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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパン最新ソングスチャートのポイント上昇曲から、上昇の要因と対策を導き出す

最新2月2日公開分(2月7日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるポイント前週比をみると、前週からポイントが増えた曲にはっきりとした傾向が見て取れます。最新のソングスチャートは下記から確認可能です。

ビルボードジャパンソングスチャートでトップ10入りした曲の中で前週よりポイントを伸ばした3曲のうち、マカロニえんぴつ「なんでもないよ、」およびSaucy Dog「シンデレラボーイ」については前週もこのブログで採り上げました。

そして今週、「なんでもないよ、」は4位、「シンデレラボーイ」は8位に入り、共に同曲における最高位を更新。ポイント前週比は前者が100.4%、後者が114.5%となり、特に「シンデレラボーイ」の凄まじい伸びに驚かされます。

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これは両者が同時出演を果たした1月21日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)が大きく影響していますが、特にSaucy Dogはこの出演で"見つかった"と言えるでしょう。

特筆すべきは、最も流動性の低いと言えるカラオケ指標で「なんでもないよ、」が13→9位、「シンデレラボーイ」が17→10位急上昇、同時にトップ10入りを果たしたこと。2曲とも既に接触指標群でヒットしており、テレビ出演でその認知度がより広く世間一般に拡がったことが今回の結果につながったと考えられます。

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テレビ関連では、先述した2組と同日の『ミュージックステーション』、そしてマカロニえんぴつ共々最新ソングスチャートの集計期間初日に『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)に出演した緑黄色社会による「Mela!」がポイント前週比103.9%を記録。両番組で披露したのはニューアルバムからの「キャラクター」ですが、同曲は最新ソングスチャートで27位に初登場を果たしています。アルバム『Actor』も総合アルバムチャートで初登場4位となり、アルバム発売とテレビ出演が曲の勢いにも波及した形です。

 

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最新ソングスチャートではBTS「Butter」が4週ぶりにトップ10に返り咲き、ポイント前週比102.7%を記録しています。BTSは50位以内においても「Dynamite」がポイント前週比100.3%で20→17位、「Permission To Dance」が同105.3%で32→25位となり、ポイントと順位の双方で伸びています。

これは最新ソングスチャートの集計期間中、ニッポン放送が平日に編成した『BTS マイ・ベスト・リクエスト』の影響と言えるでしょう。実はこの週が首都圏ラジオ局にとって聴取率調査週間であり、一部の放送局はスペシャルウイークと銘打って豪華プレゼントや豪華ゲストを用意します。特にニッポン放送はその傾向が強いのみならず、編成も大きく変えているのですが、この聴取率調査週間においては選曲傾向も変化します。

ラジオエアプレイは他の指標と異なり一押しの新曲や新人を紹介する傾向が強く、総合チャートとは順位が大きく乖離しているもののその独自性が面白い指標という印象があります。しかしながら、スペシャルウイークでは普段ラジオをあまり聴かない方にも聴いてもらうべく、ここ最近ヒットしている曲をより多くかける傾向があるのだろうということが「Pretender」や「白日」のチャートアクションから見て取れます。

先述したBTS「Butter」がとりわけ顕著にその傾向が表れており、ソングスチャートのラジオ指標は前週の100位未満(300位圏内)から32位にジャンプアップ。ポイント増加およびトップ10返り咲きの大きな要因となっています。なおニッポン放送は4月にも同企画を開催するとのことで(こちらのツイートで判明)、その際のチャートアクションにも注目です。

 

最新チャートでは、Adoさんの躍進が目立ちます。

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「心という名の不可解」は最新ソングスチャートにおいてポイント前週比114.6%、23→11位と躍進。この要因は、同作品を収録したアルバム『狂言』の初登場に伴うものです。

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狂言』は昨年12月1日公開分(12月6日付)におけるNiziU『U』以来となる構成3指標全制覇を達成。その勢いがソングスチャートにも波及し、「心という名の不可解」のみならず「踊」がポイント前週比101.8%を記録し14位をキープ、「うっせぇわ」が同104.4%となり46→43位へ上昇しています。

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アルバム関連では、宇多田ヒカルさんのニューアルバムのタイトルトラックである「BADモード」がポイント前週比103.9%を記録し26→23位へ。特にラジオが強く、放送局が一押し曲と位置付けたのみならず、最新ソングスチャートが初の1週間フル加算となったことでポイントを伸ばしたと言えます。Adoさんにおいては「心という名の不可解」が事前に解禁されているゆえ、次週のポイント前週超えは難しいかもしれません。

 

その他、milet × Aimer × 幾田りら「おもかげ (produced by Vaundy)」がポイント前週比100.3%を記録。順位こそ41→42位にダウンするも、安定しています。これは最新ソングスチャートにおけるAimer「残響散歌」の通算5週目の首位達成やアルバム『星の消えた夜に』の3位初登場、さらには「カタオモイ」のTHE FIRST TAKE公開効果もあり、特に「カタオモイ」から「おもかげ」への視聴の流れが生まれたゆえとも言えそうです。

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Aimer「残響散歌」はポイント前週比95.4%とダウン。フィジカルセールスを伴う曲は下落率が高くなる傾向にあるのですが、その中ではかなり好い成績と言えます。

その理由、つまりは訴求については昨日のブログエントリーで紹介しましたが、その意味するところについて述べたビルボードジャパン植田匠人さんの解析(解説)が素晴らしいので紹介します。

ブログエントリーで述べたように、次週のビルボードジャパンソングスチャートではAimerさんを直接押し上げる要素はみられませんが(テレビ出演、また2回目のTHE FIRST TAKE出演があれば、いずれも再来週のチャートに直接影響します)、Aimerさん側のツイートがエンゲージメントの徹底という役割を果たすことで、ブログ等で述べた訴求の効果を長続きさせることでしょう。

 

 

ビルボードジャパンソングスチャートにおいてポイントを伸ばす要因が、最新週ではっきり可視化されたと言えます。

テレビ番組でのパフォーマンス(特に民放ゴールデンタイムの音楽番組出演は大きな効果をもたらします)、またラジオ特集やYouTubeチャンネル等も影響を及ぼします。さらにアルバムリリースがソングスチャートにも影響を及ぼします。これ以外にもTikTokのバズもヒットの要因となりたとえば以前紹介したTani Yuuki「W/X/Y」はポイント前週比が不明ながら57→51位に上昇しています。

逆に言えばこれらポイントの押し上げ要因がない曲はただ下がっていくばかりかもしれません。それでも、テレビの情報番組等で採り上げられること、ラジオで曲がかかること等、ヒットにつながる可能性の芽はあちこちにあります。その芽は小さく効果も乏しいとして、それをどうやって育て、花を咲かせ続けられるかが発し手の腕の見せどころであり、そしてコアなファンの方々にとっても考える必要があるでしょう。