イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり)【ビルボードジャパン最新動向】なにわ男子「初心LOVE」連覇達成の理由、そして意味するものとは

(※追記(13時43分):2021年度のビルボードジャパンソングスチャート首位獲得曲一覧表を掲載しました。)

 

 

 

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

11月15~21日を集計期間とする11月24日公開(11月29日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。前週首位を獲得したなにわ男子「初心LOVE」が連覇を達成しました。

(上記ミュージックビデオはショートバージョンとなります。)

 

今回の連覇達成にはいい意味で驚かされました。

f:id:face_urbansoul:20211125050142p:plain

連覇達成は、フィジカルセールス指標に係数処理が適用されるようになった2017年度以降にデビューしたジャニーズ事務所所属歌手では初めてとなります。現在に至るまで幾度となくチャートポリシーが変更されており、ポイント数や前週比での単純比較はできませんが、最新のチャートポリシーとなった2021年度第4四半期以降で首位獲得曲が翌週1万ポイント超えを果たしたのも「初心LOVE」が初となります。

f:id:face_urbansoul:20211125051019p:plain

こちらの表は2021年11月にフィジカルデビューを果たしたINI「Rocketeer」、BE:FIRST「Gifted.」との比較(2曲についてはデジタルリリース順に並べています)。ポイント前週比においては主に接触指標の強さが影響を及ぼすのですが、フィジカル関連指標加算2週目においてはサブスク未解禁の「初心LOVE」が最も高いのです。

 

 

※追記(13時43分):2021年度のビルボードジャパンソングスチャート首位獲得曲一覧表を以下に掲載。なにわ男子「初心LOVE」のフィジカル関連指標加算2週目におけるポイント前週比が、米津玄師「Pale Blue」並に高いことが解ります。今年度もフィジカルセールス加算初週に首位を獲得する曲が多い一方で翌週の急落が目立ちますが、その点においても「初心LOVE」が際立っています。

f:id:face_urbansoul:20211125134041j:plain

(※追記ここまで。)

 

 

なにわ男子「初心LOVE」の連覇達成は、ライバルの動向も影響していると言えます。

f:id:face_urbansoul:20211125051704j:plain

今週は2位および3位がフィジカル関連指標初加算。LiSA「明け星」は7指標が100位以内に入ったのみならずカラオケ指標も100位未満ながら300位圏内となりポイントが加算。一方で、共に『鬼滅の刃』関連ながら劇場版における「炎」の初週セールスが65000枚だったのに対しテレビ版の「明け星」は45181枚となり、およそ2万枚の差が生じたのは大きいと言えます。デジタル先行解禁でポイントが分散したと捉えることも可能です。

(上記ミュージックビデオはショートバージョンとなります。)

2位初登場のNEWS「未来へ」はフィジカルセールスが「初心LOVE」の1.8倍近くに達しながら、2指標以外は「初心LOVE」に敗れています。「ReBorn」とのダブルAサイドによりラジオで票割れが起きた可能性があり(これはLiSA「明け星」「白銀」も同様)、またレンタルが17日後解禁のためレンタルに伴うルックアップが獲得できなかったことも大きいと言えます。セールス自体、前作「BURN」より1万5千枚以上減少しています。

 

ライバル曲が十分に伸びなかったこともなにわ男子「初心LOVE」連覇の要因と言えますが、しかしながら「初心LOVE」は自らの力で連覇を手中に収めることができたと言えるでしょう。

上記動画はフィジカルリリース日における羽田空港でのライブパフォーマンスが公式YouTubeチャンネルにアップされたものであり、前週の動画再生指標2位上昇の要因と言えます。この動画はフルバージョンでアップされており、ショートバージョンが多いジャニーズ事務所所属歌手の動画にあってインパクトが大きかったと言えるでしょう。そしてなにわ男子は、この1週間でさらなる動画を公開しています。

それが「初心LOVE」のダンスバージョンであり、こちらもフル尺。公開日は最新ソングスチャートの集計期間にあたる11月19日となっています。動画再生指標においてはバージョン違いだったり、フル尺ではないとしても公式であれば合算されることから、この動画が大きく貢献したことは間違いありません。ビルボードジャパンも動画再生指標のインパクトの大きさを取り上げています。

