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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

INI、BE:FIRST、なにわ男子…11月上旬デビューの3組における現段階での動向を確認する

11月に入り、男性ダンスボーカルグループが続々デビュー。11月3日にINIとBE:FIRST、11月12日にはなにわ男子が初のフィジカルシングルをリリースします。一部アイドルも含まれますがここでは"男性ダンスボーカルグループ"と総称します。

以前このような内容を掲載しましたが、フィジカルセールスについては11月17日にNEWS、11月24日にHey! Say! JUMPがリリースしバッティングすることを踏まえれば、INIとBE:FIRSTのフィジカルリリースが被るのは(BE:FIRSTが後からの発表だったとしても)やむを得ないだろうというのが私見です。

 

この3組の動向について、現段階で判明している内容をまとめてみます。ビルボードジャパンソングスチャートで上位進出なるか、判断材料になるものと考えます。

 

 

・INI「Rocketeer」

シングル『A』の活動曲であり、フィジカルセールスおよびルックアップ指標の加算対象となる「Rocketeer」。ミュージックビデオは既に公開されています。

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「Rocketeer」がとりわけ強いのはTwitter指標(上記CHART insightでは水色で表示)で、登場した5週のうち4週で1位を記録。さらに、3種リリースされるフィジカルシングルでは計6曲が収録されていますが、最新10月27日公開(11月1日付)ビルボードジャパンソングスチャートにおけるTwitter指標ではその6曲が13位までに登場し、且つ7位までに5曲がランクイン。ほぼ寡占状態となっています。

またストリーミング指標(CHART insightでは青で表示)は好調に推移。これは解禁された9月26日日曜以降にLINE MUSIC再生キャンペーン(LINE MUSIC再生回数キャンペーン)を実施したことが影響しています。

そのLINE MUSICでは別のキャンペーンが先週用意され*1、そして一昨日から来週火曜までは再度LINE MUSIC再生キャンペーンが用意。こちらは1回再生でもプレゼントがもらえるというものになっています。

LINE MUSICで立て続けにキャンペーンを実施することで同サービスでの強さが際立つ一方、キャンペーンの採用曲は終了後に再生回数が急落しがちです。またダウンロード指標(CHART insightでは紫で表示)はこの2週300位以内にも入っていないことから、コアなファンのダウンロード購入が落ち着いた一方でライト層はあまり購入していないと言えるでしょうし、キャンペーンもコアなファンに支えられていると捉えていいでしょう。

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(総合300位以内初登場時からの11週分を表示。)

オーディション番組の先輩格にあたるJO1はデビューシングル『PROTOSTAR』収録の「無限大」で、2020年3月11日公開(3月16日付)のビルボードジャパンソングスチャートを制しています。フィジカルセールスとTwitter指標を制した一方でダウンロードは17位、ストリーミング54位、そして動画再生は300位以内に到達していませんでした。INI「Rocketeer」はデジタルにおいて「無限大」を上回る可能性が十分あるでしょう。

一方で、フィジカルセールス(上記CHART insightでは黄色で表示)が34万を超えたJO1「無限大」ですが、ルックアップ(CHART insightではオレンジで表示)はMr.Children「Birthday」に敗れています。ルックアップとはパソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースのGracenoteにアクセスされる数であり、実際の購入者数であるユニークユーザー数、およびレンタル数が推測可能です。

『PROTOSTAR』も「Birthday」も同日フィジカルリリースされ、「Birthday」の初週セールスは6万5千枚近くとなっています*2。売上が『PROTOSTAR』のおよそ18.8%だった「Birthday」がルックアップ指標を制したのは、特にレンタル稼働枚数や在庫枚数に大きな差があったと考えられます。JO1の作品は以降もあまり在庫枚数が用意されていない印象があり、INIの動向に注目です。レンタル解禁は11月6日土曜となります。

