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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ドラマ主題歌はどのタイミングで解禁するのがベスト? 最善策は米津玄師さんに倣うべき

昨日、優里さんの新曲「ベテルギウス」が配信スタートしました。

ベテルギウス」においてもLINE MUSIC再生キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)を用いているのは興味深いところ*1。この曲は木曜劇場『SUPER RICH』(フジテレビ)の主題歌に起用されていますが、「ベテルギウス」同様に木曜放送の連続ドラマに起用された主題歌が、前週の木曜にデジタルリリースされています。

Ado「阿修羅ちゃん」は『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)第7シリーズの主題歌として10月28日木曜にリリースされ、最新11月3日公開(11月8日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは7位に初登場。ちなみにこの曲においても、LINE MUSIC再生キャンペーンが行われています(→こちら)。

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この最新チャートを確認してすぐ、もしこの曲が日本における新曲解禁日で最も多い水曜にリリースされていたならば、トップ5どころか2位も狙えたのではないか…そう感じた自分がいます。そのくらい、最新チャートでは2位以下が拮抗しているのです。

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(ソングスチャート100位まではこちらで確認できます。)

 

Ado「阿修羅ちゃん」も優里「ベテルギウス」も、主題歌に起用されたドラマに合わせて木曜に解禁したことは容易に想像できます。またそれまでの間、「阿修羅ちゃん」ではドラマとのコラボティザーを用意し、「ベテルギウス」はTHE FIRST TAKEで先行解禁。また優里さんは生配信を用意し、話題性をキープしようとする施策が見受けられます。

とはいえ日本では今も、フィジカルセールス日である水曜に新曲がリリースされるという意識が広く浸透しているものと思われます。水曜リリースならば、Spotifyにおいて日本向けプレイリスト【New Music Wednesday】および【New Music Friday Japan】共に入る可能性も高いのですが、木曜リリースとなると前者への登場は難しいのではないでしょうか。

 

チャートアクション面でも強いとは言えないだろう木曜リリースですが、ドラマとの相乗効果を狙い、ドラマを大事にしたい歌手側の思いは理解できます。ならば、いつ解禁するのが最善なのでしょう。個人的には、米津玄師さんの動向が参考になるといえるものと考えます。

 

 

米津さんは昨夏のアルバム『STRAY SHEEP』リリース日までサブスクを解禁していませんが、それでも戦略的なリリース設定に長けていました。

たとえば金曜ドラマ『アンナチュラル』(TBS)主題歌の「Lemon」(2018)。ダウンロード→ミュージックビデオ→フィジカル→レンタル解禁(フィジカルリリースの17日後)という段階的なスケジュールを組み、チャート上で4度のピークを作ることに成功しています。ダウンロードおよびミュージックビデオは月曜に解禁され、デジタル指標群は解禁初週に1週間フル加算されています。

同じく金曜ドラマ『MIU404』(TBS)主題歌の「感電」(2020)については、ダウンロードを月曜に解禁した週のドラマOA直後にミュージックビデオを解禁。その直前にはYouTubeの公式アカウントにアップした動画のサムネイルを統一させ、モールス信号で当日23時のミュージックビデオ解禁をアナウンスしています*2

ドラマの反響、そしてSNSでの盛り上がりも相俟って、米津玄師「感電」は2020年7月15日公開(7月20日付)ビルボードジャパンソングスチャートで2位に初登場。TWICE「Fanfare」がフィジカルセールスを武器に総合首位に到達しましたが、「感電」はダウンロード、動画再生そしてTwitter指標で「Fanfare」を上回っています。

 

米津玄師さんのドラマ主題歌における解禁スケジュールは上記にまとめています。そして今年、金曜ドラマ『リコカツ』主題歌に起用された「Pale Blue」(2021)でもデジタルリリースが月曜、ミュージックビデオ解禁が同週金曜となり、デジタル指標群が初加算された6月9日公開(6月14日付)ビルボードジャパンソングスチャートではBTS「Butter」に次ぐ2位に初登場。ストリーミング指標も高位置に登場しています。

「Pale Blue」のミュージックビデオ解禁はドラマOA直後の22時55分。今回も注目度を高める謎解きを用意し、そしてきちんとドラマ終了のタイミングで解禁しているのです。

 

 

デジタル指標群の初加算のタイミングでそれらを如何に最大化させるか、そしてミュージックビデオ解禁をドラマOA直後にすることでさらなる相乗効果が生まれることを、米津玄師さん側は熟知していると言えるでしょう。その結果が、チャートアクションに大きく反映されるのです。音源を月曜に解禁しても、ドラマ視聴直後にその余韻を活かす形でミュージックビデオを解禁すれば、ドラマの認知度向上にもつながると考えます。

この手法をAdo「阿修羅ちゃん」が反映させていたならば、最新チャートでの2位初登場が十分有り得たのではないでしょうか。そしてミュージックビデオ未解禁ながら優里「ベテルギウス」も、配信が月曜開始だったならばより高い位置に行けるものと考えます。「阿修羅ちゃん」は音源解禁日にミュージックビデオも公開されていますが、そのタイミングがドラマOA前。仮にOA直後だったならと考える自分がいます。

 

チャートアクションにおいては週間チャートの結果と同じかそれ以上に、ロングヒットが重要であるとは考えますが、しかしながら週間チャートでより好い結果を残すことはやはり重要です。音源を月曜に配信し、ドラマOA直後にミュージックビデオを解禁するというのがチャートアクションにも、ドラマにもプラスになる最善策ではないかと考えます。