特に「初心LOVE」は動画再生を順調に伸ばしており、1,563,231再生→476,725再生→1,309,043再生→2,547,952再生→当週3,574,948再生と推移して、前週同指標1位のNiziUの「Chopstick」を逆転している。主にジャニーズ系アーティストはフィジカルで大きくポイントを積み上げる傾向が目立ち、動画再生ではまずまずといった傾向が強いのだが、なにわ男子はデジタル領域でも存在感を発揮する新たな強みを持っていて、次回作以降もこの傾向が維持されるか非常に興味深い結果となった。

厳密に言えばジャニーズ事務所所属歌手の動画再生指標は、King & Prince以降においては特に高位置への登場が目立っていました。この点は【ビルボードコラム】ソングスチャート構成指標のひとつ、動画再生指標の3つの特徴と3つの改善案(9月13日付)で示しているのですが、なにわ男子「初心LOVE」はジャニーズ事務所所属歌手では今年度初めて、この動画再生指標を制しているのです。

 

なにわ男子「初心LOVE」における動画再生指標の制覇はメディアへの高い露出の継続もさることながら、TikTokでのムーブメントも非常に大きいと言えます。

TikTokにおける再生回数や影響力などを総合的に判断して生成された国内週間楽曲ランキング“TikTok HOT SONG Weekly Ranking”。2021年11月8日~2021年11月14日を集計期間とした今回は、imase「逃避行」が初の首位を獲得した。

(中略)

続く2位には、なにわ男子「初心LOVE(うぶらぶ)」がエントリー。ドラマ『消えた初恋』主題歌の同曲を使ったハッシュタグチャレンジ“#うぶらぶダンス”が展開中で、ドラマの公式アカウントではキャスト陣のチャレンジ動画も公開されている。9位で初登場してから6位、4位と着実に順位を上げてきたが、依然として右肩上がりの勢いをキープしている。

TikTok週間楽曲ランキングは毎週金曜に発表され、最新11月24日公開(11月29日付)ビルボードジャパンソングスチャートと同一の集計期間におけるランキングは明日発表されます。ともすれば最新週において、なにわ男子「初心LOVE」がトップに立つ可能性も考えられ、TikTok経由のアプローチが動画再生指標に大きく影響を与えたと断言して差し支えないでしょう。

f:id:face_urbansoul:20211125054545j:plain

動画再生指標のみならず、なにわ男子「初心LOVE」はストリーミング指標も100位未満ながら300位圏内となり加算対象に。この指標はサブスク再生回数のほかYouTube Musicも加算対象となっており、ここでもYouTubeの影響力の大きさを実感できます。

 

「初心LOVE」はカラオケ指標で72位に初登場。フィジカル関連指標加算2週目におけるカラオケ指標の順位はSixTONES「Imitation Rain」にこそ及びませんが、曲の十分な浸透が伺えます。これはTikTok人気もさることながら、歌ってみたや踊ってみたに代表されるUGC(ユーザー生成コンテンツ)の再生回数に基づくTop User Generated Songsチャートで、最新11月24日公開分(→こちら)において6位に上昇したことからも判るのです。

f:id:face_urbansoul:20211125055216p:plain

 

arne代表の松島功さんがこのような発信を行っていますが、新しいケーススタディという表現に強く納得します。フィジカルセールス加算2週目において前週比1割超えを果たしたのはTikTokや動画の効果が大きいと言えるでしょう。そしてデジタルが十分に解禁されていたならば利益面でも大きくアップしただろうということが容易に考えられます。

なにわ男子「初心LOVE」が仮にサブスクやダウンロードを解禁していたならば、今週はNEWS「未来へ」やLiSA「明け星」を大きく引き離したことも、また今年度第4四半期以降で最高ポイントを記録したBE:FIRST「Gifted.」をフィジカル関連指標初加算週において上回ったことも十分想像できるのです。

 

 

次週12月1日公開(12月6日付)ビルボードジャパンソングスチャートではレンタルに伴うルックアップが初加算されることから、ポイント前週比をキープできる可能性もあります。なにわ男子「初心LOVE」のライバルは次週も同じジャニーズ事務所所属のHey! Say! JUMP「Sing-along」と言えるでしょう。

そして動画の段階的な解禁やTikTokを用いたアプローチを踏まえるに、ジャニーズ事務所側がビルボードジャパンソングスチャートをわずかでも意識していると捉えていいのかもしれません。実際にチャート上で成果が生まれていることを踏まえれば、今後ジャニーズ事務所にはどんどんデジタルに前向きになっていくことを願ってやみません。