今週月曜、日本の人気YouTubeチャンネルにハリー・スタイルズが登場しました。
【#THEFIRSTTAKE】
— THE FIRST TAKE (@The_FirstTake) 2022年6月13日
ー
No.225
ハリー・スタイルズ
「Boyfriends」が公開
ー
白いスタジオに置かれた、一本のマイク。
ここでのルールは、ただ一つ。
一発撮りのパフォーマンスをすること。
▼YouTubeはこちらhttps://t.co/85hmKrcYCs
・@Harry_Styles
披露したのは「Boyfriends」。先月リリースされたアルバム『Harry's House』に収録された曲です。
THE FIRST TAKEのハリー・スタイルズ登場は異例でした。外国人歌手としてもさることながら、水曜および金曜が公開日でありその前日に予告を公開するという通常のスケジュールとは大きく異なり、ハリーの登場は月曜日、そしてアナウンスは1週間近くも前のことでした。
⠀ THE FIRST TAKE
— THE FIRST TAKE (@The_FirstTake) 2022年6月7日
⠀ ⠀ ⠀ OUT AT
MONDAY
6/13 9AM EST
6/13 6AM PST
6/13 2PM BST
6/13 10PM JST
▶︎ https://t.co/xVntU2Qokq
・#THEFIRSTTAKE pic.twitter.com/8g3AQ6Q5Ou
THE FIRST TAKEでは一組の歌手が3回後に再登場し、一度目は代表曲を、二度目は新曲を披露することも通例となっていますが、ハリー・スタイルズにおいては一度目にニューアルバム『Harry's House』収録曲をパフォーマンスしたことから、二回登場する可能性は低いものと思われます。
そして仮に一度きりの登場だったならば、最新6月18日付米ビルボードソングスチャートで6週目の首位を獲得したアルバムリード曲の「As It Was」ではなかったことが、非常に気になっています。最新の米およびグローバルチャートはこちらで紹介しています。
「As It Was」よりも「Boyfriends」がTHE FIRST TAKE向きということもあるかもしれませんし、選曲権がハリー・スタイルズ側に委ねられていたかもしれません。その選曲理由も気になりますが、今回の動画が月曜公開だったことが尚の事気になるのです。
全世界で5月20日金曜にリリースされ、輸入盤も同時発売となった『Harry's House』。その国内盤は、6月8日水曜まで待たなければなりませんでした。
活動休止中のワン・ダイレクションは日本でも高い人気を誇りながら、そして「As It Was」が世界的に大ヒットしながらもハリー・スタイルズの国内盤発売が遅くなったことは、ともすれば今の洋楽に対する国内レコード会社の姿勢を端的に示すものかもしれません。
また今回は通常の動画と分けたとはいえ、公開が月曜公開だったことも気になります。世界的に金曜が音楽チャート集計開始日ゆえ金曜のほうが公開に相応しいと思うのですが、日本の音楽チャートは月曜が起点ゆえ、ともすれば前週リリースされた国内盤のチャートアクション最大化を狙っているかもしれませんし、「Boyfriends」の動画再生指標を主体にしたソングスチャートでの上昇も視野に入れていることでしょう。
(米ビルボードやグローバルのソングスチャートでは様々なバージョンが合算される一方、ビルボードジャパンでは言語の違いを除き合算されないのが通例ですが、THE FIRST TAKEについては合算されます。それゆえビルボードジャパンに対し、世界に倣い様々なバージョンの合算化を希望しています。この点はビルボードジャパンが2022年度上半期チャートを発表…特筆すべき7つのポイントとは(6月10日付)でも記しています。)
ハリー・スタイルズのスケジュール等様々な都合はあったかもしれませんが、本来ハリーのTHE FIRST TAKEを5月20日金曜とし、そこで「As It Was」を披露してもらったほうが、影響がより世界に拡がっていったのではと思うのです。このチャンネルは元々海外視聴者も少なくないのですが、その認知度はさらに拡がったはずであり、また米ビルボードやグローバルチャートの初週アクションにもプラスに作用したことでしょう。
ゆえに、国内盤リリースのタイミングでの公開や月曜公開という今回のTHE FIRST TAKEを考えるに、今回が特別措置であることは承知しながら、しかしその対応に内向きの理由を感じるのです。この内向きとは、ドメスティック(日本国内向け)の意味を表します。そう考えれば、THE FIRST TAKEの異例と言える1週間前の告知が、翌日にフラゲ可能となった国内盤への流れを作るものと捉えて差し支えないかもしれません。
さて、日本におけるK-Pop以外の洋楽は強くない状況です。これはグローバルで大ヒットを続けるハリー・スタイルズ「As It Was」の日本での強くなさのみならず、日本に縁がある歌手の作品にも表れています。たとえば大阪出身のオーストラリア系日本人シンガー、ジョージ(Joji)による「Glimpse Of Us」。最新6月13日付のSpotifyデイリーチャートにおいてグローバル3位、米では首位に立ちました。
(※注意:ミュージックビデオには過激な演出がみられます。)
.@sushitrash's "Glimpse of Us" enters the top 5 of the daily Global Spotify Chart today at #3, up 45.26% in daily streams
— Spotify Stats (@StatsSpotify) 2022年6月14日
#3 (+4), 5,580,258 streams on 6/13/22 (+1,738,637)
--
Its Top Charts today: pic.twitter.com/XWYtZT4T0X
この6月13日付Spotifyデイリーチャートでは米およびグローバルチャートにて、ケイト・ブッシュによる1985年リリースの「Running Up That Hill (A Deal With God) (邦題:神秘の丘)」が2位にランクイン。Netflixのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4に起用され世界的に再浮上しているのですが、日本のSpotifyデイリーチャートではジョージ「Glimpse Of Us」共々、未だランクインしていません。
またロンドン在住の日本人歌手、リナ・サワヤマ(Rina Sawayama)のアルバム『Sawayama』においては、今年のサマーソニック出演に合わせて来日記念盤と称した国内盤がリリース。3年前に『情熱大陸』(MBS/TBS)にて採り上げられた彼女による『Sawayama』は元々2020年4月の作品であり、ここまで国内盤が遅くなったことに対しては違和感を感じずにはいられません。
サブスクの興隆で洋楽も身近に、タイムラグなく聴くことができるようになりました。一方でJ-Popは、このブログやツイートで毎週紹介しているグローバルチャートにおいて毎週のように200位以内に登場しています。しかしグローバルチャートの認知度は高いと言えず、そして日本においてはK-Pop以外の洋楽が上位に進出しにくい状況です。
ハリー・スタイルズのTHE FIRST TAKE登場はその打破の意味で嬉しいことではあるのですが、THE FIRST TAKEや日本のレコード会社のスタイルはドメスティックを思わせるに十分でした。レコード会社、メディアそしてリスナーが少しでも視野を拡げ、わずかでもグローバルに気を配ることで、洋楽のジリ貧化を防くこと等ができるのではと考えます。