昨日はコラボスペース【ジャニーズ&ボーイズグループから見る2022年音楽シーン】を開催しました。お聴きくださった皆さんに感謝申し上げます。生配信直前にTwitterの音声配信機能(スペース)が使えないというトラブルに見舞われたため、急遽ツイキャスでの配信となったことをご了承ください。
本日ツイキャスで配信したコラボスペース #2022音楽シーン のアーカイブです。是非チェックしてみてください。https://t.co/gTVYU5XlYE https://t.co/WVNaPCPwhA
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月16日
次回もRYO@音楽ブログさんと再びタッグを組み、今年1月に開催した日本版グラミー賞を想起する企画を再び実施しますので是非お聴きください。1月13日(金曜)夜の配信予定です。
さて今回は、昨日のスペースでお伝えした内容のうち、音楽チャートについての課題や提案について記載します。参考資料として、昨日アップした内容はこちらに。
なおスペースではRYO@音楽ブログさんにお勧め曲を紹介していただきましたが、自分の男性アイドルやダンスボーカルグループお勧め曲は12月19日月曜に公開予定の私的邦楽年間ベストソングスに選出しているかもしれません。私的ベスト、チェックしていただけるならば嬉しいです。
まずは2022年度ビルボードジャパン年間ソングチャートにおける男性アイドルおよびダンスボーカルグループの作品をまとめます。
・2022年度ビルボードジャパン年間ソングチャート12位 BTS「Butter」
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#BTS「#Butter」(デジタルシングル)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月13日
最高6位 (2021年12月8日公開分 2022年度において)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/rYy2qqJp00
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/NEzU74XqsU
・年間14位 BTS「Dynamite」
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#BTS「#Dynamite」(デジタルシングル)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月13日
最高13位 (2021年12月8日公開分 2022年度において)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/6eTX9rHVDq
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/OwkSg9OmNg
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#Da_iCE『#CITRUS』(シングル 2021年度以前リリース)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月14日
最高7位 (1月5日公開分 2022年度において)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/dFB5AEfYht
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/ARmubSvcMU
・年間23位 BTS「Permission To Dance」
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#BTS「#PermissionToDance」(デジタルシングル)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月13日
最高18位 (2021年12月8日・12月22日公開分 2022年度において)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/DxgFVOSLd3
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/z8lrg1Jc9u
・年間29位 BE:FIRST「Bye-Good-Bye」
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#BEFIRST「#ByeGoodBye」(シングル)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月13日
最高1位 (3月16日公開分)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/tHZP6W2NA4
