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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

Saucy Dog、YouTuberとのコラボがサブスク上昇に反映…一方でコラボに対するネガティブな反応を考える

本日発表予定の6月29日公開分(7月4日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは、Official髭男dism「ミックスナッツ」とSEKAI NO OWARI「Habit」の首位対決に注目。多くの指標で競り合う2曲の最終的な順位は本日昼過ぎに発表されます。

この2曲は最新6月27日付の日本におけるSpotifyデイリーチャートにおいて、「ミックスナッツ」が1位、「Habit」が2位に。4月6日以降Tani Yuuki「W / X / Y」がほぼ独占していた(6月13日付から3日間のみBTS「Yet To Come (The Most Beautiful Moment)」が首位となっていた)このチャートにおいて遂に首位が入れ替わった形であり、2曲は年間チャートを大きく動かしていく存在になることは間違いありません。

 

その6月27日付、日本におけるSpotifyデイリーチャートではSaucy Dogの躍進が目立ちます。

詳しい順位および再生回数前日比はこちら。

<6月27日付 日本におけるSpotifyデイリーチャートにおけるSaucy Dog作品一覧>

・4位 (前日4位) 「シンデレラボーイ」 再生回数前日比90.7%

・11位 (16位) 「優しさに溢れた世界で」 再生回数前日比98.4%

・52位 (55位) 「いつか」 再生回数前日比99.1%

・63位 (71位) 「結」 再生回数前日比109.9%

・64位 (79位) 「魔法にかけられて」 再生回数前日比115.8%

・79位 (98位) 「あぁ、もう。」 再生回数前日比109.1%

・ 159位 (初登場) 「今更だって僕は言うかな」

・161位 (再登場) 「コンタクトケース」

 (2022年2月20日付以来の200位以内エントリー)

日本における月曜のSpotify再生回数は日曜より後退する傾向にあり、6月27日付ではトップ50の大半の作品において再生回数が1割以上ダウン。ゆえにSaucy Dogの強さが目立つ形です。

このヒットの要因として挙げられるのが、Saucy Dogの石原慎也さんがYouTuberのコムドットさんの動画に出演したこと。一方でTwitterには、ロックバンドなのにYouTuberと組んだことやそれに因るイメージ悪化を懸念するコアファンの声が見られ、Saucy Dogのメンバーが思いを述べている姿が印象的でした。

 

チャートを追いかけてきた者として述べるならば、Saucy Dog側の気持ちが理解できます。というのも彼らがブレイクするきっかけになった「シンデレラボーイ」の、ライト層へのさらなる浸透に至った要因が、YouTuberとしても活躍するスカイピースさんとのコラボ動画(2月11日公開)にあったと言えるためです。

<2月12日付 日本におけるSpotifyデイリーチャートにおけるSaucy Dog作品一覧>

・4位 (前日7位) 「シンデレラボーイ」 再生回数前日比113.9%

・58位 (77位) 「いつか」 再生回数前日比125.5%

・99位 (117位) 「結」 再生回数前日比113.4%

・108位 (144位) 「あぁ、もう。」 再生回数前日比117.2%

 

※参照としてトップ3の動向

・1位 (前日1位) Aimer「残響散歌」 再生回数前日比102.5%

・2位 (2位) 優里「ベテルギウス」 再生回数前日比103.5%

・3位 (3位) マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」 再生回数前日比102.1%

YouTuberとのコラボ動画がSaucy Dogの作品を押し上げたことはSpotifyから解ります。そしてこの結果は、Spotify再生回数を含むビルボードジャパンソングスチャートのストリーミング指標、そして総合チャートにも反映されています。

最新ソングスチャートの集計期間中は前週のような祝日が存在せず、ストリーミング再生回数を維持するのは難しい状況です。前週のソングスチャートにおけるストリーミング記事(→こちら)と最新ソングスチャートの同指標の記事(上記参照)を比べると、この2週続けてトップ10入りした9曲のうち、再生回数を伸ばしたのはSaucy Dog「シンデレラボーイ」、そしてAimer「残響散歌」のみなのです。

2月23日公開分(2月28日付)ビルボードジャパンソングスチャートではSaucy Dog「シンデレラボーイ」が総合11→6位、ストリーミング8→4位と大きく伸びたのです。このチャートの集計期間は2月14日からの1週間でありスカイピースとのコラボ動画公開の数日後にはなりますが、コラボ動画の認知度が拡がった影響と言っていいでしょう。

(Saucy Dog「シンデレラボーイ」のCHART insightはこちら。2月23日公開分(2月28日付)は28週目に該当。総合チャートは黒、ストリーミング指標は青で表示。)

 

冒頭で紹介したSEKAI NO OWARI「Habit」においてはHIKAKIN(ヒカキン)さんとのダンスコラボの影響で、6月15日公開分(6月20日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいてOfficial髭男dism「ミックスナッツ」を総合で逆転。YouTuberとのコラボ動画が大きく影響した例として挙げられます。

またSaucy Dogは先述したスカイピースとのコラボが功を奏したこともあり、仮にコラボ動画の内容等に問題があったとして、今回コムドットと組んだと考えるのは自然なことです。ライト層を如何に増やすか、そしてその中からコアファンに昇華する方がどれだけ生まれるかを考え、実行したのではないかとみられます。無論コアファンを大切にする姿勢も大事で、そのコアファンにも楽しんでもらおうと思って企画したはずです。

 

一部苦言を呈するコアファンについて、あくまで私見と前置きして書くならば、気になったのが"ロックバンドのイメージと違う"という声。ですが、そのロックバンドのイメージを歌手側に対し必要以上にカテゴライズさせてはいないかと感じた次第。イメージを押し付けて彼らを雁字搦めにさせてはいないかを自身に問いかけることが大事だと考えます。

Saucy Dogのコアファンが、彼らを見つけたきっかけは何でしょう。たとえばTikTokで、曲のテーマ等とは関係ない動画のBGMに使われたことで気になったならば、そもそものきっかけがロックとは関係のないところにあったと言えます。スカイピースとのコラボ動画を機にSaucy Dogのライト層となりコアファンに昇華した方もいらっしゃるはずで、必要以上のカテゴライズは新規コアファンを過度に息苦しくさせかねません。

 

ライト層の増加、コアファンへの昇華が歌手自体やその活動を大きくするに至り、音楽チャートの上昇は勿論のこと、ライブ会場や音楽フェスでの位置付けのステップアップ等につながります。YouTuberとのコラボ動画で気になったライト層にSaucy Dogの素晴らしさを教えコアファンに昇華させること、ロックバンドとしての姿を見せるべくライブ等に誘導することが、一足早くコアファンに成った方の健全な活動だと考えます。