ビルボードジャパンは昨日午前4時、2022年度の各種年間チャートを発表。このブログでも個人的な分析を実施し、昨日掲載しました。
そして今週は2023年度初週となるチャートが発表されています。
2023年度の音楽シーンが楽しみな一方で、ビルボードジャパンには改善を願う部分が未だ多く存在しており、今回は今一度その願いをまとめておきます。
1つ目は【管理の徹底】です。
ビルボードジャパンは2022年度各種年間チャートを午前4時に発表すると紹介していましたが、ビルボードジャパンのホームページ掲載はその数分後(目視にて確認)、そしてTwitterでの発信は少なくとも7分、ツイートによっては20分以上遅れています(上記ブログエントリー参照)。実際、一度ツイートしたものが複数削除された跡も確認できており、発信の不徹底という状況がみえてきます。
ビルボードジャパンは真の社会的ヒットを映す鑑になったと捉えているものの、認知度や浸透度はオリコンに遅れを取っているものと考えます。そのオリコンは週間ランキングを定刻に発信していることから管理の差は未だ大きく、それが認知度等にも影響しているのではというのが私見です。
ビルボードジャパン(@Billboard_JAPAN)のホームページ、10時9分の段階でメンテナンス中でした。
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月6日
以前も記載したのですが、メンテナンスをされる前にアナウンスしていただけるならば嬉しいですね。 pic.twitter.com/Ip6RvFu40w
昨日のサーバーダウンで思い出した事前増強の未検討(ポッドキャストにて費用等を考慮し増強しないと仰っていました)にも言えることですが、読み手の存在を意識し配慮することができるならば事前アナウンスやサーバーの増強(に予算を充てること)もきちんとできるのではと思うのです。
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月6日
また先日はサーバーダウンとメンテナンスが連日で発生。サーバーダウンの増強を前向きに検討していることが今週木曜までにアップされたポッドキャストでアナウンスたことに安堵する一方、メンテナンスは事前アナウンスがなかったこともあり違和感を覚えています。これもまた情報管理の問題の一端と言えるでしょう。
2つ目は【2023年度におけるチャートポリシー変更】について。
ビルボードジャパンは早い段階で、2023年度以降ルックアップおよびTwitterの2指標をソングおよびアルバムチャートから廃止するというアナウンスを行っていました。特にこれら指標に強い歌手のコアファンの方々に周知されている印象があり、事前告知は好いことと考えます。また自分はこのチャートポリシー変更自体には賛同しています。
指標の廃止は極めて大きなチャートポリシー変更となるため、ビルボードジャパンは前もって公表したものと思われます。そしてそれ以外にもチャートポリシーが変更される可能性を踏まえ、このブログでは10月末に様々なチャートポリシー変更案を提示したのですが(上記ブログエントリー参照)、2023年度初週の動向を踏まえるにひとつとして叶うことはありませんでした。
自分の案が必ずしも正しいとは限りませんが、アルバムチャートへのストリーミング指標導入による聴かれるアルバムの可視化、海外に倣った別バージョンの合算やチャート集計期間の金曜開始、J-POPもランクインするグローバルチャートの紹介、動画再生回数チャートの作成やストリーミングの下限拡大、フィジカルセールスのウエイト減少等指標見直しについては、チャートの精度を高める等の意味にて必要なことと考えます。
ちなみに2022年度のビルボードジャパントップアーティストチャート、100位までに今回の #NHK紅白 初出場歌手歌手がすべて入っています。
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月9日
1位 #Ado
7位 #Vaundy
10位 #SaucyDog
14位 #Aimer
21位 #なにわ男子
22位 #BEFIRST
25位 #JO1
29位 #IVE
36位 #緑黄色社会
58位 #LESSERAFIM
(以上敬称略) https://t.co/lkrWy6MElQ
この点からも、#NHK紅白 が今のヒットチャートを見据えて選出していること、ビルボードジャパンの各種チャートを参考にしていること、ビルボードジャパン(特にソングスチャート)が社会的ヒットの鑑となっていることが分かります。この点は先月、#イマオト にて解説しています。https://t.co/y1SCdcy0vj
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月9日
(上のほうのツイートに誤字がありました。正しくは歌手歌手→歌手、となります。)
そしてこれらに加え、ビルボードジャパンによるチャート発信の徹底も今一度提案します。『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の出場歌手選考、特に初登場歌手の選出にビルボードジャパンのチャート結果が大きく関係していることは以前からここでお伝えしていますが、その後いただいたリアクションからはビルボードジャパンの認知度の高くなさを感じることが少なくありませんでした。
世間一般の認知度が今もオリコンに軍配が上がるだろうこと、そしてそのオリコンが先述したように情報管理を徹底していることから、ビルボードジャパンは認知度と管理能力を上げない限り音楽チャートで優位に立つことは難しいと感じます。メディアがオリコンを今も用いるのは世間一般への認知度を考慮してのことでしょうし、ビルボードジャパンの音楽チャートが浸透すれば”紅白見ない”という言葉も出にくくなるはずです。
『アメリカのチャートも間違いなく売れるミュージシャンはいるけれど、先ほど触れたスティーヴ・レイシーのように100位に初登場して3か月ぐらいかけて1位になるという曲もたくさんあります。日本だと今はないですよね、そういうヒット曲。』
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月4日
ちょっとこの部分には違和感を覚えます。 https://t.co/pP8cLQaGUg
直近ではクリス松村さんの解釈の問題にも触れました(詳細は上記ツイートに端を発したスレッドをご参照ください)。世間一般の認知度もさることながら業界内部に対しても、毎週の音楽チャートやそもそも音楽チャートがどのような特性を持っているか等を周知徹底させることが必須だと痛感しています。情報管理の徹底、そして番組の用意等は是非とも前向きに考えていただきたいと願っています。
(個人的にはYouTubeにて、チャートの仕組み等を紹介することも必要と考えます。)
3つ目は【自問自答の姿勢を持っているか】ということです。厳しい物言いですが、以前ビルボードジャパンがホームページで用いていた言葉を今も自身に向けて唱えているか、この姿勢を忘れてはいないだろうかと懸念しています。
ニューミドルマンコミュニティの2022年日本の音楽シーン総括です!お気軽にご参加ください!