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/N1zxQvy0Nu
・年間57位 INI「CALL 119」
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#INI「#CALL119」(シングル)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月12日
最高1位 (4月27日公開分)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/dx1vL88pPw
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/R5WpDUxcNY
・年間61位 DISH//「猫」
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#DISH//『#猫』(シングルc/w 2021年度以前リリース)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月14日
最高30位 (1月12日公開分 2022年度において)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/8IYw7uAAqk
(CHART insightは2023年度2週目まで表示。) pic.twitter.com/UjbXdZq7xq
・年間79位 なにわ男子「初心LOVE」
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#なにわ男子「#初心LOVE」(シングル 2021年度リリース)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月12日
2022年度期間内最高15位 (2021年12月8日公開分)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/H3IG6GbrCx
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/KOyGFzLy3w
【男性アイドル/男性ダンスボーカルグループ CHART insight】#SnowMan「#ブラザービート」(シングル)
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月12日
最高1位 (4月6日公開分)
最終ランクイン 11月30日公開分 (2022年度において)https://t.co/87Tnz9Uv2I
(CHART insightは2023年度初週まで表示。) pic.twitter.com/ucZzeHVasC
2022年度年間ソングチャートにおいてはBTSの英語詞3曲、Da-iCE「CITRUS」およびDISH//「猫」が前年度よりヒットを続けており、いずれもストリーミングや動画再生といった接触指標群、ならびにカラオケ指標が好調を維持した結果年間100位以内エントリーに至っています。そこでこれらを除く、2022年度年間ソングチャートで初めて100位以内エントリーを果たした4曲のヒットの要因をみてみます。
BE:FIRST「Bye-Good-Bye」およびINI「CALL 119」においては総合ソングチャートで二度のピークが誕生。これはデジタル加算のタイミング、そしてフィジカル加算のタイミングで生まれたものであり、前者においてはLINE MUSIC再生キャンペーン(再生回数キャンペーン)に伴うストリーミングヒットも影響しています。
ストリーミング週間再生回数では「Bye-Good-Bye」が1354万回、「CALL 119」が1031万回を記録した一方で、LINE MUSIC以外のサブスクサービスではヒットしたとは言い難い状況です。1千万回超えを果たした週での再生回数全体に占めるSpotifyの割合は前者が4.1%、後者についてはデイリー200位以内に入らない日があったために計測不能となっていました。この割合は15~20%の範囲になることが一般的です。
LINE MUSICキャンペーン終了後にストリーミング指標が早期に下降してしまったのは他のサブスクサービスでの支持を得られていないため。ストリーミング指標がロングヒットの要となる中での今回の状況は再生キャンペーンがコアファン以上の拡がりに至れていないこと、キャンペーンが所有的側面の意味にとどまってしまったことが証明されたと言えるでしょう。
ビルボードジャパンは2022年度第2四半期半ばにチャートポリシー(集計方法)を変更してキャンペーンの影響度を下げ、そして最終的にはLINE MUSIC側がユーザーによる再生のすべてをカウントすることをやめました。ここに至るまでのビルボードジャパンの姿勢には疑問を呈していますが、しかしこれでチャートがより良くなったものと捉えています。
