イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

洋楽の認知浸透に芸人の起用が有効? 「Stay」やリル・ナズ・Xにおける実例、そして私見を記す

最新11月3日公開(11月8日付)ビルボードジャパンソングスチャートでザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」が17→13位に上昇。ポイント前週比は105.0%を記録しています。前週比5%以上の上昇は9月1日公開(9月6日付)以来2ヶ月ぶりとなります。

上昇の要因を探るに、こちらの動画が登場します。

チョコレートプラネットの松尾駿さんが「Stay」に合わせてお尻を振るダンスを披露した動画が公開されたのは10月22日。これがおそらく加算されたものと考えます。

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上記チャート推移グラフ(CHART insight)では動画再生指標が赤で表示。35→9位と躍進し、同指標初のトップ10入りを果たしています。そしてYouTubeによる10月22日からの1週間におけるミュージックビデオランキング(→こちら)ではミュージックビデオが51位、"Japanese Lyric Video"バージョンが100位未満から91位に上昇し、さらにチョコプラ松尾さん参加版が53位に初登場しています。

チョコプラ松尾さんがなぜこのダンスを披露しているかといえば、「Stay」の大ブレイクの要因がTikTokでの尻振りダンスだったため。日本でもバズが生まれています。

TikTokでは米アトランタの写真家デヴィッド・アレンのアカウントToTouchAnEmu(@totouchanemu)が、ドローンを飛ばし、「STAY」に合わせてお尻をフリフリする投稿がバズを生んだ。ToTouchAnEmuはベラ・ポーチやジェイソン・デルーロ、バックストリート・ボーイズのA.J.など、TikTokクリエイターや著名セレブとコラボするシリーズ展開までしている。

(中略)

「STAY」はTikTokにおける再生回数や影響力などを総合的に判断して生成された国内週間楽曲ランキング“TikTok HOT SONG Weekly Ranking”で2位に初登場し(集計:8月9日~8月15日)、8月23日~8月29日の集計週から3週連続で1位を記録。

しかも全世界的にみれば、Spotifyでは最速で10億回再生を突破したばかり。このブログで毎週紹介しているグローバルチャートでの大ヒットも頷けます。

チョコプラ松尾さん参加版の「Stay」はともすればユーザー生成コンテンツ(UGC)と捉えることが可能。そのUGCは今年度初週にビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標から除外されたのですが、指標の急上昇を踏まえるにこのバージョンもまた公式動画扱いであると考えていいでしょう。ちなみに動画の発信元はSony Music Japan(→こちら)であり、レコード会社がきちんと設定したことが推測できます。

 

 

ソニーミュージックによる、【洋楽×芸人】動画はこちらでも。

音楽ジャーナリストの高橋芳朗さんもサポート役として登場。当初リル・ナズ・Xを知らない狩野英孝さんの振る舞いが大きく変わるという展開も含めて、多くの方にとって楽しめる内容と言えるかもしれません。ただ、全世界的には大ヒットを連発するリル・ナズ・Xが日本では知名度がおそらくはまだまだということに、個人的には悲しみを抱いてしまうのですが。

(なお、ザ・キッド・ラロイおよびリル・ナズ・Xは共に国内盤が1枚もリリースされていない状況であることも付け加えておきます。)

 

 

ビルボードジャパンソングスチャートで9月に3週連続10位にランクインしたザ・キッド・ラロイ with ジャスティン・ビーバー「Stay」は、K-Pop以外の洋楽では『2020年6月のレディー・ガガアリアナ・グランデの「Rain On Me」(総合8位)』以来となるトップ10入りを達成しています(『』内は上記ビルボードジャパンの記事より)。TikTok→芸人参加動画を経て、この曲はさらなるロングヒットに至るかもしれません。

その一方では、厳しい物言いになりますが、K-Pop以外の洋楽は海外での大ヒットという実績だけでは上位進出が難しいと言えるかもしれません。米ビルボードおよびグローバルチャートで2週連続首位を獲得したアデル「Easy On Me」は、ビルボードジャパンにおいては前週48位に上昇しながら、最新チャートでは82位にダウンしています。

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さすがに「Easy On Me」に、そしてアデルに芸人関連動画を用いることはどうかなと思いつつ、しかし起用したならばアデルの認知度で遅れを取る日本でも注目が集まるとは思います。個人的には、芸人に頼らずとも良曲が認知浸透するような仕組みを音楽業界が構築することこそ、強く願っています。