— 山口哲一 エンターテック✖️起業 (@yamabug) 2022年12月6日
→Music Tech Radar Vol.32 Billboard JAPAN 年間チャートから読み解く2022年日本の音楽シーン ゲスト:礒崎誠二 https://t.co/U4m59uImQT
今月22日二開催されるイベントではビルボードジャパンのチャートディレクターを務める礒崎誠二さんが登場することになっていますが、このイベントの概要を読んで気になったことがあります。
特に今年は、再生数キャンペーンに伴うチャート集計方法の見直しや、ルックアップ&Twitter指標の廃止宣言が大きな話題となり、業界関係者だけでなく一般の音楽リスナーに至るまで、その注目度の高さが伺えるような1年となりました。
・イベント概要より(上記ツイートのリンク先をご参照ください)
この『再生数キャンペーンに伴うチャート集計方法の見直し』についてはこのブログでも取り上げていますが、個人的には4年前には既にみられていたキャンペーンへの対応が遅きに失してやいなかったかというのが正直な思いです。さらに一部メディアと共にLINE MUSIC、ならびにキャンペーン採用歌手のコアファン等に対する態度が無礼ではなかったかとも感じています。
LINE MUSICの再生回数カウント方法の見直しは必要なことだったとして、LINE MUSICに向けて直接話す機会があったか、またそもそも議論しようという気概があったのかをビルボードジャパンに伺いたいところです。そしてビルボードジャパンがチャート”ハック”という好ましいといえない表現を用い続けるKAI-YOUの最新記事紹介ツイートにいいねをしていることにも、強い違和感を抱いています。
【コラム】
— KAI-YOU(カイユウ) (@KAI_YOU_ed) 2022年12月9日
Billbaord年間チャート発表に寄せて──"権威性"がヒットを生む構造が問い直される今https://t.co/NIVL2EFOVQ #kai_you
数字に頼らず、楽曲・アーティストを広めるために。連載「チャートハックと音楽シーン」を改めて振り返る。
自分がメディアの方々とやり取りさせていただく上で常に感じるのは、彼らがアイキャッチを重視すること。興味を持ってもらう入り口として必要なことと理解する一方、自分が意図しない”誰かを傷つける可能性を孕んだ”表現がタイトル等に用いられることに対し、違和感を抱き続けています。直接の担当者の方には自分の意志を汲んでくださる方もいらっしゃいますが、メディア全体が”印象に関係なく目を引く言葉でタイトルやキャッチコピーを書け”という認識になっていないかと思うことは少なくありません。
その中でKAI-YOUにおいては”ハック”という言葉を使うことをやめず、その言葉を用いた連載まで行っています。ビルボードジャパンスタッフのインタビューも実施していることから同社の信頼が最も強く寄せられているメディアだろうとして、その言葉の使い方には強い疑問を抱き続けています。
先述したように、ルックアップやTwitter指標の廃止、またLINE MUSIC再生キャンペーンの有効性が乏しくなったビルボードジャパンソングチャートのチャートポリシー変更に対しては評価しています。しかしそれを、尖った言葉や好ましいとはいえない表現で紹介することには違和感を覚えます。その紹介にいいねをする行為も疑問です。
コアファンの熱意は自然なものであり、それをキャンペーンに利用して過度に疲弊させることはあるべきでないと考えますが、ならばなぜキャンペーン誕生の段階で過熱の可能性を考慮しチャートポリシーを変更できなかったか…自問自答の姿勢をビルボードジャパン側が持ち合わせているか疑問視すると共に、KAI-YOUがビルボードジャパンにその旨を問わないならば、メディアの姿勢は偏っているとも感じてしまうのです。
ビルボードジャパンとその周囲に見られる、過激と言える言葉の使用とそれをよしとする姿勢からは、自問自答という姿勢がみえてこないというのが正直なところです。実際、ビルボードジャパンのホームページにあった”ビルボードジャパンの自問自答”というページが見当たらなくなっていることからも、強い悲しみを覚える自分がいます。
ビルボードジャパン(@Billboard_JAPAN)から、”ビルボードジャパンの自問自答”という特設サイトが消えていることにショックを受けています。
— Kei (@Kei_radio) 2022年12月9日
こちらのページの下部にリンク先があるのですが(1つ目の画像参照)、エラーになってしまいます(2つ目の画像参照)。https://t.co/OFVq2mzVJn pic.twitter.com/bvLuMU5Z56
ビルボードジャパンソングチャートが社会的ヒット曲の鑑に成ってきたと評価する一方で、今後も過熱しかねないチャート最大化策が発明される可能性がゼロではない以上、チャートポリシーが完璧になることは決してないというのが厳しくも私見です。ゆえに、今のチャートポリシーが正しいか、あの時正しかったかを常に自問自答する姿勢をビルボードジャパン側が持ち続けることを願います。
ちなみに米ビルボードではテイラー・スウィフトのチャート施策が巧く、最新12月10日付ソングチャートでは「Anti-Hero」が6連覇に至っているのですが、連覇に貢献した販売手法は主にコアファンとのエンゲージメントを活用したものと言えます。米ビルボードが早々にチャートポリシー見直しの議論を行うことを望むと共に、チャート最大化策はどの歌手でも実践しているという認識を持つことを勧めます。