一方でジャニーズ事務所所属歌手の作品、なにわ男子「初心LOVE」やSnow Man「ブラザービート」では動画再生がロングヒットし、週間ソングチャートで総合100位以内に入らない期間が長いながらも年間100位以内に登場しました。「初心LOVE」の初週フィジカルセールスが2021年度に加算されたことを踏まえれば、動画がロングヒットや年間チャート登場に如何に大きな役割を果たしたかが解るでしょう。
【2022年度ビルボードジャパン年間チャート データ振り返り】
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月8日
TikTok Weekly Top 20の週間推移となります。青はジャニーズ事務所所属歌手の曲となります。 pic.twitter.com/z0f6j1NM8X
ジャニーズ事務所所属歌手の動画戦略はTikTokで確認できます。TikTok Weekly Top 20チャートでは2022年度第1四半期に「初心LOVE」が、第2四半期には「ブラザービート」が長期チャートインを果たしました。YouTubeにおいても同様の事象がみられます。
【2022年度ビルボードジャパン年間チャート データ振り返り】
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月8日
ソングチャートの構成指標のひとつ、動画再生の週間推移となります。青はジャニーズ事務所所属歌手の曲を指します。 pic.twitter.com/jxoJ4aPsnA
YouTubeではミュージックビデオがショートバージョンで公開されることの多いジャニーズ事務所所属歌手作品にあって、「ブラザービート」はミュージックビデオ自体フルバージョンで、「初心LOVE」はダンスバージョンにおいてフル尺で公開されています。12月17日5時半現在の再生回数は「ブラザービート」が4954万回、同曲のダンスプラクティスは3293万回となり、「初心LOVE」においては短尺版のミュージックビデオが3606万回に対しダンスバージョンは6886万回と倍近い数値となっているのです。
一方で、ジャニーズ事務所所属歌手のサブスク解禁は目立ってきたもののフィジカルシングルが初週20万以上を見込める歌手の解禁はほぼありません。Snow Manそしてなにわ男子もその状況が続いています。仮に解禁していれば年間トップ20入りも十分あり得たはずです。
ジャニーズ事務所以外のJ-POP歌手作品における接触指標群の所有的動きに伴うヒットの短期化、ジャニーズ事務所所属歌手作品におけるサブスク未解禁による機会損失…これらはビルボードジャパンスタッフによるポッドキャストで幾度となく指摘されたことであり、さらには2022年度年間ソングチャートの総括記事においても、ポッドキャストでMCを務める礒崎誠二さんが4つのトピックスのうち2つを充てて紹介しています。
<躍進するオーディション系グループの課題は>
今年前半のウィークリーチャートで目立ったのは、オーディション番組出身グループだった。『THE FIRST』からBE:FIRSTの「Bye-Good-Bye」は総合29位、『Girls Planet 999』からKep1erの「WA DA DA」が46位、『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』からINIの「CALL 119」が57位だった。他にも、JO1、ENHYPEN、Stray Kids、OWV、NiziUなどが挙げられるが、いずれの楽曲も100位圏外だった。これは、年間累計ポイントを合計する年間チャートの設計上、週単位では高ポイントを獲得し高順位につけるものの、継続してポイントを蓄積できずに年間では圏外となるパターンが多いことが原因だ。
各指標順位を詳しくみてみると、「Bye-Good-Bye」はラジオ8位、シングル50位、ダウンロード36位、ストリーミング49位、ルックアップ77位、Twitter 12位、動画16位で、「WA DA DA」はストリーミング41位、動画25位、「CALL 119」はラジオ69位、シングル7位、ストリーミング96位、ルックアップ65位、Twitter 4位と、ストリーミングや動画でのポイントが継続的に高くなければ年間チャートの上位を守ることは年々難しくなっている。ここに、オーディション系グループの課題がありそうだ。
<動画プロモーションに本腰を入れたジャニーズの今後>
21年度“JAPAN HOT 100”では、ジャニーズ系アーティストは7曲が100位以内にチャートインした一方で、今年度は、なにわ男子「初心LOVE」(79位)、Snow Man「ブラザービート」(84位)の2曲に留まった。各指標では「初心LOVE」はシングル35位、ルックアップ1位、動画3位、カラオケ77位で、「ブラザービート」はシングル6位、ルックアップ5位、Twitter 49位、動画7位という結果に。
