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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンで目立つ男性アイドル/ダンスボーカルグループのソングチャート初登場…その動向を分析する

最新8月26日公開分(集計期間:8月14~20日)のビルボードジャパンソングチャート、20位以内に初登場した作品については昨日付エントリーにて紹介しています。

最新チャート、100位以内に新たに登場した16曲の中には男性アイドル/ダンスボーカルグループによる作品が少なくありません。そこで今回は、それら作品の動向について紹介します。なお亀梨和也さんはグループ(KAT-TUN)ではなくソロ曲でのランクインですが、そちらについても掲載します。

最新チャートにおける男性アイドル/ダンスボーカルグループ作品の動向をCHART insightを用いて紹介します。このCHART insightについては、下記ポスト(ツイート)にて簡潔に説明しています。

 

<2023年8月23日公開分 ビルボードジャパンソングチャート、100位までに

 初登場した男性アイドル/ダンスボーカルグループ作品のCHART insight>

 

 

・3位 (初登場) 亀梨和也「Cross」

 (デジタルリリース:8月18日)

・5位 (初登場) カラフルダイヤモンド「あまキュン」

 (デジタルリリース:8月16日)

・11位 (初登場) FANTASTICS from EXILE TRIBE「Tell Me」

 (デジタルリリース:6月9日)

・12位 (初登場) BLACK IRIS「That That That」

 (デジタルリリース:7月14日)

・32位 (初登場) SEVENTEEN「Sara Sara」

 (デジタルリリース:8月15日)

・49位 (初登場) INI「Moment」

 (デジタルリリース:8月13日)

・53位 (初登場) IMP.「CRUISIN'」

 (デジタルリリース:8月18日)

・60位 (初登場) MAZZEL「LIGHTNING」

 (デジタルリリース:8月14日)

 

・65位 (初登場) ICEx「CANDY」

 (デジタルリリース:8月16日)

・83位 (初登場) Snow Man「Dangerholic」

 (デジタルリリース:未定)

・93位 (初登場) BE:FIRST「Salvia」

 (デジタルリリース:8月18日)

 

(※94位初登場のONE N' ONLY「EVOL」はいずれの指標も20位以内に登場していないため、CHART insightは(無料会員については)確認できない状況です。ご了承ください。)

 

 

最新チャートにおける指標構成は、曲によって大きく異なります。そしてどのタイミングで初登場を果たすかについては、大きく5つに分けられるといえます。

<初登場時におけるアイドル/ダンスボーカルグループの初登場タイミング>

① フィジカルリリースのみでデジタル未リリース(後日解禁予定含む)

② デジタルとフィジカルが同時リリース

③ デジタル先行/フィジカル後日リリースという状況において、デジタルリリースの段階

④ ③とリリース環境は同じながら、フィジカルリリースの段階

⑤ ①とリリース環境は同じながら、リリース前に

フィジカルセールスは加算初週に曲全体のポイントを大きく押し上げながら翌週に急落する性質を持ち合わせています。ビルボードジャパンは2017年度以降、フィジカルセールスについて一定以上の週間売上枚数に係数処理を施し、デジタルに強い曲が週間単位でも上位進出できる形を採っています。現在、その枚数は5万枚程度と推測されています。

ストリーミングに強い曲のいわゆる"億超え"再生がヒットの基準として定着してきた現在において、またフィジカルリリースしないシングル曲が増えた現状にあっては、ソングチャートにおけるフィジカルセールスの位置付けはデジタルの一時的な補完や後押しの意味合いが強いといえます。デジタルでのヒットが社会的ヒットに成ることを踏まえれば、デジタルをきちんと解禁することは当然と言っても過言ではないでしょう。

フィジカルセールス指標の性質は、今年を代表する一曲となったYOASOBI「アイドル」からはっきりと見て取れます。6月28日公開分ではCD、8月2日公開分ではアナログセールスが初加算されていますが、CDの初週売上は5万枚強という状況です。YOASOBIの中ではシングル週間売上枚数で最多となっていますが、社会的ヒット曲とフィジカルとの乖離やフィジカルセールスの急落はこの曲の動向だけをみてもよく解るはずです。

ソングチャートにおいて最も大切なのはサブスク再生回数等から成るストリーミングでのロングヒットですが、日本ではストリーミング指標のロケットスタートは難しい状況です。ゆえに、初期段階で順位が高くなくともストリーミングでヒットし、また同じ接触指標である動画再生指標を伸ばし、その上で所有指標を上乗せして総合で上位に進出すれば、ロングヒットも見込めるのではないでしょうか。

 

 

