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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】INI「Password」・Ado「新時代」の指標構成を分析し、次週の推移を予想する

毎週木曜以降は最新のビルボードジャパン各種チャートについてお伝えします。

最新8月31日公開分(9月5日付)ビルボードジャパンソングスチャートではINI「Password」がAdo「新時代」を抑え、同曲初の首位を獲得しました。

一方で2位から5位はAdo『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』関連曲が占めています。今回のソングスチャートトップ5における指標構成をみると、興味深い内容が見えてきます。

INI「Password」はフィジカルセールス、ラジオ、ルックアップおよびTwitterの4指標、Ado「新時代」はダウンロード、ストリーミングおよび動画再生の3指標をそれぞれ制覇(カラオケ指標首位は優里「ドライフラワー」)。「新時代」はフィジカルシングル未リリースにつきフィジカルセールスとルックアップは未加算ながら、6指標すべてを100位以内に送り込んでいます。

Ado『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』の中でも突出した人気を誇る「新時代」において、最も多くのポイントを獲得した指標がストリーミング。その再生回数は前週比93.8%とダウンしながらも17,577,221回再生を記録し、3週連続で1700万回超えを達成。Adoさんの曲としては最速でストリーミング1億回再生を突破しています。

「新時代」は最新ソングスチャートで15,088ポイントを獲得。ポイント前週比は93.1%とダウンしていますが、ストリーミング再生回数の前週比は総合チャートのそれを上回っています。ストリーミング再生回数自体は7週ぶりに前週割れとなったものの所有指標のダウンロード(前週比86.7%)に比べると高水準であることから、次週以降は接触指標が今以上に支える形となりポイント前週比9割台をキープするものと考えます。

また接触の一形態と言えるカラオケでは「新時代」が4→2位に上昇。この指標では3月2日公開分(3月7日付)以降、Saucy Dog「シンデレラボーイ」が2位をキープしていましたが、遂にその牙城を崩しました。首位の優里「ドライフラワー」は2021年2月10日公開分(2月15日付)以降その座にとどまり続けており、Ado「新時代」が破るかに注目です。

カラオケ指標が100位以内登場からわずか7週で2位まで達したこと、ストリーミングや動画再生といった接触指標群の強さ(前者は3週連続、後者は2週連続で首位)を踏まえれば、Ado「新時代」の強さはライト層の支えが大きいと考えるに十分です。

 

そのAdo「新時代」を破り総合ソングスチャートを制したINI「Password」は、3枚目のフィジカルシングル『M』のリード曲(多くの記事ではタイトル曲という表現を用いています)。シングルのリード曲では「CALL 119」(4月27日公開分(5月2日付))に次ぐ総合首位となり、フィジカルセールスは737,348枚を記録。このフィジカルセールスは今年度5位の高水準となっています

またTwitter指標では前作「CALL 119」を含め、6位までをINIが独占。INIは特にこの指標が強く、今年度は既に通算15週に渡ってこの指標を制しています。

さらにINI「Password」では、獲得ポイントの1割以上をストリーミング指標が占めています。Ado「新時代」と487ポイント差という接戦を制したひとつの要因と言えるでしょう。「Password」はデジタル先行リリースでしたが、そのデジタルおよびフィジカルリリースの二度のタイミングでLINE MUSIC再生キャンペーンを実施しており、これがストリーミング指標9→19→15位というV字に近い動きの理由です。

一方で、二度目のLINE MUSIC再生キャンペーンは8月30日にて終了。Ado「新時代」をはじめロングヒット曲のポイントキープに大きく貢献するのがストリーミング指標であり、逆にこの指標をキープできない場合は急落を免れません。Twitter指標の上位独占にもコアファンの活動が顕著に表れていますが、接触指標は通常ライト層の支持が大きく反映される傾向にあるため、そのライト層がどこまで付いているかが課題となります。

2022年8月31日発表のラジオ・オンエア・チャート(集計期間:2022年8月22日〜8月28日プランテック調べ)では、INI「Password」が1位を獲得した。

(中略)

AM局でのオンエアは、ニッポン放送三宅裕司 サンデーヒットパラダイス」、ラジオ大阪「namiがナミなみ!K-POP」にてそれぞれ1回のみで、ほぼFM局でのオンエアを積み上げての首位獲得だ。また、帯番組/コーナーなど固定枠でのオンエアが若干目立つものの、今週も多数リクエストが確認されていることから、デビュー時よりの積極的なラジオプロモーションが奏功した熱狂的なファンダムによる後押しもオンエア獲得に大きく貢献したことだろう。強力な支持基盤をもとに更なるオンエア波及に期待したい。

INI「Password」はラジオ指標も制していますが、この指標はプランテックが集計する全国31のラジオ局でのOA回数を基に、ビルボードジャパンが独自に指標化したもの。プランテックでのOA回数チャートでも「Password」が制しているもののAM局でのOA数の少なさ、固定枠でのOAが目立つこと(それ以外では多くないとも言えるでしょう)は、ファンダム(コアファン)の支持の一方でライト層との乖離も感じられます。

 

気になるのは、INI「Password」の次週以降の動向。フィジカル関連指標加算2週目においては「CALL 119」が1→4位(ポイント前週比39.3%)、デビュー曲「Rocketeer」が2→3位(同36.1%)となっており、「Password」もポイント前週比3~4割が予想されますが、総合トップ10内をキープするかについては断言できかねます。

最新8月31日公開分(9月5日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおいて10位のBLACKPINK「Pink Venom」が獲得した5,158ポイントは、10位曲において今年度二番目の高さ。高水準はAdo『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』関連曲が押し上げたことに他なりません。次週は10位の水準が5,000ポイントを割り込む可能性が高いものの、仮にINI「Password」がポイント前週比3割だった場合、トップ10落ちも予想できます。

先述したプランテック、ならびにビルボードジャパンの最新ポッドキャスト(上記リンク先はSpotifyYouTubeや各サブスクサービスでも聴取可能)でも、今回のINI「Password」の総合および各指標の首位獲得にコアファン(ファンダム)が貢献したと分析されています。

コアファンの熱量は素晴らしい一方で、週間ソングスチャート上位進出と同等もしくはそれ以上に大事なのがロングヒットおよび年間チャートへの登場であり、それが歌手の活動をより広く、長くすることにつながると捉えています。ならばライト層をどれだけ獲得しコアファンに昇華できるかが、INIのみならずアイドルやダンスボーカルグループ等に共通する課題ではないでしょうか。