前述したオーディション系グループと同じく、シングルやルックアップ指標でのポイントが高い一方で、ジャニーズ系は、昨年後半より本格化させたTikTokやYouTubeを組み合わせたプロモーション展開により動画指標で高ポイントをマークし、シングルの追加購入促進と併せて、ダウンロードとストリーミング未解禁による無加算(YouTubeにおける聴取でストリーミングポイントを加算することは可能だが「初心LOVE」以外は圏外で無得点だった)を継続的にカバーするスタンスを強めている。11月にシングルが発売されたKing & Prince「ツキヨミ」が総合100位圏外とはいえ、今年度年間でシングル10位、ルックアップ7位、Twitter 78位、動画69位にチャートインしていることから、この効果が徐々に顕れてきている。来年度は、こちらを堅持するグループと、Travis Japanのようにダウンロードとストリーミングの解禁に踏み切るグループに分かれるのではないだろうか。
【ビルボード 2022年 年間“JAPAN HOT 100”】「ヒット」の多様化が進み、激戦を勝ち抜いたのはAimer「残響散歌」(コメントあり) https://t.co/xDSjGAFipp pic.twitter.com/rVqBf0KYS9
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2022年12月8日
※ 太字箇所は自分が強く伝えたい部分と考え、強調したものです。
YouTubeのオーディオストリーミングはストリーミング指標に加算されます。以前はSixTONES「マスカラ」等でこの加点が見られていましたが、2022年度は「初心LOVE」のみ。これはサブスクユーザーの増加に伴いオーディオストリーミングだけではポイント加算対象となる300位以内には届きにくくなったことの表れと言えます。
またジャニーズ事務所所属歌手の大きなポイント獲得源となっていたルックアップ、およびジャニーズ以外の男性ダンスボーカルグループ(特にJO1およびINI)が得意としていたTwitter指標は2023年度から廃止されており、2023年度以降は男性アイドルやダンスボーカルグループにとってこれまで以上に不利となるものと考えます。
不利になったとして、こだわらなくていいと考えるのは早計です。音楽に力を入れているからチャート結果は後回しでいいという声も聞こえてきましたが、たとえばビルボードジャパン年間ソングチャート発表週のラジオの盛り上がりや、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場歌手選考がビルボードジャパンの音楽チャートをベースにしただろうことを踏まえれば、結果を残すことは十分必要なことだと解るでしょう。
たとえばBE:FIRSTはファーストシングル「Gifted.」をデジタル/フィジカル、音源/動画いずれも同じ週(月曜以降)に解禁したことで、倍の初週フィジカルセールスを獲得したINI「Rocketeer」を総合ソングチャートで逆転しています。これはスケジュール施策の賜物であり、如何にチャートを意識しているかがよく解る結果と言えます。
現在ではJ-POP歌手が世界を目指す姿勢もみられるようになってきましたが、その世界のヒットを示すものとして2020年秋にグローバルチャートが誕生。ここにJ-POP作品が少なからずランクインしていることは注目すべきことです。直近では米津玄師「KICK BACK」、Official髭男dism「Subtitle」、そしてTravis Japan「JUST DANCE!」がGlobal Excl. U.S.(Global 200から米の分を除いたもの)でトップ10入りを果たしています。
尤も「JUST DANCE!」のチャートアクションは所有指標に特化したものであるため翌週には急落してしまうのですが、それでもトップ10入りした事実は公式Twitterアカウントが報告するほどインパクトの大きなものでした。
Thank you @billboard and@billboardcharts ‼︎ 🌟🌟#TravisJapan#JUSTDANCE https://t.co/xvOxs02ZWz
— Travis Japan (@TravisJapan_cr) 2022年11月8日
ストリーミングでヒットし年間チャートに登場することが最善とはいえ、週間単位での上位進出は立派と言えます。そして日本市場の大きさを踏まえればそれだけでグローバルチャート上位進出が可能であり、ストリーミングヒットを伴えばロングヒットや年間チャート登場も有り得るのです。日本で十分足場を築き、世界進出へのスタートダッシュにすることもできると考えれば尚の事、チャートへのこだわりは重要なのです。
ではその日本の音楽チャートでヒットするにはどうすればよいでしょう。実はこのことについても、ビルボードジャパンの年間ソングチャート総括記事が教えてくれていると捉えています。映像作品タイアップ曲のヒット、およびノンタイアップが動画を用いて大ヒットに導いたことについて取り上げていますが、後者についてはこのように記されています。
<ノンタイアップ曲のヒットを拡散させる指標とは>
