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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

INI、BE:FIRST、なにわ男子…11月にデビューした3組、デビュー曲のその後のチャート動向を追う

昨日のブログエントリーに多くのアクセスをいただきました。心より御礼申し上げます。

ツイートにてブログエントリーを紹介する際、INIやBE:FIRSTにも触れました。11月はこの2組のほかになにわ男子もフィジカルリリースし、男性ダンスボーカルグループ(もしくは男性アイドルと括ることもできるであろう歌手)が大挙デビューを果たしましたが、それら作品がロングヒットに至るかといえば、微妙だというのが厳しくも私見です。

では、その3組の動向を見てみましょう。下記CHART insightは最新12月22日公開(12月7日付)ビルボードジャパンソングスチャートまでの動向、円グラフは最新ソングスチャートにおけるチャート構成比となります。また表については総合ソングスチャート100位以内にランクインした順、BE:FIRSTについてはプレデビュー曲の「Shining One」についても掲載しています。また3組については以前にも紹介しています。

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(上記ミュージックビデオはショートバージョンとなります。)

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INI「Rocketeer」はフィジカルに先駆けてデジタルリリース、なにわ男子「初心LOVE」はダウンロードおよびサブスク未リリースとなり、11月フィジカルリリース曲でもその環境は厳密には異なりますが、その3曲とも現在100位以内にランクインしているのは立派と言えます。その一方で、ロングヒットに至る可能性は高くないと捉えることも可能です。

 

INI「Rocketeer」およびBE:FIRST「Gifted.」について、最新12月22日公開(12月27日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるチャート構成比(上記CHART insight参照)は結構似ています。

2曲とも最大のポイント獲得源はストリーミングですが、再生回数が可視化されたSpotifyではBE:FIRST「Gifted.」が12月17日を最後にデイリー200位以内から退き、INI「Rocketeer」は1ヶ月以上登場していません。昨日JO1「僕らの季節」でも述べたようにLINE MUSIC再生キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)の影響が強く、キャンペーン終了後も同サービス主体にコアなファンが聴いていることの表れと考えます。ストリーミング指標の下降を踏まえれば、ライト層がついているかは微妙と言えます。

ストリーミングと並んで重要な接触指標である動画再生については2曲で大きな差が生じ、INI「Rocketeer」は同指標100位を下回っています。その「Rocketeer」は最新ソングスチャートにおいてラジオが上昇していますが同指標は急失速しやすい性質のため、やはり接触指標群の拡充はロングヒットのために欠かせないというのが私見です。

ロングヒットの重要性は、2021年度のビルボードジャパン年間ソングスチャートを制した優里「ドライフラワー」から解ります(下記ブログエントリー参照)。「ドライフラワー」は集計期間中常時トップ10入りし、ラジオ指標は強くありませんが接触指標群に極めて長けています。またフィジカルセールスがなく、6指標のみで年間ソングスチャートを制しました。この曲のヒットから学ぶべき点は沢山あるはずです。

 

なにわ男子「初心LOVE」についてはフィジカルセールスが未だトップ10入りを果たしているほか、ルックアップの順位は登場2週目以降常にフィジカルセールスのそれを上回っています。ルックアップはCDをパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスする数を指し、レンタル数ならびに売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)の推測を可能とします。

ルックアップの強さはレンタル数の多さを示します。これはなにわ男子「初心LOVE」がサブスク未解禁であり接触先が限られるゆえとも言えますが、INI「Rocketeer」およびBE:FIRST「Gifted.」もレンタル解禁されている一方でフィジカルセールスとルックアップの順位はほぼ同じであることを踏まえれば、また実店舗における在庫数の差を考えれば、レンタル数には大差がついていると言えるでしょう。

また、フィジカルセールスの安定も気になるところ。何種販売されているかも考慮に入れる必要がありますが、なにわ男子「初心LOVE」は最新ソングスチャートにおいて1万を超えるフィジカルセールスを獲得し、他の2組を圧倒しています(最新ソングスチャートにおけるフィジカルセールスの売上枚数はこちらで確認可能)。ライト層をコアなファンに昇華、また曲が気になった方が購入に至るという導線がみえてきます。

