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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【ビルボードジャパン最新動向】LiSA「明け星」が首位発進…一方でストリーミングの初週動向が気になる

毎週木曜は、最新のビルボードジャパンソングスチャートから注目点を紹介します。

10月18~24日を集計期間とする10月27日公開(11月1日付)ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)。LiSA「明け星」がフィジカル関連指標初加算のSTU48「ヘタレたちよ」を抑え、初登場で首位を獲得しました。

11月17日にフィジカルがリリースされる「明け星」は現段階でミュージックビデオ未解禁ですが、集計期間初日にデジタル先行解禁したことでダウンロードが71182DLを記録し同指標を制覇。チャート構成比の7割以上をこのダウンロードが占め、総合首位に至りました。

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「明け星」はテレビアニメ版『鬼滅の刃』無限列車編のオープニングテーマとして起用されていることから、映画版の主題歌として大ヒットした「炎」(2020)と比較されるのは自然なことかもしれません。実際LiSAさんにとって、「明け星」は「炎」に続く首位獲得曲となりました。

昨年10月21日公開(10月26日付)ビルボードジャパンソングスチャートで首位に初登場した「炎」。フィジカルも初加算された同週はダウンロードが14万超え、ストリーミングが900万弱を獲得(上記リンク先参照)、そして翌週にはダウンロードがほぼ横ばい且つストリーミングが倍以上となり、後者は当時の新記録を樹立しています(下記リンク先参照)。

一方で「明け星」はダウンロードが71182DLの一方、ストリーミングは4367763再生と、「炎」との差が大きくなっています。とりわけストリーミング指標19位という状況は初登場の位置としては高いほうとは言えますが、それでも「炎」の数字や順位(初登場週2位→翌週以降7週連続1位)と比べると物足りないかもしれません。

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ストリーミングの強くなさは、最新10月27日公開(11月1日付)ビルボードジャパンソングスチャートでダウンロード指標が高位置に初登場した曲のすべてで当てはまります。「明け星」と同日リリースの星野源「Cube」(総合4位)はストリーミング77位、10月20日解禁のあいみょん「ハート」(総合27位)は同68位、そして10月22日解禁のONE OK ROCK「Wonder」(総合51位)は同指標が加点されながら100位以内未達の状況です。

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一方で、総合20位に初登場を果たした超特急「Добрый день (ドーブリジェン)」は10月20日の解禁日以降、今回もLINE MUSIC再生回数キャンペーンを実施したことが功を奏し、ストリーミング指標は自己最高の6位に到達しています。

「Добрый день」はダウンロード指標が300位に満たないこともあり、コアなファンの熱量がストリーミングにとりわけ強く反映されたといえます。LINE MUSIC再生回数キャンペーンは終了後の反動を招き総合チャートでも急落するため、キャンペーン後も勢いが保てない曲を真の社会的ヒットとは呼べないと考えますが、しかしLINE MUSIC再生回数キャンペーン実施曲はストリーミング指標でロケットスタートを切っています

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LINE MUSIC再生回数キャンペーンに伴うストリーミング指標のロケットスタートは、前週ソングスチャート2強となった櫻坂46「流れ弾」(今週13位)およびStray Kids「Scars」(今週62位)にも当てはまります。前週のブログエントリーでも触れましたが、現在ロングヒットを続ける曲で当該キャンペーンを採用していない作品は、加算2週目以降ストリーミング指標が上昇しているものの初登場時は下位にとどまっています。

 

これらを踏まえれば、LiSA「明け星」のストリーミング指標は比較的上位であると捉えることもできますが、極めて高いわけではありません。このブログでは米ビルボードソングスチャートも毎週紹介していますが、ストリーミング指標(米ビルボードの場合は動画再生も含む)はロケットスタートを切るのが定番化しています。つまり、日本では新曲がリリース直後にサブスクできちんとチェックされていないのではと思うのです。

無論この初週動向には、Spotifyにおいてデイリーチャート50位以内に入らなければ上昇し難いという特性*1、2010年代前半までにデビューもしくはブレイクした歌手が全体的にストリーミングに強くないという状況*2、さらにストリーミングに強い歌手でも曲の推進力やタイアップ先の話題性が曲毎に異なること等が関わっています。またSpotifyでは初週が強くなかったとしても2週目に下がる傾向がみられるため、初週がピークになっていると捉えることも可能です。

ダウンロードは最新チャートに代表されるように初週売上が高いと言えます。フィジカルセールスにおいてはフラゲ(日)という言葉もあるほど、リリース直後の動向に注目が集まります。また動画再生ではYouTubeのプレミア公開が定着し、動画公開週に上位に進出する曲が多い印象です。その一方で新曲リリース直後にサブスクで聴くという習慣は、所有指標群や動画再生ほどに定番化していないのではないでしょうか

 

昨日アップしたポッドキャスト、【Billboard Top Hits】でもこの点を指摘。さらにはグローバルチャートにおいて、J-Popはダウンロード指標が世界の中でも極めて高い一方、ストリーミング指標が逆に極めて低いと言える状況も紹介しました。この点は昨日のブログエントリーでも触れています。

サブスクユーザー(リスナー)が新曲をリリース週にチェックする習慣をつけること、そしてユーザー数自体を増やすことが日本の音楽業界における大きな課題ではないかというのが厳しくも私見です。