ヒットはタイアップやコアファンからしか生まれないのか、という疑問は、YouTubeやTikTokといった動画プラットフォームの浸透により覆されつつある。だが、動画指標だけが重要なのではない。総合2位のTani Yuuki「W/X/Y」や、5位の優里「ドライフラワー」、6位のSaucy Dog「シンデレラボーイ」、8位のマカロニえんぴつ「なんでもないよ、」、9位のback number「水平線」と、トップ10内のノンタイアップ5曲はYouTubeの閲覧数を徐々に伸ばし、それを受けて投稿動画を急増させたTikTokが動画閲覧数にフィードバックを起こし、ダウンロードやストリーミングに繋がっていくというロングランヒットに結実させた。
【ビルボード 2022年 年間“JAPAN HOT 100”】「ヒット」の多様化が進み、激戦を勝ち抜いたのはAimer「残響散歌」(コメントあり) https://t.co/xDSjGAFipp pic.twitter.com/rVqBf0KYS9
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2022年12月8日
※ 太字箇所は自分が強く伝えたいと考え、強調しています。
YouTubeとTikTokの相互作用が生まれ、そこからダウンロードやストリーミングへという流れが生まれ大ヒットにつながります。逆にダウンロードやストリーミングが未解禁ならば、その流れが止まることになるとも言えるのです。
たとえばなにわ男子は最新のYouTube動画にて自身の「初心LOVE」が使われたゲームを紹介していますが、仮に同曲をデジタルで解禁していたならば概要欄にデジタルリンク先を貼付することができたはずです。
SixTONESやSnow Man、なにわ男子そして最近ではジャニーズWESTがYouTuber的活動を実施し、SNS投稿もどんどん行っています。彼らの作品がデジタルで解禁され、投稿動画にダウンロードやストリーミングのリンクを貼ることができたならば、デジタルに誘導することが他の歌手よりも容易にできるのではないでしょうか。ジャニーズ作品は大型タイアップも用意される傾向にあるため、尚の事有利になるはずです。
逆にジャニーズ以外の男性ダンスボーカルグループはジャニーズ事務所所属歌手ほどタレント活動を行っているわけではなく、地上波音楽番組への出演も十分叶っているとは言い難い状況です。ならばSNSに関してはエンゲージメントの確立に長けた方を招聘すべきと考えますが(それこそTwitterにおけるYOASOBIスタッフが好例です)、また、先述したBE:FIRST「Gifted.」のようなスケジュール施策を徹底させることが重要でしょう。
その上で、海外における施策のトレンドを率先して学び、いち早く実践することが必要です。その点で成功しつつあるのがDa-iCE「スターマイン」。リリース前にインフルエンサーの踊ってみた動画に使用してもらい話題を作ったことで、現在では地上波音楽番組でこの曲を披露する傾向が高まっています。インフルエンサーに先行で使用してもらった例としてはドレイクの米No.1ヒット、「Toosie Slide」(2020)が挙げられます。
<コラム>Da-iCE、TikTokを駆使して打ち上げる次なる花火「スターマイン」 https://t.co/w7GH5fYmmE pic.twitter.com/wTSiOaw7tM
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2022年10月3日
尤も「Toosie Slide」は2年半前の事例ですが、日本でいち早くこの施策を採用したDa-iCEの音楽チャートに対する高い意識がよく解ります(そして実際にテレビパフォーマンスに至り、総合ソングチャートトップ10目前まで上昇しています)。また彼らの「CITRUS」はDISH//「猫」同様、THE FIRST TAKEに用いられたことで大ヒットにつながっており、動画をどう味方につけるかが成功への大きな鍵となることでしょう。
(ただしTHE FIRST TAKEはソニーミュージック系列が運営していると思われるため、同社所属歌手が優先して起用されるかもしれません。個人的には、THE FIRST TAKEがライバル意識を抱くような強力な音楽チャンネルが2023年に登場することを願っています。)
そもそも男性アイドルやダンスボーカルグループはコアファンの多さや熱意の高さゆえにフィジカルセールスが強いのが特徴です。社会的ヒットにはCDの意味がほぼない等懐疑的な声も根強く在りますが、しかしコアファンが物理的や精神的に疲弊しないならばフィジカルセールスや再生キャンペーンがあることは自然。過度な数値がそのまま反映されることのないよう音楽チャートがポリシーを変えることがより重要だと考えます。
フィジカルセールスという強みがあるならば、それをデジタルの後押しという形に用いることで週間首位やその後の好調を狙うことが最善です。昨日J-POPおよびK-POPのCHART insightを紹介した際、参考として唯一異なるジャンルの曲を用意しました。その米津玄師「KICK BACK」のチャートアクションこそ、男性アイドルやダンスボーカルグループの参考になるはずです。この点は年間チャート総括時にここで触れています。
⑨ 週間ポイントワンツー達成、米津玄師が示したチャートアクションの理想形
