イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

公開タイミング、臨場感の演出、フルバージョン…BE:FIRST「Betrayal Game」各種動画の巧さに唸る

時間経過や反応をきちんと意識した、巧みな動画公開ではないでしょうか。

BE:FIRSTは5月4日まで計4日間開催される音楽フェス、VIVA LA ROCKの初日に登場。未音源化の新曲を含む9曲を披露しています。

音楽フェスの盛り上がりはSNSのリアルタイムランキングで伝わり、配信にてさらに可視化されます。ライブの評判がひと通り出回ったタイミングで、BE:FIRSTは先週月曜にリリースした「Betrayal Game」のワンマンライブにおけるパフォーマンス映像を公開したという次第です。

このライブパフォーマンス映像はライブや配信を観た方のまた浸りたいという思いをより強く抱かせるのみならず、フェスでの評判を確認したいと感じた方にもリーチしやすいことでしょう。ライト層にする、そしてそこからコアファンへ昇華するための入口を、絶好のタイミングで用意するBE:FIRST側のスケジュール策定には唸らされます。

 

BE:FIRST側の巧さは、動画公開のスケジュールにとどまりません。動画自体における工夫もまた魅力的です。

ワンカメラの定点観測による「Betrayal Game」のダンスプラクティス動画が29日金曜夜に解禁。ダンスプラクティス動画はフロアで流れる音をそのまま公開する場合もありクリアに聞こえないことも少なくないのですが、今回はオリジナル音源に床をする等の音が混ざりダンスの臨場感が増幅されているのみならず、この動画をYouTubeのオーディオストリーミングで違和感なく聴くことも可能と言えるでしょう。

ダンスプラクティス動画については、BE:FIRST「Betrayal Game」がアップされた日になにわ男子「The Answer」について言及したブログエントリーをアップしました。

なにわ男子「The Answer」は前作にしてデビュー曲の「初心LOVE」がミュージックビデオのダンスバージョンを(ミュージックビデオとは異なり)フルバージョンにて公開していた一方、今作ではミュージックビデオおよびダンスプラクティス共にショートバージョンとしています。元来ショートバージョンは動画再生回数が伸びにくいということを以前からブログにて示しており、正直勿体無いというのが私見です。

この2作品のダンスプラクティス動画を踏まえ、このようなツイートを発信しました。

なにわ男子はジャニーズ事務所に散見されるデジタルの制限により、フルバージョンを観るために映像盤同梱のフィジカル購入を推奨していると言えます。一方BE:FIRSTは『どれかひとつでも気になったならば全曲が収録されたフィジカルを購入する意欲につながる』(上記ツイート内ブログエントリーより)ことを目的としてでしょう、5月のフィジカルリリース前に様々なフルバージョンを公開しているというのが私見です。

なにわ男子もBE:FIRSTも、一応のゴール地点をフィジカルセールスに据えていると言えるかもしれませんが、それが完全なゴールであるのか、それともひとつの山だがさほど大きく捉えていないとしているかで、大きな違いが生まれています。そしてフィジカル購入に金銭面や物理面等でやや高いハードルがある現在にあって、音源をきっかけとしたライト層獲得においてどちらがより優れているかは明らかではないでしょうか。

(一方で、メディア露出の面においてはなにわ男子のほうが多く、このメディア露出はライト層獲得に役立つものと考えます。)

 

BE:FIRST「Betrayal Game」、なにわ男子「The Answer」の2曲は5月4日公開分(5月9日付)ビルボードジャパンソングスチャートで共に初登場が見込まれます。初登場週の勢いもさることながら、翌週から数週の推移、前週からのポイント推移を注目し、ロングヒットする曲を見極めることもまた必要です。

 

BE:FIRST「Betrayal Game」においては本日までを集計期間とする次回のビルボードジャパンソングスチャートでトップ10入りが十分考えられるのみならず、動画公開を徹底しすることでトップ10入りの足場固めを行っています。ただし、ISRC(国際標準レコーディングコード)を付番していなければ動画はカウントされないため、きちんと付番し取りこぼさないことが重要です。

無論、動画公開はチャートアクションの充実という側面もあるでしょう。しかしそれが主目的というわけではなく、ライブやダンスプラクティス映像を絶妙のタイミングでアップすることで、先述したようにライト層の取り込みとコアファンへの昇華に大きな効果をもたらすものと考えます。その成果としてのチャートアクション反映と捉えるならば、ビルボードジャパンはやはり社会的ヒットの鑑と言って差し支えないでしょう。