その点において、初登場時のCHART insightからヒットの理想形に最も近いと感じるのがMAZZEL「LIGHTNING」です。

(上記は別バージョンの動画(ミュージックビデオ等は上記CHART insight紹介時に掲載)。アイドルやダンスボーカルグループは複数の動画を用意する傾向があり、これも施策の一環といえます。また以下で紹介する動画も別バージョンとなります。)

セカンドフィジカルシングル「Carnival」のカップリング曲が先行配信され、初週100位以内に登場したMAZZEL「LIGHTNING」。月曜解禁に伴う1週間フル加算効果もありますが、男性アイドル/ダンスボーカルグループが強くなってきた感のあるラジオでもポイントを獲得しているのは、コアファンのリクエスト等のみならずラジオ業界内の注目度の表れともいえるでしょう。

「LIGHTNING」においては様々なキャンペーンが用意されていますが(上記リンク先参照)、LINE MUSIC再生キャンペーンがないことは注目の動向と捉えています。プレゼントの用意等コアファン向けの企画もありますが、再生キャンペーンを採用しない作品が増えてきている状況は業界全体の変革(好転)と受け取って好いのかも知れません。なおLINE MUSIC再生キャンペーンへの私見については、今月記載しています(→こちら)。

 

もうひとつ注目したいのは、同日リリースとなった亀梨和也「Cross」とIMP.「CRUISIN'」の動向。2曲とも8月18日金曜にリリースされています。

「Roar」以降のKAT-TUNにおけるデジタル解禁の流れを受けてか、亀梨和也さんのソロ曲でもデジタルリリースされています。一方でその解禁アナウンスはフィジカルリリースの直前となったこともあってか(→こちら)、フィジカルセールスは強くともストリーミング指標で加点に至ることはできませんでした。尤も接触指標は週後半のリリース作品ほど、集計期間中の300位以内到達が難しい状況ではあります。

他方、IMP.「CRUISIN'」も1週間前という直近でのリリースアナウンスではありましたがデジタルオンリーでのリリースであり、そして集計期間後半のリリースながらストリーミング指標300位以内にランクインしています。同曲については以前このブログにて取り上げましたが(上記リンク先参照)、LINE MUSIC再生キャンペーンを採用していないもののストリーミング指標で加点に至っているのは興味深い動きといえます。

重要なのはロングヒットの要であり、且つ最大のポイント獲得源であるストリーミングにおける加点の継続です。まずは初の1週間フル加算となる次回のチャートにて亀梨和也「Cross」がストリーミング指標で加点を果たすか、そしてIMP.「CRUISIN'」が加点を続けるかについて、注目する必要があります。

 

 

J-POPのアイドル/ダンスボーカルグループにおいてはソングチャートのフィジカルセールス初加算時に、ソングチャートとアルバムチャートを合算したトップアーティストチャートでも順位が急浮上する性質がありますが、その勢いはほとんどの歌手において持続しません。勢いをキープし知名度を上昇させることの重要性は、たとえば徐々にテレビ出演の範囲を拡げているDa-iCEの例からも明らかだと考えます。

 

 

最後に。今回紹介した男性アイドル/ダンスボーカルグループの初登場タイミングにおいて、音源の正式リリース前に唯一エントリーを果たしたSnow Man「Dangerholic」について取り上げます。

ドラマ『トリリオンゲーム』(TBS)主題歌である「Dangerholic」は、9月6日のフィジカルリリースを前にミュージックビデオが解禁、さらに今夏の長時間音楽特番でのパフォーマンス映像も複数公開され、動画再生指標が高位置で推移しています(テレビ映像の公開については『CDTVライブ!ライブ!』以外の音楽番組パフォーマンス映像もYouTube公開…一方で引っ掛かりを覚えることについて(7月5日付)等にて記しています)。

ジャニーズ事務所においては、特に週間フィジカルセールス10万枚以上を見込める歌手のデジタル解禁は今も行っていません。他方でこの数年は動画公開に積極的な姿勢を示しており、ゆえに今回の現象も発生したものと考えます。ただこれは、メンバーが主演するドラマの主題歌であること、そしてフィジカルセールスが最も強いSnow Manだからこそ100位以内に到達できたといえるかもしれません。

そして、仮に「Dangerholic」がデジタルを先行解禁していれば、今年を代表する社会的ヒット曲に成った可能性も考えられたのではないでしょうか。動画の強さは音源を先行でチェックできるゆえコアファンが多く聴く傾向にあるかもしれませんが、ドラマ主題歌という特性上歌手のコアファンではないドラマファンの方々もチェックするはずであり、その方々がサブスク聴取に積極的に成った可能性も考えられます。