一方でINI「Rocketeer」およびBE:FIRST「Gifted.」はダウンロードを解禁しており所有指標が分散、フィジカルセールスが高くなりにくいという声も出てくるかもしれません。しかしながら「Rocketeer」は直近5週、「Gifted.」は同2週、ダウンロード指標で300位以内に入らず加点されていません。この点は気掛かりです。

ダウンロード指標は、テレビ出演も大きく反映されます。となればINIやBE:FIRSTが(男性アイドルという括りで考えればチャート上では成功している部類に入ると考えますが、しかしながら)十分露出できていない状況はやはり引っ掛かります。他方、上記ブログエントリーで採り上げた番組では『NHK紅白歌合戦』を除くすべてに出演しているなにわ男子「初心LOVE」が、ダウンロード未解禁なこともやはり勿体ないのですが。

 

デジタルを十分解禁していないながらも、なにわ男子「初心LOVE」は動画再生指標で好調をキープしています。これがストリーミングの一時的な加点にもつながりましたが、同曲の強さはミュージックビデオ以外の動画コンテンツの豊富さも影響していると言えるでしょう。こちらについては下記ブログエントリーで紹介しています。

「初心LOVE」はTikTokのソングスチャート(TikTok Weekly Top 20)でも最新12月22日公開分(12月27日付)で5位に入っており(同チャートはこちら)、TikTokや動画の人気が他指標に波及しているものと考えます。そしてこの動画強化策、なにわ男子をプロデュースする大倉忠義さんが所属する関ジャニ∞でも。

11月放送の『ベストヒット歌謡祭』(読売テレビ日本テレビ)での「稲妻ブルース」のパフォーマンス映像がYouTubeで公開されています。この動きはBTSK-PopアクトやLDH所属歌手でみられ、BE:FIRSTは『スッキリ』(日本テレビ)出演映像を(番組のYouTubeチャンネルに)アップしていますが、ジャニーズ事務所所属歌手で実施することに驚いた次第。動画の投入が効果的であることを十分理解しているゆえの公開と考えます。

なにわ男子はテレビ露出の多さのみならず、YouTubeチャンネルを持ち様々な動画を投稿しています。最近ではクリスマスに関連動画もアップしており(なお、上記ショート動画については現段階で最も再生回数の多い道枝駿佑さんのバージョンのみ紹介)、それも歌手や曲への親近感上昇につながるのではないでしょうか。いわゆるエンゲージメントの徹底は、先述した優里さんがYouTuberとして連日更新していることを想起させます。

様々な動画を機にファンになる方が増え、ミュージックビデオの視聴やデジタルの接触および所有、さらにフィジカル購入につながるならば、動画の充実は重要です。ファンクラブ会員向け等コアなファンのみに対するコンテンツも必要ですが、それとは別にコアなファンに成る可能性のある方向けのコンテンツもまた必要であり、なにわ男子「初心LOVE」はその点が突出していると言えるでしょう。

一方で、なにわ男子「初心LOVE」で気掛かりなのはデジタル未解禁もさることながら、最新ソングスチャートでカラオケ指標がダウンしているということ。ただしこちらについてはクリスマスソングに押されてしまっていることも考えられるため、1月以降の動向をみて判断する必要があります。

 

 

今回紹介した3組のフィジカルデビュー曲の動向は、男性ダンスボーカルグループ(もしくは男性アイドル)の中では優れていると言えます。一方で、INIやBE:FIRSTがもっとメディア(特に地上波テレビ局のゴールデンタイムの音楽番組)に出られていたならば、またなにわ男子がデジタルをきちんとリリースしていたならば…という思いは拭えません。3組の次のシングルリリースまでに、これら課題をどう解決に至らせるかが重要です。

なお、男性ダンスボーカルグループ(もしくは男性アイドル)のメディア露出については、ロングヒット曲を生み出し自力で切り拓くということも必要になってくるかもしれません(その前に、違和感が拭えない現状にはその旨をきちんと指摘する必要がありますが)。DA PUMPDISH//の例を下記ブログエントリーにて紹介していますが、Da-iCEについては「CITRUS」がヒットしても未だ状況が改善できていないのが気掛かりです。