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・BE:FIRST「Gifted.」

INI『A』と同日フィジカルリリースとなるBE:FIRST「Gifted.」はミュージックビデオが11月1日月曜に公開。さらにデジタルも同日先行解禁されるため、フィジカルセールスに加えてダウンロード、ストリーミングおよび動画再生が1週間フル加算されるのはチャート上でも強みと言えます。

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Twitterにおいては常時20位以内を推移。最新10月27日公開(11月1日付)では「Gifted.」が同指標9位に入り、フィジカルに収録された3曲は12位までに登場。そしてプレデビュー曲の「Shining One」が同指標8位にランクインしています。

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「Shining One」は8月25日公開(8月30日付)で2位に初登場すると、最新チャートまで10週続けて50位以内に登場。ダウンロードやストリーミングの失速が目立ちますがダウンロードの落ち込みはそこまで大きくなく、ライト層の拡大を感じ取ることができるとも言えそうです。

また「Shining One」はラジオ指標(CHART insightでは黄緑で表示)の強さも際立ちます。特に最新週においては集計期間が首都圏ラジオ局における聴取率調査週間と重なり、調査週においてはここ最近のヒット曲(いわば定番曲)が流れる傾向となるのですが、「Shining One」はラジオ指標が34→22位へ上昇。これは同曲の定番化と言えるかもしれませんし、以前記載した施策が功を奏したとも考えられます。

読めないのはフィジカルセールス。参考になるものとして、BE:FIRST同様にHuluや『スッキリ』(日本テレビ)でオーディションの模様が放送されたNiziUが挙げられるかもしれません。

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(総合300位以内初登場時からの11週分を表示。)

プレデビュー曲「Make you happy」が大ヒットしたNiziUによる初のフィジカルリリースとなった「Step and a step」は初週32万枚弱を記録し、2020年12月9日公開(12月14日付)ビルボードジャパンソングスチャートで首位発進。フィジカルセールスのみならずルックアップやラジオも制し、デジタル指標群もダウンロード2位、ストリーミング3位、動画再生3位を記録し6指標が3位以内というほぼ完勝状態と言えます。

これは「Make you happy」が初登場から「Step and a step」首位獲得時まで常時総合10位以内に入っていたことも大きいと思われるため、BE:FIRST「Gifted.」になぞらせるのは違うかもしれません。ただオーディション発という共通項を踏まえれば、レンタル店の在庫は少なくないと言えるでしょう。なお、レンタル解禁はこちらも11月6日土曜となります。

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・なにわ男子「初心LOVE」

11月12日金曜にリリースされるのがジャニーズ事務所発、なにわ男子によるデビュー曲「初心LOVE」。ミュージックビデオが解禁され、10月27日公開(11月1日付)ビルボードジャパンソングスチャートでは動画再生指標3位に初登場を果たしています。

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Twitter指標は高くありませんが、同指標においては先述したINIやBE:FIRST、JO1等ジャニーズ以外の男性ダンスボーカルグループが常時高位置に来ているゆえと言え、「初心LOVE」リリース週にはこの指標も伸びてくることでしょう。またラジオ指標のダウンは先述した聴取率調査週間も影響しているものと思われます。

一方でダウンロードおよびストリーミングについてはおそらく、ジャニーズ事務所の大半の歌手がそうであるように、なにわ男子においても解禁されないものと思われます。理由として上記ミュージックビデオがショートバージョンであること、またレンタル解禁が15日後となっていることが挙げられます。

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レンタルについては現在、土曜解禁に曜日が固定されています。リリースの翌日にレンタル解禁することを避け、アルバム同様に2週間強という設定を用意したとも想像できますが、一方ではジャニーズWESTが以前から、またNEWSの次のシングルにおいて同様のレンタル解禁期間を設けており、今回のレンタル解禁設定はジャニーズ事務所側によるフィジカル購入推進という意思表示(が強くなっていること)の表れかもしれません。

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(総合300位以内初登場時からの11週分を表示。)