2022年度の週間ソングチャートで最高ポイントを記録したのが米津玄師「M八七」(年間ソングチャート42位)。5月25日公開分(5月30日付)で20,881ポイントを獲得しています。それに次ぐのがこちらも米津玄師さんによる「KICK BACK」(同30位)であり、年度最終週の11月30日公開分(12月5日付)で20783ポイントに達しました。いずれもフィジカルセールス加算初週時であり、「M八七」はフィジカル初動241,867枚、「KICK BACK」は同289,147枚を記録しています。
(中略)
所有指標の急落しやすい性質も踏まえれば尚の事、ストリーミングや動画再生等デジタルの接触指標群で好調を維持した状態でフィジカルを投入しポイントの最大化を狙うことが、現段階におけるチャートアクションの理想形と言えるでしょう。フィジカルリリースには他指標を上昇に導く効果もみられます。
フィジカルセールス指標の性質を踏まえればポイント前週比がデジタルのみの曲より低くはなるものの、フィジカルセールスに強いアイドルやダンスボーカルグループが狙うべきチャートアクションはここにあると言っても過言ではありません。
社会的ヒット曲を生むためには、デジタル、特にストリーミングの継続的なヒットが必要であり、動画も大きな役割を果たします。またポイント最大化のためにフィジカルをデジタルの後押しとして位置付けることも大切です。そもそもデジタル解禁しないことには、ヒット曲のスタートラインにほぼ立てないとも言えます。
社会的ヒットに至るべく、施策を学び活用することが重要です(無論このことはどの歌手においても言えることです)。個人的には、デジタルについての基礎を図解や動画の形でレクチャーし、サブスクへの導線を作ることを提案します。
日本コロムビアさんが氷川きよしのサブスク解禁に伴って"サブスク・ダウンロードの聴き方解説ページ"を作られています
— Ko Matsushima / 松島 功 (@komatsushima) 2022年11月29日
違いを理解して説明するの意外に難しいのでファンの方に届くと良いですね
慣れ親しんでいない層の方に説明するにはとても良いページhttps://t.co/gn9WI0JT0e pic.twitter.com/eEBksAXaVm
arne代表の松島功さん(『日経エンタテインメント!』最新号におけるインタビュー記事も必読です)が紹介しているのは、氷川きよしさんサイドの施策の巧さ。活動休止前に演歌系作品をデジタル解禁したそのタイミングで、デジタルの基礎について紹介しています。活動休止中でも氷川さんの作品にすぐに触れられることをデジタルに疎いとされる中高年層に認識していただくことが如何に重要か、氷川さん側は熟知しています。
いや、デジタルに疎いのは何も中高年層だけではなく、デジタル未解禁歌手のコアファンも同様と考えます。これはTravis Japanについて紹介したブログエントリーに対するジャニーズファンのリアクションから実感したことであり、「JUST DANCE!」のCHART insightでストリーミングが強くないことからもその状況が見えてくるものと感じています。
ならば氷川きよしさんの施策に倣い、Travis Japanがデジタルについてレクチャーする動画を作成することを提案します。尤もこれはTravis Japanに限らず、既にデジタル配信を行っている歌手についても同様です。自身の作品に触れてもらうことは勿論のこと、サブスクへのマイナスイメージを持ち合わせる方(ベテラン歌手が悪しきイメージを語ることでその概念が強まったと感じています)への改心のきっかけにもなることでしょう。
そして男性アイドルやダンスボーカルグループにおいては、名刺代わりとなる曲の誕生も重要でしょう。BTSの英語詞3曲がその最たるものであり、老若男女が楽しめる肩肘張らないポップソング的作品をヒットに導くことで、そこから歌手の他の作品の接触や所有行動にもつながるはずです。
その点において、BE:FIRST「Bye-Good-Bye」およびなにわ男子「初心LOVE」が最も近い位置にいるものと考えます。前者はストリーミングでの下降が激しかったもののSpotifyデイリーチャートでは現在も200位以内に登場、後者はデジタル未解禁ながら動画再生をコンスタントに獲得しています。このような代表曲が生まれたことで「Gifted.」や「The Answer」のような攻めの作品も投じることができると考えます。
参考資料として昨日紹介したソングチャートのCHART insightからは、ジャニーズ事務所所属歌手やジャニーズ以外の男性ダンスボーカルグループ、そしてK-POPにおいても社会的ヒット曲に至ることの難しさが可視化されたと感じています。しかし克服できる可能性は十分にあり、ビルボードジャパン側が年間チャート総括記事でそのヒントを挙げています。
歌手側やレコード会社側、そして芸能事務所側が真の社会的ヒットとは何かを学び、弱点を克服すること、そしてそのために大胆な変化を下すことで、2023年度に名刺代わりの代表曲が生まれること、その曲を軸とする攻めの作品が登場することを心から願っています。