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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

昨日デビューしたなにわ男子「初心LOVE」のチャートを読み、デジタルへの姿勢に対する私見を記す

前週BE:FIRSTおよびINIが同日フィジカルデビューを果たしましたが、昨日はなにわ男子が「初心LOVE」(うぶらぶ)でフィジカルデビュー。圧倒的なメディア露出で、おそらく多くの方にその名が浸透していることでしょう。

リリースは11月12日金曜。フラゲ日となった前日だけでフィジカルセールスはいわゆるハーフミリオン直前となっています。

ビルボードジャパンがハーフミリオン達成以外、週前半3日分の速報以外でフィジカルセールスについて言及するのは稀であり、この点からもなにわ男子の注目度の高さがうかがえます。

 

気になるのは、11月17日公開(11月22日付)ビルボードジャパンソングスチャートでどの位置に登場するかということ。

上記は最新11月10日公開(11月17日付)ビルボードジャパンソングスチャートを解説したブログエントリー。INI「Rocketeer」はBE:FIRST「Gifted.」をフィジカルセールスで上回りながら総合で敗れていますが、初週49万弱のフィジカルセールスを獲得したこの曲のチャート構成比(CHART insight)とポイントを踏まえれば、なにわ男子「初心LOVE」はフィジカルセールス指標だけで既に1万2千ポイント以上を獲得した計算となります。

ゆえに次週、「Gifted.」や「Rocketeer」が勢いをキープできず、またデジタルに強い曲が相当な記録を達成しない限り「初心LOVE」のビルボードジャパンソングスチャート首位登場は確実という情勢です。

11月デビューの3組の動向を以前お伝えした際にも紹介しましたが、なにわ男子「初心LOVE」のレンタル解禁は11月27日となり、レンタルに伴うルックアップは獲得できません。しかしながらフィジカルセールスで2位以下に大差をつけるだろうことを考えれば、ルックアップ指標制覇も確実でしょう。

 

なにわ男子「初心LOVE」におけるもう一つの強さは、ストリーミング指標を獲得できるだろうことに。実は既に、最新ソングスチャートにおいてこの指標が加算されています。

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最新11月10日公開(11月15日付)ビルボードジャパンソングスチャートのチャート構成比において、1割ほどのポイントを獲得しているのがストリーミング指標(上記チャート推移(CHART insight)では青で表示)。この指標はSpotifyApple Music、LINE MUSIC等サブスクサービスに因るものが大きいのですが、デジタル未解禁の「初心LOVE」がこの指標を獲得したのは同じく集計対象となるYouTube Musicの影響と言えます。

なにわ男子の先輩にあたるSnow ManおよびSixTONESがそれぞれ、YouTube Musicの再生回数のみでストリーミング指標300位以内に入った経緯があり、しかもSnow Manにおいては次のシングル「Secret Touch」でも最新11月10日公開(11月15日付)においてストリーミング指標が加点されています。

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動画再生指標の順位も踏まえるに、YouTubeでの高い人気がストリーミング指標にも波及したと言えるでしょう。なにわ男子「初心LOVE」においてはTikTokでも好調に推移しており、TikTokから動画再生への反映もみられるのではないでしょうか。11月10日公開(11月15日付)ビルボードジャパンソングスチャートと同じ集計期間におけるTikTok国内週間楽曲ランキングでは「初心LOVE」が4位に上昇しています。

前々週9位、前週6位だったなにわ男子「初心LOVE(うぶらぶ)」は、当週も着実に順位を上げて4位に。ドラマ『消えた初恋』主題歌の同曲を使ったチャレンジ“#うぶらぶダンス”が展開中で、ドラマの公式アカウントではキャスト陣のチャレンジ動画も公開されている。

TikTokで知りYouTubeでチェックする方も少なくないことがうかがえる「初心LOVE」ですが、羽田空港でのデビュー日イベントにおけるパフォーマンスが昨夜遅くにフルバージョンで解禁され、おそらくはこの動画も公式として動画再生指標に加算されることでしょう。

(Twitterにてこのバージョンの登場を教えてくださった方に感謝申し上げます。)

 

 

TikTok人気は動画再生のみならずストリーミングにも波及し、またメディア露出はダウンロードに反映されますが、「初心LOVE」はデジタル未解禁のため機会損失が生まれています。レンタル解禁も後日となり、曲が気になった方の行動がフィジカル購入にほぼ収斂されることはユーザーアンフレンドリーと言えますが、この違和感や不満が圧倒的なメディア露出で緩和され、上記動画もまた緩和に寄与するものと考えます。

しかし、デジタルを未解禁による機会損失は今の時代にあっては予想以上に大きいはずです。気になる曲が十分チェックできないことはイメージダウンにもつながりかねません。芸能事務所側の慣例だから仕方ないと片付けるのは早計であり、日本の音楽業界全体の問題だというのが厳しくも私見。インスタグラムでアカウントを開設し、昨夜生配信も実施したなにわ男子のデジタル姿勢を踏まえれば、強い違和感を覚えるのです。

 
 
 
 
 
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メディア露出の多さは凄いことであり、それ自体何の問題もありません。しかしながらメディアとの強固な関係性により、メディア側や音楽業界の内側からデジタル未解禁に対する健全な批判が生まれにくいものと危惧します。また次週のビルボードジャパンソングスチャートで「初心LOVE」が2万3千ポイントを上回らない場合、そのポイントを超えたBE:FIRSTやINIのメディア露出が十分ではない状況にも異を唱える必要があります。

(このメディアによる厚遇/冷遇の問題は、最近ではDa-iCECITRUS」がストリーミング1億回再生を突破しながら未だ『ミュージックステーション』(テレビ朝日)や『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)に出演できていない件で触れています*1。なにわ男子等の露出が多いことが問題ではありません、フェアに取り上げていないことが問題なのです。)

 

 

デジタル未配信はビルボードジャパンソングスチャートにも影響します。当該チャートをジャニーズ事務所側や一部の音楽ファンの方が重視しない(合算ランキングを用意しながらフィジカルセールス偏重のオリコンをより支持する)としても、社会的ヒット曲の鑑たるチャートはビルボードジャパンだと断言します。そして「初心LOVE」がデジタル解禁されていれば第4四半期以降で最高ポイントを更新した可能性は高かったでしょう。

このブログでは来週以降の数週の動向を確認し、BE:FIRSTおよびINIとの比較を含めて再度私見を記載する予定です。