曲の内容からも、「初心LOVE」はKing & Prince「シンデレラガール」をなぞる可能性があります。「シンデレラガール」は2018年5月30日公開(6月4日付)で首位に登場し、62万を超える初週フィジカルセールスを記録。ルックアップも首位となり、Twitter4位、ラジオ5位に。動画再生は82位と高くありませんが、最近ジャニーズ事務所所属歌手の曲が同指標で強い傾向にあり、「初心LOVE」も動画再生をキープするかもしれません。

 

 

この3組の動向においては、テレビ出演の可否も大きな鍵を握ります。所有指標の中でもダウンロード、そして接触指標群に影響を与えるのが地上波テレビ番組への出演、とりわけパフォーマンス公開になります。

メンバー決定の模様を届けた『スッキリ』にて「Gifted.」のフィジカルリリース日にパフォーマンスすることが決定したBE:FIRST。しかし一方ではこの日がテレビ自体での初パフォーマンスとなり、フル尺ではなくともそれ以前にパフォーマンスする機会は設けられていません。

これは「Gifted.」リリース週にビルボードジャパンソングスチャートのポイントを最大化させるべく、初パフォーマンスをその週までとっておいたと言えるかもしれません。しかし「Shining One」が日本の男性ダンスボーカルグループの中では良好なチャートアクションを示しつつも、BE:FIRSTは未だにゴールデンタイムの地上波音楽番組への出演が叶っていません。

一方でINIは『CDTVライブ!ライブ!』(TBS)への出演を果たしています。これはINIを輩出した『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』がTBS系列で放送されたことが大きいと言えます。尤もこのオーディション番組の第1弾から輩出されたJO1はテレビ出演がなかなか決まらない印象がありましたが最近では露出が目立ち、INIも彼らに続いたと言えそうです。ただ、『CDTVライブ!ライブ!』とは異なる系列局への出演はどうでしょう。

その点において、なにわ男子はリリースの1ヶ月前に『ミュージックステーション』(テレビ朝日)に登場しています。同曲のドラマ主題歌であることもその理由ですが、同番組にジャニーズ事務所所属歌手が毎週出演していることが大きな要因と言えるでしょう。おそらくは今後もテレビ露出が多く、ともすればリリース後のチャート動向が判明する前に『NHK紅白歌合戦』(NHK総合他)への初出演もあり得るかもしれません。

 

この地上波音楽番組の出演可否の差については、Da-iCECITRUS」がストリーミング1億回再生を突破しながらも未だ『ミュージックステーション』に出演が叶っていない件にて私見を記載しています。この"枷"と呼べるものは早々になくすべきです。

 

そう書いてから間もなく、このような発表がありました。

穿った見方をすれば、制作が準キー局読売テレビでありキー局の日本テレビではないために枷が生まれにくい(考慮しなくともよい)と言えるかもしれません。しかしながらこのラインナップは極めて健全だと考えます。INIは出演しませんが、Da-iCEを含めてより広い層に認知、訴求される可能性は十分です。

 

 

今回取り上げた3組のについて、コアなファン、特に同日フィジカルリリースとなったINIおよびBE:FIRSTを推す方の中には、ビルボードジャパンソングスチャートでの首位を目標に掲げている方が少なくないと思われます。その熱意は素晴らしいことです。

 

週間チャートで最上位を獲得することも大事と言えますが、中長期的なヒットに至れることも大事ですし、年間チャートを踏まえれば後者のほうがより重要だと考えます。フィジカルセールスが落ち着き、LINE MUSIC再生キャンペーンが終了した後の動向をみて、真のヒットに至れているかを判断する必要があります。長く上位をキープしているならば、ライト層がコアなファンに昇華したことの証明と言っていいでしょう。

このブログでは後日あらためて、3組のデビュー曲の動向を追いかけようと思います。

*1:LINE MUSIC 「Rocketeer」MVプロフィールキャンペーン開催決定!|INI OFFICIAL SITE(10月17日付)参照。

*2:ビルボードジャパンにおける2020年3月11日公開(3月16日付)シングルセールスチャートはこちら