』を減らす意味でも、ストリーミング指標導入の前向きな検討を願います

 

なお、ビルボードジャパンのトップアーティストチャート、CHART insightはこちらから確認できます。