ビルボードジャパンは特にソングスチャートにおいて、複合指標に基づき、時代の変化に即してチャートポリシー(チャート集計方法)を変更し、より好いチャートになるよう追求している姿勢を貫いており、より社会的ヒットの鑑になっていると感じています。故にブログでも同チャートを紹介しています。
他方、オリコンについては、ヒットの仕方が多様化した現在にあって未だフィジカルを重視する姿勢等に対し疑問を抱いており、昨年は年間ランキングが発表された直後に同社への私見を記しています。
改善が感じられないものについては取り上げることをしないというのが自分のスタンスですが、今週発表された2021年度の年間ランキングにおいてもオリコンの姿勢は変わっていないこと、またメディアでの採り上げられ方にも疑問を抱き、今回あらためて私見を記載した次第です。
オリコンによる各種年間ランキング、2021年度は2回に分けて発表されています。
【オリコン年間ランキング2021】Snow Man、唯一のミリオン達成で「シングル」年間1位https://t.co/1mcNjULW4v
— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) 2021年12月22日
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【オリコン年間ランキング2021】BTS、年間アーティストセールストータル1位 海外アーティストで初の快挙https://t.co/8IGSjAkHs7
— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) 2021年12月23日
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一方で、昨年は一度にすべてのランキングを発表していました。
【オリコン年間ランキング2020】嵐、総合で通算9度目の首位獲得https://t.co/m1osQq1kUF
— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) 2020年12月24日
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年間ランキング発表のタイミングで、オリコンへの疑問点が3つ浮かんでいます。それとは別に、合算シングルランキングで首位を獲得した曲の、そのポイントへの疑問をチャート分析に長けたあささんがツイートされていますが(→こちら)、今回はこの点以外で3つ紹介します。
ひとつめは、そもそもなぜ2回に分けて発表する必要があったのかということ。後述する理由が影響しているのかもしれませんが、昨年のようにまとめて発表することに何の問題もなかったはずです。
まとめて発表する場合、昨年の内容を踏襲すれば見出し画像(ツイートにも反映される画像)で最も大きく扱われるのはアーティスト別セールス部門トータルランキングを制したBTSとなるはずでしたが、ともすればオリコン側がそれを避けたかったのではと考えるのは、決して大袈裟なことではないでしょう。
昨年の年間ランキング発表時にはこのようなことがありました。
様々なランキングで年間1位を獲得した歌手をハッシュタグ化するならば、(#ジャニーズ ではなく)#ジャニーズJr.がないのはおかしいはずです。しかも #ジャニーズ の記載場所が歌手名の並びではなく #オリコン の次になっていることから、オリコンはジャニーズ事務所が自身のランキングを総括するのに重要な歌手の集団であるという認識を抱いていると思うのです。これはさすがに想像が過ぎるかもしれませんが、以前雑誌『オリ★スタ』(現在は休刊)におけるオリコンとジャニーズ事務所との親密さを指摘したことがあり、根幹となる考えは今も変わっていないのではと感じています。
(※ブログ掲載の3日後に、オリコンの2020年度年間ランキングの総括記事が更新されており、そのタイミングでジャニーズJr.が首位を獲得したDVDランキングが割愛されたものと思われます。ゆえに、『#ジャニーズJr.がないのはおかしいはず』とブログにて記載しています。また『オリ★スタ』の件は引用したブログエントリーにリンク先を貼付しています。)
オリコンが特定の芸能事務所を重用する姿勢は、今年の年間ランキング紹介ツイートで”#オリコン”の次に”#ジャニーズ”が入っていることからも見て取れます(シングルランキングはSnow Man「Grandeur」が制していますが、そもそも芸能事務所の名を載せる必要はないはずです)。シングル年間ランキング受賞曲を大きく取り扱うべくアーティスト別セールス部門トータルランキングを別にしたと考えても、差し支えないはずです。
また、2021年度の年間合算シングルランキングも昨日発表されましたが、見出し画像には首位を獲得したBTS「Butter」の記載がありません。尤も金曜に発表された3つのランキングすべてをBTSが制していることから省略した可能性もありますが、しかし彼らの快挙をよりはっきり報じていないと言われてもおかしくないのではないでしょうか。
ふたつめの疑問は、そもそも合算ランキングの集計方法がほぼ変わっていないということ。オリコンが合算ランキングを開始したのは2019年度初週であり、集計方法が開示されていたこと等を当初評価していました。
しかしその計算方法は現在に至るまで変わっていません。開始当初はこちらに、最新分はこちらにて記載されているのですが(オリコンは転載を強く禁じるため、リンクを貼るにとどめます)、データ提供元は変化しても計算方法はそのままです。開始4年目になっても変化のないオリコンに対し、ビルボードジャパンは緊急事態宣言に伴うカラオケ指標の集計停止および再開を含め、10回もチャートポリシーを変更しています。
時代の流れでフィジカルセールスが徐々にダウンし、またリリースする歌手が絞られていく中にあって、そのフィジカルセールスのウエイトが大きい合算ランキングを、計算方法をそのままの形で紹介し続けることにはやはり疑問を覚えます。時代に即して柔軟に変えるという意思はあるのでしょうか。
そして最後の疑問。こちらは週間ランキングについてですが、なぜ発表が金曜になったのかということです。2022年度初週の合算ランキングも金曜になって発表されています。
JO1最新シングル「WANDERING」が「合算シングル」1位 自己最高週間ポイントを記録【オリコンランキング】(写真 全2枚)https://t.co/hhToWJipYw
— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) 2021年12月23日
#JO1 #新譜 #オリコン #WANDERING #僕らの季節 @official_jo1
以前ならば水曜の発表でしたが(開始当初のチャートポリシーが記載されたこちらから、初回発表が水曜であったことが判ります)、現在では金曜になっています。ともすればこれが年間ランキング発表遅れの原因かもしれませんが、8指標で構成されるビルボードジャパンソングスチャートの発表が水曜午後なのに対し、その半数以下で構成されるオリコン合算シングルランキングがそれより後という状況には違和感を覚えます。
合算ランキングをきちんと報じないと言える状況からは特定の芸能事務所を重用するだろう姿勢が垣間見えるのみならず、合算ランキングがなおざりになっているとも強く感じています。時代の変化に即さない、ビルボードジャパンよりも発表が大きく遅れる、年間ランキングでも合算ランキングが重視されないという複数の問題を孕みながら解決する気概がないならば、オリコンは合算ランキングを手放すべきではないでしょうか。
また、客観視を絶対に持ち合わせなければならないランキング業者が重用という姿勢を続けることはあってはならないでしょう。その姿勢が、ともすれば自社の集計方法が(それ自体全く問題ないとしても)疑問視される可能性になりかねないものと危惧します。
オリコンは合算ランキングをどうしたいのか、今一度そのスタンスについて自問すべきです。芸能ニュースやドラマ評価記事等は信頼できる部分が多く時代にも即していると感じるゆえ、ランキングへの信頼度に尚の事疑問を抱いた次第です。
同時にメディアへも提案します。音楽企画の際にビルボードジャパンよりオリコンを、ここ十数年の音楽動向においてもメインに用いがちですが、直近5年においてはフィジカルセールス指標に係数処理を施したことでより社会的ヒットの鑑になったビルボードジャパンソングスチャートを使うべきです。またそれまでの間のヒット曲を知るには、先述したあささんのブログ【Billion Hits!】(→こちら)を参照することを強く勧めます。