イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

宇多田ヒカルのフェス出演、藤井風の特番放送…新作を後から盛り上げる動きが登場している件、および私見

日本時間の昨日午前、コーチェラ・フェスティバル宇多田ヒカルさんが出演し話題となっています。

出演は88ライジング(88rising)枠の一環としてという形で4曲の披露ということになりますが、その意義の大きさについては文筆家のつやちゃんや音楽ジャーナリストの柴那典さんがまとめられています。

さて、お二方のレポートにもあるように、宇多田ヒカルさんの出演は4曲のみにとどまりませんでした。

ジャカルタのラッパー、ウォーレン・ヒューと共に参加した「T」はコーチェラ・フェスティバルでのパフォーマンス終了直後に配信開始。この曲を含む3曲がEP『Head In The Clouds Forever』としてリリースされています。

世界の音楽シーンは金曜解禁が主流となり、最近では前日木曜に配信する動きも増えていますが(金曜集計初日となる音楽チャート、特に米ビルボードにおいてはスロースターターのラジオ指標を如何に盛り上げるかが重要なため、1日前倒ししてでもラジオを高めんとしているのではと考えます)、一方では大型イベントの参加を見越したリリースも。コーチェラがYouTubeで全世界配信されているからこそ為せる技でしょう。

同時にこのフェスにて宇多田ヒカルさんが披露した4曲についても、4月17日以降の音楽チャートで上昇するかに注目です。日本におけるSpotifyデイリーチャートにおいて、仮に「Automatic」(1998)が200位以内に復帰を果たしたならば、2018年12月12日付以来の再ランクインとなります。

 

さて、宇多田ヒカルさんはアルバム『BADモード』をリリースしたばかりですが、日本におけるSpotifyデイリーチャートではデジタル先行リリース日に、収録曲10曲目まで(リミックス等を除くオリジナルバージョンすべて)の全てが200位以内にランクインを果たしました。その後緩やかに降下するも、最近また再浮上が発生しています。

関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日)で4月10日に宇多田ヒカルさんが特集された翌日付のSpotifyデイリーチャート(→こちら)で、「BADモード」が123位、「One Last Kiss」が157位に復帰を果たしました。また明後日発表の4月20日公開分(4月25日付)ビルボードジャパンアルバムチャート(集計期間は4月11日からの1週間)の前半3日分速報版において、『BADモード』がダウンロード指標5位に入っています。

テレビやYouTubeチャンネルにおける音楽や歌唱面の分析が人気となり音楽チャートにも影響を及ぼすことについては、たとえば自分も参加した音楽ナタリーでの座談会でも触れていることですが(優里が年間総合1位を獲得!Billboard JAPANチャートから振り返る2021年の音楽シーン(2021年12月10日付)参照)、曲単位のみならずアルバムにも波及しています。

関ジャム 完全燃SHOW』における宇多田ヒカルさんの企画がどこから立ち上がったかは判りかねますが、このような深掘り特集が新作リリース後の強力な援軍になるのではと感じた次第です。

 

さて、コーチェラ・フェスティバルには藤井風さんが、88ライジングがパフォーマンスした日に足を運んでいたことが出演者のInstagramで明らかになっています(リナ・サワヤマ(Rina Sawayama)のストーリー機能で明らかに。ただしストーリーは時限機能ゆえここではシェアしません)。

先月アルバム『LOVE ALL SERVE ALL』をリリースしたばかりの藤井風さんは、今週から2週続けてテレビの特番に出演することがつい最近明らかに。

テレビ朝日系列での放送。「旅路」の『にじいろカルテ』主題歌起用、『報道ステーション』への出演を踏まえれば同局への出演は自然だとして、お笑い芸人とタッグを組むことはいい意味で意外と言えます。どのような番組になるのかは想像できませんが、音楽番組とは違った側面がみられるかもしれません。そして音楽チャートの動向に注目しましょう。

 

 

さて、藤井風さんの特番出演を知ったタイミングで、ふと思ったことが少なからず支持を受けています。

作品リリース後もフックアップされることがあること、そしてそこにはテレビ番組の影響力が大きいことは歌手を含む音楽業界側の方々は十分理解されていると考えます。またアルバムリリース後のプロモーション期間が伸びていることは、アルバムリリース後も複数の収録曲においてミュージックビデオが制作される傾向が高まっていることからも明らかです。

その中にあって、宇多田ヒカルさんも藤井風さんも、違った角度からアルバムリリース後の話題が生まれ(ようとし)ています。尤もアルバム宣伝のためのフェス出演等ではないとして、しかし最終的にはアルバムのチャートアクションに反映される形と成るわけです。ならばそのような押し上げの一助になぜレギュラー音楽番組が位置付けられていないのかを、音楽番組制作側やテレビ局は熟考する必要があるでしょう。

(個人的には、レギュラー音楽番組の視聴率確保を目的としたバラエティ化が問題だと考えます。懐かしの曲を主体とした企画が目立つこと、企画VTR中にワイプで出演することになりタレントや芸人的要素が求められていることに、歌手の中には耐えきれない方もいらっしゃるのではないでしょうか。また視聴率より"視聴熱"が高い音楽番組については、そもそもリアルタイム視聴率は必ずしも重視しなくてよいのではとも考えます。)

また音楽番組のみならず音楽フェス主催者側についても、たとえばYouTube配信等を前向きに検討することを願います。莫大な予算がかかるかもしれませんが、フェスは行かなくともライブに興味がある方、新型コロナウイルスを考慮して今もライブ参加を控える方は少なくないでしょう。作品への注目度を高める、またフェスの認知度上昇と翌年以降の来客につなげる意味においても、配信は検討してほしいと願います。